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皇都神鬼狩猟譚

 西暦2038年、春。僕は大学時代の先輩の元を訪ねるべく、皇都でも有数の資産家である洲燈(すとう)家の屋敷を訪れた。

 立派な門扉に洒落たモニター付き呼び鈴。ボタンを押せば、応対に出たのは女中さんであろうか。

「一ノ瀬(いちのせ)先輩に呼ばれまして……ああ、僕は陣野英嗣(じんのひでつぐ)と申しまして……」
「……晃人(あきひと)様のお客人ですか? 確認を取ってまいりますので暫しお待ちを」

 この女性の物言い、絶対に信用されていない自信が僕にはある。カフェの女給さんとかも如何わしい物を見る目で僕を見るからなぁ。等と思案しながら皇都の風に吹かれていると、頭上に影が差した事に気付いた。


 皇都の空を飛ぶのは昨年竣工したばかりの空中母艦『叢雲(ムラクモ)』だ。戦う相手とてないのに、皇国軍は軍備拡張に余念がない。永世中立を守る為には、致し方ない出費ではあるのだが……。

「あれの万分の一でも研究費に回ってきたらなぁ」
「古い祭祀の研究にそこまで金は出せんでしょう」

 いつの間にか開いた扉から、壮年の落ち着いた物腰の執事が姿を見せて僕に告げた。

「あ、こんにちは。先輩は?」
「部屋でお待ちですよ」
「皆はまだ? なら一足先に先輩の話を聞けるな」
「魔神狩人(デモンハンター)の体験談を聞ける機会はまずないですからな」

 邸内に導かれながら執事さんと会話を交わす。そして、先輩の待つ部屋に向かう途中で洲燈様に出会った。

 その姿は相変わらず特徴的だ。腰に掛かるか銀色の髪を背後に纏め、美しい褐色の肌を持つ二十前後のこの女性こそ、先輩の師匠であり資産家の洲燈様だ。黒を基調としながらフリルの多い所謂(いわゆる)ゴシックロリータと呼ばれる装いが妙に似合っている。

「英嗣か、お前まだ大学生をやっているそうだが?」
「ははは……大学八年生で」
「お前なぁ」

 真面目な洲燈様がお怒りになる前に、僕は慌てて先輩の待つ部屋に逃げ込んだ。

【続く】

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趣味で小説を書いているC・A・スミスが好きなおっさんです。 のんびりとライフワーク的な作品を書いて行こうと思っております。

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