レオの火消し(8)

8

「ところでレオ、火消しを使えるのは結構なんだが、お前喧嘩の腕前はどうなんだ。」
松尾は少し疑いの眼差しを作り、レオに聞いた。
「松尾さん、バーの一件でレオの発火を見ました。発火種はヒョウでして、高速で移動し、知覚器官も強化出来る様です。」
柳が少し自慢げに松尾に報告するなか、レオは嫌そうに目線を逸らす。
「そうか。まぁ、裏稼業でそれなりに活動してた奴だ。少しは実力があるんだろう。」
松尾は柳の報告を聞くと納得したような様子でそう言うとまた少し上を向いた。
「じゃあ明日の早朝にまたこの事務所に来い。ヘリを用意しておく。飯能の現場までひとっ飛びで行け。」
松尾はそう言うと立ち上がり、執務机へゆっくりと戻った。
「なぁ、現場の工場建設は少しは継続してるのか?」
レオは面倒くさそうに松尾に聞いた。
「あぁ?事件のせいで一旦は中止してるが、社長と何人かの事務作業員は現場にいるらしい。」
松尾は片手に持った書類に目を通しながら、レオを見ずに答えた。
「そうか。じゃあ明日の早朝に現場で。ヘリは要らない。」
レオはソファからゆっくりと立ち上がり、出口に向かった。
「レオ、現場でって、あなた位置は分かってるんですか?、、」
柳は少し狼狽えながらレオに聞いた。
「大体分かるよ。」
レオは出口のドアを半開きにしながらそう言うと、出て行った。

翌朝早朝、レオは自宅のリビングで黒いコートを羽織ると玄関から出ていく。
薄暗い明け方に少し冷たい風が吹く。
高級マンションの入口まで出ると、少し伸びをした。
「ふぅ、さっさと片付けて帰ってくるか。駅は、、、こっちか。」
首を駅があるであろう方向に向けると、レオはゆっくりと深呼吸し、発火光を出し始めた。
レオの足と目から淡い赤の光が漏れ始め、足は少し盛り上がり、目は静かにヒョウの丸目に変化した。
そのまま獲物を狙うヒョウのように、ゆっくりと四つん這いになると、レオは全身に力を入れ始めた。目は駅の方角をしっかりと見ている。
周りに静かな風が吹き始めた瞬間、レオは超高速で走り始めた。
あたりの景色が残像と現像を繰り返し、幻想的な世界をつく出す中、レオは丸い目を機敏に動かしながら障害物を避け、目的地へと向かう。
2、3分ほど走り続けると池袋駅が見えてきた。
レオは少し態勢を変えると、大きくジャンプし、線路内へと着地した。

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