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忘れたくないおばあちゃんと河童の記憶
夏が終わる前にちょっと涼しくなる話をしておこうと思います。
3年前のことです。実家の母から電話がありました。聞けばNHKのBSで9年も前に放送された、おばあちゃんが出演している番組が再編集されてまた放送されるとのこと。
「新日本風土記」という日本各地の郷土を情緒豊かに映し出す番組で、この回は日本各地に伝わる妖怪の伝説や目撃証言を特集していました。
おばあちゃんは岩手県で河童を見た者の一人として、当時の様子を淡々と語っていました。
当のおばあちゃんはこの再放送の2年程前にすでに亡くなっていたので、懐かしい東北弁を聞いた時、胸の奥にこみ上げるものがありました。
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ーーー昭和14年の夏、小学4年生のキクさん(おばあちゃん)は山を越えた学校に通っていました。帰り道、友達と沢で水遊びをしていた時に河童が現れました。
「こう、ちゃんと人間のように(指が)あって、で、水かきがあんの。それでこう水かけてよこして。それから、今度はおっかねぇのを忘れて、ふたぁりして、負けねぇで水かけて遊んだのね。同じなことやんのね。こう、ふたつ(の手)でやればこう(ふたつの手で)やって、かたっぽでこうやったらせば、その通りまねっこをしてやんの。手で。だからおもしれぇ、おもしれぇと思ったら、ほんとに暗くなるまでやったの」
ーーーキクさんは学校では男の子にいじめられていました。でも河童を見た話をすると連れて行ってほしいとせがまれます。キクさんはちょっぴり鼻高々でその男の子たちを沢に案内しました。
「みんなついてきてねぇ。ぞろぞろついてきて。それから一番自分をいじめた人たちが先になって、見ってぇ、見ってぇと言ってついてきたから…それからわたしをいじめなくなったからね」
ーーーキクさんの少女時代を明るくしてくれた河童。
「嘘じゃなかったが、どこへいったべな。河童さんは…今どこを歩いているのか…私も80になったから河童さんも年取ったこったね」
最後に弱弱しく微笑んで、沢を見つめるおばあちゃんの横顔は今は亡き友を懐かしむようにとてもさみし気でした。
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