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結婚は人生の墓場

「結婚は、人生の墓場だからね…」

と、まだ小学生の私に告げたのは、母である。

当時、片想いしてる男の子がいて、その子といつか結婚出来たら~なんて、夢見ていた私にとって、その言葉は夢をブチ壊すのにぴったり過ぎるチョイスだったし、「いやいや、結婚ってハッピーなものでしょ」と、母のお告げを全然信じていなかった。

あれから二十年。

未だ未婚の私ですが、その言葉の意味…ひしひしと伝わる。

その言葉を言った、母本人の結婚生活を見て来たから。

もちろん、知人には結婚して幸せな人もいて、成人した息子二人を持つ主婦さんなんかは、「恋愛中みたいな気持ちは無いにしても、旦那は私にとって戦友だし、この人と一緒に過ごせてよかったと思う」と、笑顔で語っていた。

いいな、『戦友』ってかっこいいじゃん…。

私の父は、人に迷惑かけるタイプの『自由人』で、私と妹と母は、いつもそのことに頭を悩ませている。

最近は、父の実の親の祖父母ですら、自分の息子のヤバさを理解し始めたようで、父の姉達に「アイツが帰って来ても疲れる!」と言ったそうな。

散々母に、「夫を立てろ」「なんでうちの息子が、お前みたいな女と結婚したのか」なんて言ってたくせに、ざまーみろ!と血の繋がった祖父母でも、今までの私への仕打ちを思い出すと、笑いしか出てこない。

そんな父は、これを書いてる前日から、祖父母の介護のために実家に帰省しているので、今頃短気で、気に入らないことを言われるとすぐ声を荒げる父に翻弄されてるんじゃなかろうか。

父は去年の今頃から、仕事を退職してずっと家にいる。

会社でトラブルを起こし、左遷され、その部署が気に入らず辞めたのだ。

それ以来、母は24時間父と過ごすことになり、ストレスフル状態。
眉間にシワが寄りっぱなしで、毎日「もうヤダ、あいつマジで嫌い…」と、私の元へ愚痴を吐きに来る。

そもそも父と母は、色んな事が真逆な人間。水と油なのだ。

貧しくとも、礼儀やマナーをしっかり身に着け、清潔さを心掛けるように育てられた母。

どこに行っても、きちんとしたお嬢さんとして、近所の人に褒めてもらうことも多かったそうだ。

一方父は、地主で小学校の先生の息子という肩書きを持ち、おまけに末っ子長男として、家族にとても甘やかされて育てられた。

そのせいか、ワガママでジコチュー。
素行が悪すぎて、担任の先生からは「お前は本当に教育者の息子なのか!?」と言われるほどの悪ガキだったそうな。

衛生概念もすごくて、自分は綺麗と思っているのか、足の裏の皮を捲った手で掴んだパンを、「これ美味しいから食べてみ?」と渡してくる。

もちろん断った。(そしてキレられた)

私と妹は、考え方は母譲りなため、父の不衛生なところやキレやすいところ、世の中を全て自分中心でしか考えられない性格が大嫌いであり、そんな母の苦労を長年そばで見続け、「結婚は人生の墓場」という、母の言葉はホントだなぁ…と思っている。

おかげで妹は、二十歳迎える前に「結婚なんてしない。両親を見てると結婚に魅力なんて感じない」と言い切った。

私の方は、結婚…というより、子育てがしたくて『戦友』となってくれるパートナーがいればいいなと思うけど、母の前例を見ているせいか、ほんの少し父と似た要素があると、恋愛対象として見れなくなる。

「離婚すれば?」と、私と妹は母に言う。

だが、母は……

「厳しい両親から自由になりたくて、反対を押し切ってアイツと結婚しちゃったからね~…。もうこれは、罰だと思ってるよ。金銭面のこともあるし、娘達の重荷になりたくないからね…」

と言うのだ。

そして、結婚なんていいことなさそうだと言う妹には

「でもまぁ、クソジジイと結婚したから、君達と出会えたわけで。幸い、娘達が私の味方になってくれるからさ~。嫌なことばかりじゃないよ」

とも語っていた。

今日は父がいないため、半年ぶりに母と隣町まで出かけた。
仕事終わりの妹と合流し、一年ぶりに母と娘だけで外食もした。

母は笑顔だった。
帰宅してからも、誰にも邪魔されずに好きなテレビを楽しめたようで、今もこんな深夜(午前2時)になっても、部屋でYouTubeを観てのんびりしている。

束の間の、母の休日。
ゆっくり、羽を伸ばして欲しい。

オリジナル創作の本やグッズを作る資金にしたいと思います。 あと、時々、元気を充電するために美味しいもの食べます(˘ω˘)