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「コーヒーの品質」の再定義③

前回の文末にて、「高品質なコーヒーとは、お客様に寄り添い、要求事項やニーズに合わせたコーヒー」と定義づけました。しかしこれだけではあまりに具体性に乏しいので、今回はそこを掘り下げて、いかにして高品質なコーヒーを提供するかについて検討したいと思います。

お客様に寄り添うために

お客様に寄り添う、ニーズを満たす、顧客満足度を高める…言い方は色々ありますが、共通して必要なのは、お客様の声を拾うということです。
しかし、現場に即したお話をするならば、お客様の声を正確に拾うのはかなり困難です。なぜならば、お客様自身も自分がどんなコーヒーを欲しているのか、言語化するのが難しいからです(コーヒーに限らず、自分自身のニーズを具体的に言語化するのは誰だって難しいものです)。なんなら、言語化したニーズが実際には間違っていた、なんてこともあります。
具体的には、まず代表的なものとして「酸味への誤解」によるものが挙げられます。「酸っぱいコーヒーが苦手」、という言葉は本当に多くの方がおっしゃいますが、これを安直に受け取って苦目増増のコーヒーを提案したら大目玉を食らうでしょう。もちろん、スペシャルティコーヒーのフルーティな酸味が苦手という意味で「酸っぱいコーヒーが苦手」とおっしゃる方もいます。しかし、多くの場合「酸っぱいコーヒーが苦手」とおっしゃる方は、鮮度が落ちたコーヒー特有の収斂味、渋酸っぱい香味が苦手なんです。当店のお客様でも、ご来店一言目が「酸っぱくないコーヒーある?」という方もいらっしゃいましたが、今ではコロンビアベースの中浅煎りのコーヒーをご愛顧いただいております。
自分自身の、確固たるコーヒーの好みがある方は、体感的には近年増加傾向にあります。しかし、残念ながらまだまだ少数派であるというのが現実で、多くの方は「なんでもいい」「よくわからない」「とりあえず酸っぱいのはいやだ」くらいの認識だと思います。そういったお客様に寄り添うためには、会話の中で行間を読みニーズを掘り出すことが必要で、粘り強くヒアリングを行うことが求められます。ただ、一人ひとりに長時間対応することは、顧客満足度は高まるかもしれませんが売上規模拡大は難しいため、回転率を高めるにはいかにして少ない情報から多くを提供できるかが鍵となります。これは経験を積み重ねて培うしかありません。

寄り添った成果を顕在化するために

また、幅広いお客様のニーズに応えるコーヒーを提供するためには、それだけの広さがある引き出しを持つことも必要です。それは銘柄数かもしれませんし、焙煎や抽出による香味のコントロール技術かもしれません。いずれにしても、どんなコーヒーを求められているのかがわかったとしても、それを形にできなければ意味がありません。
また、コーヒー豆は農産物であり、同じ銘柄でも毎年味わいは異なり、その上、収穫からの経時変化でも微妙に変化します。しかし品質管理の面でいえば香味が安定していないのは良くないため、安定した香味を提供する校正能力も必要です。でなければ、せっかくお客様に寄り添って成果を顕在化出来ても、「なんか味落ちたね」と言われてしまいます。

まとめ

ここまで長々と(遠回りもしつつ)高品質なコーヒーについてお話してきました。大雑把にまとめてしまえば、高品質なコーヒーを提供するためには絶えずお客様の声に耳を傾け、それを端的かつ迅速に行い、しっかりと表現するだけの引き出しを持つことが必要ということです。
あえてここまで触れてきませんでしたが、最後にもう一つ大切なことがあります。それは、「自分自身の好みを持ち出さないこと」です。もちろん、「これ美味しいよ!」と、自分自身のコーヒーに自信を持つことは大切です。もし自信がなければ、それはお客様にも伝わり、飲む気を損ねてしまうからです。これは、本当は美味しいコーヒーだったとしても、美味しいと感じていただけないことを招きます。ただ、あくまでも高品質なコーヒーを目指す過程においては、決して好みを持ち出してはいけません。シンプルに、お客様に寄り添い、それを叶えることだけが、高品質なコーヒーへのたった一つの道なのだと、当店は考えます。

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