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A・O・Z・O・R・A


Re:
あはは(笑)
そうだね

”笑” 文章で感情を伝えるのは、これが限界なのかも知れない。
小さな携帯の画面を見つめながら、忘れていた様に口元だけで笑った。

薄茶色のレンガが規則正しく並べられた壁にもたれ掛かると、ほんの数分間の晴れ間で、さっきまで雨に濡らされていた壁は、もう完全に渇き日溜まりの暖かさを背中に感じさせた。

久し振りの青空を見上げた。
その空の眩しさにボクはまた俯き、足下の水たまりに映る空へと目を反らした。
雲がもの凄い勢いで流れている。昨日の大雪が、何年か前に見た映画の様に遠い記憶の中で薄らと蘇る。そして『このまま全てが、白く埋もれてしまえばいいのに』と、暗い部屋の窓から一人外を見ていた事を思い出した。

だけど、多分これからも独りきりだと思うよ。こんなに病んでいるのに、誰かをまた愛したりなんて出来ないから。

少しだけ開けた扉から、心は指先を伝い小さな画面に文字を並べてゆく。

普段自分の心を、誰かに話す事はめったに無かった。

人は立ち止まれない。
『忘れてしまおう』とか『やり直そうなんて思わない』

永遠に続くその先に、何があるのかなんて分からない。ただ人は、望んだり願ったりする事で、全ての不安を感じない様にしているだけだと思う。

「新しい恋を探すのもいいかもね」
「見つけた時には、ちゃんと報告しないとダメだよー!」

目の前の雑踏を見つめた。
まるで背中に管理番号でも付けられている様に、皆同じ服を着て、同じトレンドを追いかけて、同じ物を食べて、誰かと同じ恋愛をする。

本当はそれが幸せなのかもしれない。
自分らしさなんて、目に見えないややこしい物は、本当は持たない方がいいのかもしれないけど、キミには少しだけ伝わったと信じてるよ。

「もちろん繋がってるよ」
「昨日までも、これからも」
「ねえ。この空、すごく青いよ」
「キミの心も、キミの街の空も、明日は青空だといいね」

送信ボタンを押して、携帯をポケットにしまった。
そして今度は、さっきよりも長く眩しい青空を見上げ、ボクは雑踏の中を歩き出した。



short story @ green

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