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ボランタリークレジット市場とは? ー 拡大が期待される民間主導のクレジット

気候変動が地球規模の課題としてますます注目される中、企業や個人が環境への影響を最小限に抑えるための手段が求められています。その一環として注目されているのが、ボランタリークレジット市場です。ボランタリークレジットとは、温室効果ガスの削減を証明するクレジットであり、主に自発的に取引されるものです。
本記事では、ボランタリークレジット市場の基本的な概念から、なぜこの市場が重要なのか、そして現在の市場の動向や今後の展望について詳しく解説します。


◆ボランタリークレジット市場とは

カーボンクレジット市場には、国連や各国政府が主導するコンプライアンス市場(Compliance Carbon Market/CCM)と、民間主導により行われるボランタリークレジット市場(Voluntary Carbon Market:以下、VCM)の2つがあります。
VCMは、運営主体がNGOなどの民間組織であり、国内規制や国際条約によらず独立した民間第三者組織により管理されるクレジットです。企業の自主的な削減活動のほか、各国規制への対応で活用されるケースもあります。

◆コンプライアンスクレジットとの違い

コンプライアンスクレジットは、日本においてはJ-クレジット、JCM等が該当します。これらはSHK制度*等、国や自治体へのCo2排出量報告や国際イニシアチブでの活用が可能ですが、ボランタリークレジットは公的な報告への利用性は限定的です。
一方、ボランタリークレジットは行政による法令や規制による制限が少ないため、幅広い用途で活用できます。世界規模での市場の拡大も著しく、新たな取り組みも行われています。
*「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)に基づき、温室効果ガスを多量に排出する事業者に、自らのオン多湿効果ガス排出量を算定・報告することを義務付けた制度。

◆VCMの主な認証機関と特徴

VCMの認証基準は多くありますが、本記事では主な4つの認証機関を紹介します。

農林水産省(2024)より作成

◆ボランタリークレジットの取得方法

ボランタリークレジットの取得方法は、認証機関ごとに細かい部分は異なりますが、大まかな流れは以下の通りです。

(1)プロジェクトの計画立案
 各認証機関の様式に基づきプロジェクト実施者が計画書を作成
(2)プロジェクトの有効化審査
 認証機関が認定した第三者検証機関がプロジェクトの適格性・排出量・吸収量算定の正確性を評価、判断
(3)プロジェクトの登録
 審査通過後、プロジェクトが登録される。
(4)モニタリング
 プロジェクト実施者が計画に基づきモニタリングを実施、モニタリング報告書を作成。
(5)クレジットの検証
 第三者検証機関は、プロジェクト実施者からのモニタリング報告書について検証報告書を作成
(6)クレジットの認証
 認証機関の事務局は検証機関からの報告書を確認、クレジットを認証する。
(7)クレジットの登録・管理 
 認証を受けたクレジットは、認証機関により管理がされる。

◆VCMの課題と今後

VCMの現在の克服すべき課題として、グリーンウォッシュがあげられます。
グリーンウォッシュとは、環境に良いイメージとして使用される「グリーン」と、「嘘を誤魔化す」「欠点を隠して取り繕う」を意味する「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた言葉です。実際は環境に配慮した行動をしていないにも関わらず、しているように見せかけて商品やサービスを提供することを意味します。
VCMにおけるグリーンウォッシュは、カーボンクレジットそのもの、もしくはカーボンクレジットを生み出す活動のプラスの効果を誇張する2つがあります。
VCMに対するグリーンウォッシュの懸念の高まりから、購入控えや発行見送りがされているケースも見受けられます。
このような状況を受けて、カーボンクレジットの品質を担保する枠組みや仕組み作りが業界へ求められたのです。
2020年には、ボランタリーカーボン市場の拡大に関するタスクフォース (Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets:TSVCM)が設立され、彼らの提言により、2021年にクオリティの高い認証プログラム及びカーボンクレジットの要件を定義するコア・カーボン原則(CCP: Core Carbon Principles)の策定が提言され、2022年にはドラフトが公表されています。

◆まとめ

現在、世界で日本を含む120カ国以上が2050年までに、世界最大の二酸化炭素排出国である中国は2060年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しています。
そのため、政治的・経済的にもカーボンクレジットの存在感は高まっていくことでしょう。国境を越えて幅広く運用が可能なクレジットを扱うVCMは、その1つです。
今後、グリーンウォッシュ等の課題を克服し信頼性を得て、温暖化防止に重要な役割を果たすことが期待されます。

◆Green Carbonの取り組み

Green Carbon株式会社は、「生命の力で地球を救う」というビジョンのもと、国内外で自然由来のカーボンクレジット創出に取り組んでいます。
中でも、水田によるメタン排出削減効果のJ-クレジット化に注力しています。国内では、水田由来のJ-クレジット創出を目的とした「*稲作コンソーシアム」を発足させ、全国の生産農家と連携して地球環境の保全と脱炭素化に努めています。2024年8月現在、稲作コンソーシアムへの登録面積は40,000ha以上、約900社以上の企業・農業法人が参画しています。これにより、全国に独自の農家ネットワークを構築しています。また、海外ではベトナム、フィリピン、タイなどの東南アジア地域を中心に、水田のメタンガス削減プロジェクトに取り組んでいます。今後もプロジェクトの展開地域を拡大し、各国の脱炭素化に貢献していきます。

*稲作コンソーシアム:
Green Carbonが運営する、「水稲栽培による中干し期間の延長」 によるJ-クレジット申請をまとめて実施するためのコンソーシアムで、個人農家、農業法人、企業、金融機関、自治体、メディアなどが参画しています。

◆Green Carbon 株式会社

代表者   :代表取締役 大北 潤
所在地   :東京都港区赤坂5-2-33IsaI AKASAKA607
設立    :2019年12月
事業内容  :カーボンクレジット創出販売事業農業関連事業、環境関連事業、その他、関連する事業及びESGコンサルティング事業