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書評…戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!

ここではいつもと趣向を変えまして、書評を綴っていきたいと思います。記念すべき一冊目は、もっとコーヒーの専門書でも良かったのですが、大学院でコーヒー「文化」を研究した身としては、こちらを紹介したいと思います!

本書の概要

ネタバレをするわけにはいかないですが、書評を語るために本書の概要だけ説明いたします。
本書は、小説風のビジネス書です。コーヒーやビジネスに無頓着な主人公が、転職先のコーヒーメーカーで新たなプロジェクトに携わりつつ、様々な出来事から経営戦略のイロハを学ぶ物語です。読者目線でも、コーヒービジネスに関連した様々な経営戦略を学ぶことができ、どれもコーヒー以外のビジネスにも応用可能ですので、明日から会社で使える知見を得ることができる一冊です。

戦略を練る上で大切なたった一つのこと

本書では様々な経営戦略を学ぶことができますが、一貫して大切にする必要があることが説かれています。それは、「らしさを追求すること」です。
どんな事業者も、何らかの形で掲げている「理念」があります。もちろん、掲げれば何だって良いものでもありますが、より良い経営理念とは「らしさ」が的確に表現されているものです。本書における「らしさを追求すること」とは、その理念をいかに崩さないで有効な戦略を打ち出せるか、を意味しています。
例えば、本書で主人公が所属する会社「ドリームコーヒー」は、コーヒー農園から一杯のカップまで、すべてのプロセスを一元管理できるようになっています。そしてその仕組みをもって、お客様に最高の状態の一杯を提供できることが強みです。しかし冒頭の話の中で、主人公はコストカットのために「ロブスタ種の使用」「粉の状態でカフェ店舗に出荷」ということを提案してしまいます。当然、上司に一蹴されるわけですが、こういった「らしさ」を考慮しない戦略を提案するビジネスマンは実際多いのではないでしょうか。
中盤でも、外資系コンサルが主人公のライバル会社にテコ入れしましたが、やはりコストカットのために「ヒット商品のブレンド内容を安価な豆に変更する」「粉の状態でカフェ店舗に出荷」「手でなく機械で抽出」などの策を実行します。当然のように顧客離れが発生し、ついには看板バリスタの離職を招く結果となりました。「らしさ」を追求しない戦略のために「らしさ」を失ってしまう、それが長期的には売上を大幅に下げ、企業生存をも危ぶまれることに繋がってしまう、そんなことを本書は教えてくれます。
ところでこれは余談ですが、粉の状態で店舗に準備するって誰でも考えるんですよね。そりゃ手軽ですし、ミルの掃除やメンテナンスもしなくて良いし、どうみてもコストカットに繋がります。ただ、それを薦めてくる人って、まるでその利便性を知らないとでも思っているかのように説明してくることが多いです。いつもそうですが、不思議です。

戦略の有効性は時代や文化に左右される

話を戻しますね(笑)
本書で語られることの中で、「らしさを追求すること」の他に重要視されていることがあります。それは「戦略には賞味期限がある」ということです。
物語の中で、ドトールの戦略について触れられています。ドトールは喫茶店最盛期の中、低価格・高回転率の店舗戦略で大成功をおさめましたが、近年はスペシャルティコーヒーの時代を鑑みて高級路線のコーヒー店を展開するなど、新たな戦略を模索しています。
私も大学院の研究の中で、カフェや喫茶店が土地土地の文化に合わせて戦略を立てているのを感じました。田舎、都会というだけでなく、食文化や気候によっても工夫を凝らしている場所ばかりでした(「らしさ」を見失っているところもありましたが…)。

価値は「らしさ」でのみ提供され続ける

これは私が本書から読み取ったことですが。
ビジネスは社会にどれだけの価値を提供できるかが重要です。そしてその価値とは、「らしさ」によってユニークさをもち、持続的に提供されます。逆にいえば「らしさ」のない価値は、他社でも代替可能なため、価格競争に陥り、大手に敗北したのち事業喪失に繋がってしまいます。

本書は私が大学院時代に読破した一冊ですが、今でも時折読み返してはビジネスに活用しています。事業者を目指す方はもちろん、すでに事業に取り組んでいるすべての方に、一度は読んでいただきたい一冊です。

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