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金魚のススメ

早速だが、あなたは金魚を飼ったことがあるだろうか?
いや、ちゃんと飼えたことがあるだろうか?

小学生の時、お祭りで金魚すくいをしたことないだろうか。
教室で金魚を飼っていたことはないだろうか。

日本人の幼少期において、金魚はとても身近な存在だ。
しかし、きっとほとんどの人がすぐに死なせてしまった記憶しかないだろう。

しかし飼育方法は簡単だ。餌をやり、水を換えてやるだけだ。

そのはずなのに、金魚を上手く飼えた試しがないのだ。

いや、待てよ。子供達が忘れてしまった小さな水槽を必要最低限であろう方法で、苔だらけの、たまに水槽から臭いがすれば母が、父が、祖母が、あるいは祖父が水を換えるだけの飼育でやたらと大きくなって10年も生きた金魚がどこの家庭にもいたのではないだろうか。

ふと、金魚を飼おうと思った。

あの時上手く自分では飼えなかった金魚を飼おうと思ったのだ。

大人になり、知識もあり、設備を買うお金もある。
妥協せずに環境を整えてやれば、子供の時には上手くできなかった金魚飼育をひょっとしたら上手くできるようになったのではないかと思ったのだ。

結論を先に書いておくと、いまだに私は金魚を上手く飼えていない。
金魚飼育とは奥深く、大人の趣味として最高なのだ。

子供の小遣いで始められる金魚飼育

金魚飼育に必要なものは、本当に子供の小遣いで十分に揃えることができる。
水槽とぶくぶくと餌があればとりあえず飼育を始められる。

高価な水槽もいらないかもしれない。発泡スチロールの箱でもいいし、バケツでもいいし、プラ舟でも良い、というか衣装ケースみたいなものでもいい。

それにエアレーション。ぶくぶくをつければ飼育環境が揃ってしまう。

大人であれば、それはそれは素敵な水槽と泡が光を纏って美しく舞い上がる素敵なぶくぶくに、美しいガラスの水槽を買うことができるだろう。
それでもそこまで大きな金額が必要になることはない。45センチ水槽であれば高級品でも10,000円程度なのだ。

想像してみてほしい、色とりどりの輝く魚が、ライトに照らされてそれが自分の家で舞う様子を。

ちなみにそんな簡単に飼育環境を揃えられるわけだが、本当に美しい金魚や大きく美しくしあがった金魚、品評会で入賞するような魚はもちろんとても高額である。

ほとんど流通することのない愛好家の育てた魚の中には、一目で息を呑んでしまうような美しい魚がいる。

色々な意味で悶絶してしまう世界が待っているのだ。

金魚の飼育方法はシンプル?
水換え

先にも書いたが、金魚の飼育方法はシンプルで簡単。

餌をやり、ブクグクをつけて、水換えをしてやること。
奥深いと言いながら、基本はこれだけである。

金魚は大量のフンをして、すぐに水を汚してしまうので、水質を気にして安定化させる熱帯魚飼育とは異なり、せっせと水換えをする。

一回に3分の1だけ、半分だけ、全換水と手法は様々だ。

水温はきっちり合わせて行う。

1週間に1度、3日に1度、毎日…

色々なパターンがあるが、基本はカルキを抜いた水を定期的に換えてやることだ。

水換えの頻度は、水量に合わせて行うのが基本ではあるが、実に色々な方法があるのだ。

水換えの頻度を下げることを「水を引っ張る」などと金魚の世界ではいう。
水換えの頻度が高いと当然いつも水は綺麗なのだが、金魚が縦に長くなってしまうのだという。逆に「水を引っ張る」と、金魚は横に長く成長するのだという。

金魚の熟練者たちは、たまに金魚が見えなくなるくらい水を引っ張ることもある。
そんなことをしたら、金魚はあっという間に病気になってしまう。

と思っているのだが、実に生き生きとしたまるまると美しい金魚ができたりする。
謎だ。本当に謎である。

金魚の飼育方法はシンプル?
餌やり

金魚の餌やりの基本は、「あげすぎない」ことだ。
金魚の消化器官は実にポンコツで、ちょっとトラブルがあるとすぐに詰まってしまったり、消化不良を起こしてしまう。

これが簡単に生き死にに関わってしまう。

どれくらいが金魚の適性の量なのか、人工餌は浮く物がいいのか、沈む物がいいのか。金魚の餌を買おうとすると、小学生の時に使った覚えのある激安餌から、色上げ、粘膜増強、良消化、水キレイと続いていく。

有名金魚ショップのオリジナルなんかもある。

色々な餌を試したが、なかなか良いものには出会えない。
生餌でも調子が悪い時は悪いのだ。

水温、季節、魚のコンディションを毎日良く観察しながら餌をやるしかない。
調子が良いと思った餌も、そればかり続けても結局は調子を崩したりする。

観察力がめちゃくちゃ上がるのだ。
この章の冒頭に「あげすぎないこと」が基本と書いたが、結局餌を切ってもイマイチ調子が上がらないなんてことはよくあるのだ。

しかし何故か、毎日魚を観ていると目を見ればコンディションがわかるようになってくる。

金魚を飼い始めると、穴が開くほど金魚を見続けることになる。
私は金魚日誌をつけている。元気な日、食べた餌の種類や、病気の治療状況などを「ほぼ日手帳」に手書きでつけている。

そして、ナレッジはnoteに残すようにしている。
小学生の頃には上手くできなかったいきものがかりをガチでやっているのだ。

生物として面白すぎる金魚

金魚と一言で言っても、その多様性は凄まじい。
というか、同一種と言っていいのか。

金魚は生物としても大変面白い。

金魚の遺伝子は全ゲノム重複を経ている。
つまり金魚の遺伝子は2倍。通常遺伝子が変異してしまったり欠落したりすると、長く生きられなかったりすることが常であるが、この遺伝子が2倍あることによって、多様性が生まれているのだ。

私の家には、80匹の自家産金魚がいる。繁殖をするつもりはなかったのだが、家に来たばかりのオランダ獅子頭が卵を振り撒き、フィルターの影にくっついた卵が授精をしていたのだ。気づくと水槽にたくさんの針子がくっついているのに気づいた。

放っておけば、親に食われたり、運よく逃げおおせたとしても(ほとんど無理だが)成魚に合わせた水流の中、長くは持たないだろう。
鍋で使うお玉を使い、せっせと針子を掬い上げた。

親魚は美しいオランダ獅子頭だった。それはそれは可愛い高級な金魚だ。

同じような魚が育ってくるに違いない。
今、我が家にはそんな親には似ても似つかない、実にさまざまな魚が泳いでいる。

金魚の繁殖は、ある程度選別をしなければならないので、(なんせとてつもない数が発生する)金魚を愛する人ほど難しいかもしれないが、より美しく元気な魚を育てたいと考える人にはたまらない趣味になるだろう。

命は大切に敬意を持って扱わなくてはいけない。中にはプラモデルを作るかのように魚を扱う愛好家もいると聞くが、どんなに選別が必要な世界であっても命に敬意は持つべきだと考えている。

丸物と長物
外国産金魚と国産金魚

遺伝子が全ゲノム重複という奇跡の進化の途上にある金魚は実に多様な品種が固定化されている。

その中でも特徴として、丸物(丸手)と呼ばれる金魚と長物(長手)と呼ばれる金魚がいる。

丸物は、らんちゅうやオランダ獅子頭など、胴が短く、コロコロとした体が特徴だ。
長物は、その名の通り体が長く、一般的な魚の体型のものだ。コメットや和金などが長物の部類にはいる。

一概にはいえないものの、丸物の方が飼育難易度はグッと上がる。胴が短いことによって先天的に内臓に疾患を持っていたり、虚弱なためかなり限定的な環境で育てられている品種もある。
奇形か奇形でないか、可愛い可哀想と論じられることもあるが、金魚はすでに人の手が介入しないと生きていけない魚なので、現時点では私は文化として許容している。魚を飼っていると生命とは何かという新たな発見があるだろう。

また外国産ともなれば、長い旅路で弱っていたり、日本の水質に慣れず、短命で終わってしまうことも多い。

しかし初めてなら長物から・・・と私は言わない。
長物と丸物はすでに別物と言っていいほど難易度が違う。

長物を飼って上手くいっても丸物を飼ったら絶対に失敗するのだ。
なので自分の好きな品種をいきなり飼い始めるべきだと思う。

どう足掻いても、最初からうまく飼うことはできない。
人によっては一生上手く飼えない。※これは性格によるところが大きい。焼肉で肉をいっぺんに網に乗せるタイプには向いていない。

であれば、最初から好きな品種に挑戦するのが良いだろう。

ナウシカの秘密の部屋を作りたい

私には目標があって、風の谷のナウシカの秘密の部屋を作りたいのだ。

風の谷のナウシカ 秘密の部屋

「風の谷のナウシカ」では、ナウシカが腐海の植物を綺麗な水で育てると無害であることを証明するためにこの秘密の部屋で育てているという設定である。部屋はおそらく水がかけ流されていて、せせらぎが聞こえてくる。

ナウシカにとって何時間もいても飽きることのない部屋なのだろう。部屋の中には綺麗な水が流れていて、色々な植物が育てられている。腐海の植物が綺麗な水と空気で育てれば無害であるという発見をします。人知れず世界の謎に迫る部屋。それが秘密の部屋なのです。
私もこのように水の流れる部屋で、生物の研究をしてみたい。

現在はキッチンの片隅に温室を作り、そこで金魚を飼育している。
気に入った植物も並べているが、色々とやるのでどうしても散らかりがちだし、機材もまだ発展途中だ。

しかしその発展途中が楽しいのだ。

金魚はとても水を汚すいきものだ。腐海の植物とは逆の存在だ。
であるからして、水の養分を吸ってくれる苔が生えている水槽や桶の方が調子がいいのが常であるのだが、やはり人としては透明度の高いガラスの中で幻想的に泳ぐ金魚も眺めたい。

基本的に苔や水草は金魚の餌になってしまうので緑と金魚の共存はなかなか難しい。
金魚は食べないと聞いていたはずのアナカリスも引っこ抜かれてぶん投げられてしまう。

そこで私は水槽の周りに色々な観葉植物を置き、好みのランプをおくことにした。
そうして少しずつナウシカの秘密の部屋を作り上げていく。

毎朝、金魚たちの健康チェックをし、餌をあげ、水を換えながら本を読み、植物の世話をする。
大人になってからの趣味というのは、消費するだけでは少し物足りないだろう。子供の頃、できなかったこと、やりたかったことをいざ始めてみると大人になってからの新しい視点、夢が追加されなかなか面白いことができる。

なかなかおすすめです。

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