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人事異動はパフォーマンス向上の夢を見るか?()

3月も終わりが近づいてきました。

新型コロナウイルスの影響は未だ広がっていて、
むしろどこまでのサイズの出来事なのかわからなくなってきました。

一方で季節は着実に進み、隅田川沿いでは桜が咲き始めました。
春が近づいています。

地方公務員にとって春といえば異動の季節。
「あの人異動だってさ」「えー!でも長かったもんね。誰が代わりにくるの?」
3月に入ると地方公務員の職場ではこんな会話が繰り広げられます。

地方公務員の異動はほぼ転職に近いものです。
「障害者福祉の仕事から都市計画の部署へ」みたいな状況が、
そこかしこにあります。

一人一人が異動をどう受け取ったらいいだろう?
そういう疑問についてさいたま市の島田さんがnoteされていました。

島田さんのお話は

・転職に近いような異動に対応できちゃう公務員すごい!
・玉突きという組織の論理で異動は成立していて「あなたがそこに行く理由」は残念ながらほとんどない
・だから自分の個性と異動を自分のなりに噛み砕くことで、異動に意味を与えてみてはどうか
・そうすることでモチベーションを誰かがくれないか待っているのではなく、自分に作ることができるのでは

ということだと受け止めました。

「人から何を与えられるのか」ではなく「自分がどう受け止めるのか」で考えるということは、とても有意義だし共感します。

島田さんのnoteに刺激を受けて、自分なりに異動を噛み砕いてみたいと思います。
テーマは「異動って何のためにしてるの?」です。

職員にとってのメリット&デメリット

異動する対象者である職員にとってのメリットデメリットを考えてみるとどうでしょうか?

メリットとして考えられるのは
・仕事が定期的に変わるので飽きがこない
・新たな環境で再スタートすることでモチベーションが上がる
・新しい技術を身につけて成長できる
あたりでしょうか。

では逆にデメリットはどうでしょうか?

デメリットとして考えられるのは
・脈絡のない異動で専門性が身につかない
・新しい環境に慣れるのにエネルギーが必要
・新しい業務を覚えること&引継ぎが大変
・意に沿わない異動でモチベーションが下がる
キャリアデザインができない
という感じでしょうか。

比べてみるとモチベーションに関して正反対の部分があるのが面白いです。

組織にとってのメリットデメリット

では組織側から見たメリットデメリットはどうでしょうか?

まず組織側のメリットについては
・新しいメンバーを入れることによる組織の活性化
・あちこち異動させることによるゼネラリストの育成
縦割りの打破
汚職や組織内での腐敗の防止
・職場単位では能力が職場と合わない職員を出すことができる可能性

という感じでしょうか。

一方組織側のデメリットは
・メンバーの入れ替わりによる業務レベルの低下
・引継ぎに多くの時間が割かれることによる業務量増
・職場単位ではガチャ状態でどんな職員が来るかわからない
あたりが挙がってくるかと思います。

住民にとってのメリットデメリット

最後に住民にとってはどうでしょうか?
ここでは個人や組織で挙がった以外のことを考えます。

住民にとって職員が異動してメリットとなるのは
・・・正直思い当たらないです。
組織側のメリットが大きな意味で住民のメリットになるかと思います。

では住民にとってのデメリットは?
・組織のスキル低下(特に担当者変更など)
これに尽きるような気がします。

個人と組織の関係は変わりつつある

こうして見ていくと、
・組織は一定のコストを払って、組織内を仕切り直すことに期待している。
・職員個人はメリットデメリットが表裏で異動内容による。ガチャ状態
・住民にとってはメリットとなることは少ない。
という感じでしょうか。

やはり組織にとってのメリットに大きな理由が多いイメージです。
縦割りの打破、汚職防止など公務員として心配されるものも多いですね。
なかなか異動を止める!という話が出ないこともうなづけます。
分限免職などがハードル高いことも、職場のリフレッシュに期待がかかりやすい一要素なのではないでしょうか。

つまり、組織にとっては仕切り直す機能に対して組織機能の低下というコストが見合っているかが、やるべきかやらざるべきかのポイントになっていそうです。
住民にとってメリットが感じづらいことも気になります。

一方職員個人にとってはいい部分もありつつ、デメリットも多いようです。
転職に近いレベルの異動の場合はスキルもリセットされるくらいの状況なので、
異動は高コストです。

島田さんのnoteでも異動する理由がわからないから異動する人はつらいというご指摘でした。
自分の能力開発とキャリアデザインが自分自身でコントロールできないことは、
特にがんばる前向きな人にとってこそ辛い状況です。

こういう個人の気持ちと組織のあり方の関係は少しずつ変わりつつあります。
人口減少もあり徐々に売り手市場になっていく中で、
働く人は個人をちゃんと大事にしてくれる組織を選ぶようになっています。

大企業における全国転勤が減少しつつあることもその現れです。
自分らしく働きたいという当たり前の気持ちが少しずつ表に出てきています。
なかなか働き方が変わらない公務員が採用市場で避けられ始めているのも、
そういう動きの一端です。

「公務員の働き方がなかなか変わらないこと」について「定期的に転職レベルの異動があること」は大きく影響していると思います。

さいきょうのいどうをかんがえてみる

自分なりにここまで整理してきたことで異動のあるべき姿を考えてみると
・近似性の高い職場を設定し、定期異動は原則その中で行う。
・その範囲を超えて異動する場合は、本人と所属長がキャリアデザイン
 &能力育成の観点から話し合って異動希望を出す。
・所属間で職員を融通するヘルプ制度を充実し、所属は一つでも
 複数のプロジェクトに関わる機会が多くなるようにする。
という感じがよいのではないかと思います。

こういう風にしていくと、キャリアが自身でデザインしやすくなりますし、
配属と本人特性が合わないときのフォローも可能です。

完全に異動を無くしてしまうのはそれはそれでぎこちない組織になりそうです。

異動と参勤交代

江戸時代の参勤交代って「各藩の資金を削ぐことが目的である」って教わりませんでしたか?
実は今は「幕府に当初そんな意図はなかった」説が有力なんだそうです。

異動と参勤交代交代って似ているなーと思います。
(各藩である職員は結構大きなコストを払っていますし)
そして、参勤交代と同じく異動も当初からそんなに金科玉条のようなものではなかったのではないでしょうか。

公務員が異動するのが当たり前っていつ誰が作った常識なのでしょう?
(ググっても上手く出てこなかったです)
人事制度というものはすべからく「働く人がよりよいパフォーマンスを発揮する」ためにあると思っています。
今の組織にとって異動にどんな効果があるでしょう?
それは払っているコストに見合うものでしょうか?
よりよいパフォーマンスを発揮するために活きているでしょうか?

すぐにどうこうできなくても「異動はあるもの」という前提を超えて思考実験してみることは、色々な気づきがあります。
個人から離れた視点で異動を眺めてみることも「異動のひきこもごも」を噛み砕いていくことに、一役買うかもしれません。

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