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なんで日本で木を植えるのか。

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さて、前回、「今Green Forestersを始める理由」という記事を書いたのですが、わりと「なんでたくさん木が生えているのに、また植えないといけないの?」というとても率直な質問を結構もらいました。

近年では海外の山火事などのニュースの方がよく目にしますし、そもそも植林というと砂漠を緑化!的なイメージがあったりするので、そういった一般的なイメージがあるのかもしれないなぁ、と聞いて思いました。

その意味では、日本の森林の状況はそういったイメージとは違っており、そのあたりも含めて紹介していきます。

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日本では、人が植えた「人工林」が育っている

日本では戦後の1960年代、拡大造林期といって、広葉樹などスギヒノキマツ以外の樹種が植わっていたところにスギヒノキマツなどの針葉樹を人が植えていくという一大事業を推し進めました。アフリカやアジアで行われている今の植林のイメージと比較的近いのは、日本ではこの時期ですね。

日本はそこから50年くらい経っており、その結果、人工林の面積は現在では1000万haにも達しています。

あの北海道が800万haなので、北海道よりも広い面積を「人が植えた」んですよ。昔の人(というか、今のover70代)ほんとすごいパワーです。まじですごい。

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おかげで、現代における森林は江戸時代も入れて過去400年で最も量的豊かであるといわれています。量的に、というのは森林の蓄積量、簡単に言うと本数とか太っている量がめっちゃ多いということです。おじいちゃんおばあちゃんありがとう!

育ったまま伐られずに残っているということは、それだけ国産木材への需要が落ちたということでもあります。海外産の木材がたくさん国内でも使われるようになりました。

人工林は「木材利用」のための森林で「人が植えた」ので、天然のものではありません。ちゃんと手入れをしてあげないと、農地でもあるように虫が入って枯らしてしまったり、もやしのようにヒョロヒョロの木ばかりができてしまったりします。

木材需要が落ちてしまったことで、人工林を手入れしても儲からなくなり、放置される森林が増えたというのが、近年の森林を取り巻く現実です。

では、このまま放置されるとどうなるのか。

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森林が放置された先にあるもの

一つは災害の温床になります。放置されていると林床といって地表部分まで光が差し込まず植生が育たないために、雨が降った時に雨が地中に浸透せず表土を水流れることで表土の流出が増加し土砂が谷に流れます(詳しくは樹木医大谷さんのページへ)。また、虫食いなどで枯れているのに放置していたりすると台風などで倒木が起き台風19号のときに千葉で発生した停電問題などを引き起こすリスクもあります。

二つ目はCO2の吸収量が減ります。ある程度、一体の人工林が成長しきっていると成長は止まるので若齢の成長期ほどの炭素固定はされません。テクニカルな側面でいうと、整備されていない森林の炭素固定量はクレジットとしてカウントできないため国際的には貢献が認められません。

三つ目、何より気持ちを込めて言いたいのが、日本が誇る再生可能な資源だということです。海を渡らなくても近くにある広大な面積に植えられたリニューアブルな資源を見逃していて本当に豊かな未来ってあるのでしょうか。豊かさって何?化石燃料にたくさん恩恵に預かっていて、否定する気は毛頭ないけれど、手触り感があってリアルに触れられるって豊かさの大事な条件だと感じます。人工林は実はあなたのすぐそばにある。

人工林はこれまで木材としての価値でしか経済的には評価されてきませんでした。しかし、時代も移り変わり声高にSDGsが叫ばれ、多くの人が災害の激甚化に慄いている現在、人工林の価値はもはや木材それだけに留まらず、そこを手入れすることで災害から地域を守り、豊かな生態系を育み(鹿などの獣害は特に困っています)、何よりより僕たちがより楽しく生きる(今風に言うとウェルビーイング)ための場所なんじゃないだろうか。

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森と地域が分断されていた社会から、森と共生する社会へ。

近年、原木の価格こそ目に見えて上がってはいませんが、大型の製材所が各地ででき、特に九州など局地的に木材の需要が拡大し大掛かりな伐採も進んでいます。一方、あたり一体がスギで、種子を飛ばす母樹もなかったり埋土種子もないようなところでは勝手に森林には戻らず一面ススキに覆われるだけだったり草本類だけで木は育たないケースが多くあります。人が一度手をつけたところは簡単に自然には戻らないんですよね。

伐ってたくさん木材を使うことは決して悪いことじゃない。大事なのは、また次の世界を形作る新たな森づくりを進めていくこと。僕たちは、スギやヒノキなどの針葉樹を育てるだけでなく、長い時間をかけて天然の森林に更新されていけるようなそういった森づくりや、針葉樹と広葉樹が混ざる混交林など、多様な森林づくり挑戦します。そして、そこに多くの人を巻き込んでいきます。都会に住む人も田舎に住む人も大人も子供もみんなで森に行って一緒に森をつくりたい。兼業や副業もできるようにしていきたい。苗は地域みんなの家の庭で育てたい。みんなで木を植えることを全力で楽しみたい。

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