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感覚で使われている言葉に向き合おうシリーズ②

結局シリーズ化しました(笑)

前回の記事では、日常生活で感覚的に使われている「普通」という言葉に関して掘り下げてお話いたしました(そもそもなぜこんなことを話題にしているのかも前回の記事にてご参照いただければ幸いです)。

今回は「面白い」についてです。

ここでいう「面白い」とは、ギャグやコントが笑えるものという「面白い」ではなく、「面白い記事」「面白い商品」「面白いサービス」といったものを指します。

さて。毎回恒例ですが、「面白い」を辞書で引くと「魅力ある物事に心が明るみ、目の前がぱっとひらけて晴ればれした状態」「心が引かれて興味深い」「こっけいだ。おかしい」とあります。3つ目はギャグやコントに対しての意味ですのでここでは省略するとして、1つ目と2つ目に焦点を当てて考えてみましょう。

まぁ焦点を当てるほどでもないのですが(笑)
上記の意味合い、少し考えれば分かる通りですが、いずれも自分自身が、なんですよね。「心が明る」むのも「心が引かれ」るのも、「誰が」といえば自分です。すなわち「面白い」と発言する時、それは他でもない「自分が面白いと思っている」ということなんです。

なぜこんな自明なことを丁寧に申したかといいますと、自分の「面白い」は他人にとって「面白い」とは限らない、ということなんです。
もちろん、「おー、これ面白い!」と自分自身の興味関心を表現するのは自由ですし、情緒としてわかりやすい、明確かつ便利な表現です。ただ、「これ面白いから使ってみな(やってみな)」と、他人に押し付けるのはまったく良くありません。

もっと問題なのは、自分自身が何をもって「面白い」と感じているのかを明確に理解できている人が少ないことです。「何が面白いんですか?」と質問して「これは〇〇が△△するときに役立ちそうだと思えるし、そうなると□□が簡単になると想像できる期待値が高いから」くらいに具体的に話してくださる方は素晴らしいと思いますが、「だって面白そうじゃん?わからない?」くらいのテンションでこられても困りませんか?

これは私が他人にコーヒーを勧める際に気をつけていることでもあります。私は個人的に「ハンドドリップは面白い」と思っておりますが、それはハンドドリップだと熟達の度合いが(味わいや注ぎ方の安定度、ドリップ後のフィルター内の出来形などから)わかりやすいですし、またコーヒーに対する個人の哲学を一番多く語ってくれる抽出方法だと思える(粉量、粒度、湯温、蒸らし時間、注ぎ方など変数が多い)ので、言葉よりもコーヒーを語り合うのに最適な手法だと思い、心引かれるからです。
ただ、私以外の人は、そんなことに心引かれる可能性は低いかもしれません。むしろ手間だという印象が勝ち、全自動コーヒーメーカーが良いという考えの方が多数派でしょう。そんな中に、「ハンドドリップって面白いんだよ!なんでみんなやらないの?意味分かんない!」と乱入したら、狂気としか思えませんよね(笑)

以上から私が何をお話したかったかといいますと、「面白い」という表現は対自分用の独り言のように使うものであって、他人に勧める時には極力使用しないほうがいいということです。
また、少し余談ですが、よくグルメリポーターが「面白い味」と評するのは美味しいと思えなくて困った時だと言われています。そこから考えると、「面白い」という表現は、ともすれば褒めるところがない時に使用する当たり障りのない言葉だともいえます。その意味では、対象を評価する際にも使用しないほうが良いともいえます(具体的な「面白さ」が併せて説明されているなら別ですが)。

感覚的な言葉は便利ですが、乱用は誤解を招くということを、知っていただきたいと願います。

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