見出し画像

二国間クレジット制度(JCM)とは? ー 日本と諸外国をつなぐカーボンクレジットの仕組み

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、以下「JCM」)は、二国間の合意に基づき、温室効果ガス(GHG)の削減を促進するためのクレジット取引を行う制度です。この制度では、一国が他国の温室効果ガス削減プロジェクトに対してクレジットを提供し、その見返りに自国の排出削減目標を達成するという仕組みが採用されます。
本記事では、日本と海外をつなぐJCMについて詳しく説明します。


◆JCMとは

二国間クレジット制度(JCM)は、先進国と途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の効果を両国で分け合う制度です。
京都議定書の第一約束期間(2008-2012)、日本では先進国の削減目標に活用出来る炭素クレジット創出を可能とする制度である「クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism、以下「CDM」)」が導入されました。しかし、技術の導入やモニタリングの課題があったことから、それらを改善した新たなスキームであるJCMが新たに運用されています。

◆JCMの基本概念と概要

JCMは以下の3つの基本概念があります。
(1)優れた脱炭素技術・製品・システム・サービス・インフラの普及や緩和活動の実施を加速し、途上国などの持続可能な開発に貢献する
(2)温室効果ガス排出削減・九州への日本の貢献を、定量的に評価するとともに、日本の排出削減目標の達成に活用する。
(3)地球規模での温室効果ガス排出削減・九州行動を促進することにより、国連気候変動枠組み条約の究極的な目標の達成に貢献する。

経済産業省(2023)より作成

カーボンクレジット創出において、JCMは実現可能性調査からクレジット発行まで資金及び技術支援を受けられるというメリットがあります。その一方、プロジェクトの実施において日本とパートナー国両方の承認を得る必要があるなど、二国間制度特有の手続き上の障害があります。

◆JCMの取得方法

JCMにおいて、クレジット取得のためには日本とパートナー国の両国で、以下のステップを踏む必要があります。

1.提案方法論の提出(パートナー国間で適用可能な既存のJCM方法論がない場合)
 日本とパートナー国間で開催される合同委員会にプロジェクト参加者は方法論を提出し、完全性などの確認が行われ、承認を受ける。
2.プロジェクト計画書(PDD)及び妥当性確認
プロジェクト参加者はプロジェクト計画書を第三者機関に提出し、第三者機関はプロジェクトの妥当性の確認を行う。
3.プロジェクトの登録
 妥当性の確認後、プロジェクト参加者は合同委員会にプロジェクト登録を行う。
4.モニタリングとその検証
 プロジェクト参加者は、モニタリングを実施し報告書を作成、第三者機関に提出する。第三者機関は排出量削減量の検証を行う。
5.クレジット発行
 検証により排出量削減が確認されると、プロジェクト参加者はクレジット発行通知の申請を合同委員会に申請する。申請が受理された後、政府よりクレジットの発行が行われる。

◆JCMの展望

現在日本では、環境省JCM資金支援事業の区分において、29か国と二か国間文書を交わし、240の案件が採択されています。日本政府は、2025年をめどに30カ国程度に拡大することを目指しているため、さらにパートナー国は増えると考えられます。
2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画において、「2030年までに累積で1億t-CO2程度の国際的な排出削減・吸収量」の確保が目標とされ、2050カーボンニュートラルに向け、政府主導で様々な取り組みが行われることが予測されます。
JCMは期待される取り組みの1つです。早速同年12月より、3回にわたり「民間によるJCM活用のための促進策に関する検討会」が環境省と経済産業省により開催されました。この検討会により、実務的な観点より民間におけるJCM活用の提言がまとめられ、民間JCMへの移行が促進される方向性にあります。
以上より、現在JCMは国を挙げて推進されている事業と言えるでしょう。

◆まとめ

JCMは、日本が世界全体の温室効果ガス排出防止に高度な技術・経験をもって貢献できる絶好の機会とも言えます。
国内の政府・企業はもちろん、既存プロジェクトが少ないパートナー国(中央アジア・東欧諸国)からの期待が高まると考えられます。

◆Green Carbonの取り組み

Green Carbon株式会社は、「生命の力で地球を救う」というビジョンのもと、国内外で自然由来のカーボンクレジット創出に取り組んでいます。
中でも、水田によるメタン排出削減効果のJ-クレジット化に注力しています。国内では、水田由来のJ-クレジット創出を目的とした「*稲作コンソーシアム」を発足させ、全国の生産農家と連携して地球環境の保全と脱炭素化に努めています。2024年8月現在、稲作コンソーシアムへの登録面積は40,000ha以上、約900社以上の企業・農業法人が参画しています。これにより、全国に独自の農家ネットワークを構築しています。また、海外ではベトナム、フィリピン、タイなどの東南アジア地域を中心に、水田のメタンガス削減プロジェクトに取り組んでいます。今後もプロジェクトの展開地域を拡大し、各国の脱炭素化に貢献していきます。

*稲作コンソーシアム:
Green Carbonが運営する、「水稲栽培による中干し期間の延長」 によるJ-クレジット申請をまとめて実施するためのコンソーシアムで、個人農家、農業法人、企業、金融機関、自治体、メディアなどが参画しています。

◆Green Carbon 株式会社

代表者   :代表取締役 大北 潤
所在地   :東京都港区赤坂5-2-33IsaI AKASAKA607
設立    :2019年12月
事業内容  :カーボンクレジット創出販売事業農業関連事業、環境関連事業、その他、関連する事業及びESGコンサルティング事業