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「コーヒーの品質」の再定義④

さて、ここまでは論理的に「高品質なコーヒー」について検討してきました。一言で定義づけるならば「お客様に寄り添ったコーヒー」となりますが、恐らく本記事を読んでくださっている大多数の方からすれば、香味に関する直接的な議論が抜けているため少し拍子抜けする定義になっているのではないかと思います。…お気持ちはよくわかります。コーヒーの品質なんていいながら、その答えが「お客様に寄り添う」なんて普遍的なサービス業っぽいものでは、これじゃない感が大きいのも仕方ありません。そのため最終回である今回は、香味の目線からみてどんなコーヒーが高品質といえるのかを検討したいと思います。

恐らく間違いないことから当たりをつけて「香味の品質」を検討する

繰り返しになりますが、品質とは「製品やサービスなどが、顧客からの要求事項やニーズにどれだけ合っているかを示す程度」のことでした。結論から言いますと、すべての顧客ニーズに合った香味というのは、不可能です。コーヒーは嗜好品ですから顧客それぞれで好みも変わりますし、私の知り合いでもトップクラスのスペシャルティコーヒーが好きという人もいれば、スペシャルティと飲み比べた上でスタンダードなインスタントコーヒーのほうが好きという人もいます。こういった現実の中で高品質な香味を検討するためには、少し後ろ向きですが「この香味は大多数の人が嫌うだろう」というポイントで当たりをつけるのが有効です。
さしあたり、大多数の人が嫌いであろう香味といえば「雑味」ですね。どんなコーヒー本を紐解いても「雑味はでないように」というのが共通認識ですし、体感的にも雑味はあるよりない方がいいという意見が多数派です。
では具体的に「雑味」とはなにかといえば、文字通り「雑な味」ですね。ここでいう「雑」とは、飲みにくかったり、飲んでいて嫌になったりする原因であることを指すと思われます。それらがコーヒーに現れる原因としては、鮮度が落ちることにより生じる成分と、香味のムラが挙げられます。
鮮度が落ちることで、香味成分が酸化し、収斂味(渋酸っぱい味)が目立つようになります。それがコーヒーに入ることで、飲んでいて不快な味がするようになります。劣化したコーヒーを飲むと、下顎の両端に嫌な味が広がるという方がいらっしゃいますが、あれはまさしく収斂味を感じているといえます。
また、香味ムラについては、一番の原因は焙煎ムラです。焙煎ムラは、浅煎りの豆と深煎りの豆が混在しているというムラと、一粒の中でも外側と内側で発生しているムラの2通りがあります。浅煎りと深煎りの混在は近年前向きにわざと取り組んでいる例もありますが、大半は焙煎ムラは香味の不協和音を招き、飲みにくい香味に繋がります。
以上を総括すると、雑味のないコーヒーが高品質である可能性が高く、そのためには鮮度が良くて焙煎ムラがない必要があるということになります。鮮度に関しては受注生産や豆売の徹底などシステム面で今日からでも実現できますが、焙煎ムラに関しては技術面での向上が必要なため、コーヒー屋が高品質なコーヒーを提供するためにリソースを割くべき優先項目といえます。

高品質とは「派手さ」ではなく「誠実さ」

本記事では品質に関してネチっこくお話してきました。明解なことも事細かに紐解いてきましたが、ここまでをシンプルに言えば、高品質なコーヒーとは「お客様に寄り添った、鮮度が良く焙煎ムラのないコーヒー」ということになります。
前回もお話しましたが、決して「店主の好み」ではいけないんです。もちろん、スペシャルティコーヒーや認証コーヒーを設置すれば、その派手さやキャッチでお客様を楽しませることもできるかもしれません。しかし、真に高品質なコーヒーとはお客様とコーヒーに誠実に向き合ってつくられたコーヒーのことです。
千里の道も一歩から、高品質なコーヒーは目の前のお客様とコーヒーから、そういった意識をもつことこそ、高品質なコーヒーを提供する近道なのだと思います。

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