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2030年のエネルギーミックス目標見直しの重要性と日本企業の病

先月、営農型太陽光発電の事業者としてプレゼンを行った経済産業省の再エネ大量導入小委員会では、2030年のエネルギーミックス目標の見直しに向けた再エネ導入目標についての具体的な議論が進められています。

現行のエネルギーミックス目標において、太陽光発電の導入量が2022年頃には目標年次を大幅に前倒しして達成することは2019年頃から既に指摘されており、それに対して経済産業省は「エネルギーミックスはキャップではなく、それを超えた導入を進めていただいて構わない」という発言を国会の答弁などで繰り返してきました。

しかし、その考え方は日本企業の組織風土などに基づく大きな問題点を抱えており、早期のエネルギーミックス目標の見直しが求められてきました。その問題点とは、端的に言えば「政府目標に準じて企業目標が設定される」ということです。

カーボンニュートラル目標の影響

昨年、菅総理が2050年カーボンニュートラルを掲げた演説を行ったことで、これまで温室効果ガス削減や再エネ導入に消極的な目標設定をしていた大手企業や業界団体が、相次いで目標の見直しを行いました。

例えば再エネ100%の達成目標を2050年から2025年に前倒ししたり、カーボンニュートラルの達成を2100年から2050年に前倒しするという発表がなされています。

しかし、それぞれの前倒し前の目標値はここ2~3年で発表されていたものであり、その間に何か劇的な技術革新が起きたわけではありません。より短期で達成していくという姿勢は評価されるべきですが、こういった流れを見ると従来目標の設定には特に根拠などなく、超長期の達成としておくことでお茶を濁したように見えてしまいます。

RE100に加盟する企業の中でも、再生可能エネルギー100%の達成年次の平均が2028年で、3/4が2030年までに達成するという目標を掲げている中で、日本企業は2040年や2050年という目標設定が見受けられました。

しかし、果たしてその差は日本のエネルギー市場の特異性に起因するのでしょうか。RE100のレポートでは、確かに日本は再生可能エネルギーの調達が困難な国の一つに挙げられています。それでも、グローバルマーケットで事業を行う日本の上場企業が、他国の企業に再エネ利用で10年単位の遅れを取る理由になるのかは疑問です。

「自ら目標を考える」ことのできない日本企業の病

私もエネルギーミックス目標の早期見直しを主張してきましたが、その大きな理由は「日本企業の病」と言える風土があります。言ってしまえば、「政府目標は○○です」ということであればあっさりと社内稟議を通せてしまう、言い換えれば政策目標を上回る目標を掲げることの難しさです。

再生可能エネルギーの導入を企業目標として掲げるに際して、例えば2030年のエネルギーミックス目標が再エネ比率22~24%であるのに「当社は2030年50%を目指したい」ということになれば、「政府目標を上回る再エネ導入をどのように果たすのか」を問われ、担当部門はその理由を積み上げることに苦労するでしょう。

一方で、政府目標が40~50%に設定されれば、「政府目標が○○%です」ということが強力な後押しになります。

そこには、企業としてどのように取り組むかという理由付けよりも、政府目標より低い目標を掲げることによる批判を受けることを懸念する意識の方が強く働くと思われます。担当者が必死に練り上げたプランよりも、政府目標がどうかという一点が遥かに説得材料として強いことは、私も大手企業との付き合いの中で実感してきました。

それ故に、今回のエネルギーミックス目標の見直し結果が企業活動に大きな影響を与えることは疑いなく、そこにどれだけ野心的な目標を掲げられるのかが重要になります。

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