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推しに推されて。

「推し活」という言葉が当たり前に使われるようになって、どれくらい経つのだろう。

私にはどうやら所謂「推し」がいるようなのだが、それをなかなか認められずにいた。推しという言葉のニュアンスに納得がいっていないからだ。

何を隠そう、私はNO MUSIC, NO LIFE(音楽がなければ生きていけない)タイプの人間で、日本を中心にオールジャンルかっこいいと思えば全部聴く音楽好きだ。小さなライブハウスも、青山のジャズバーも、武道館も東京ドームも。日比谷の野音も。フェスも。あらゆる場所で音楽を浴びてきた。あんな思い出もこんな思い出も、いつも音楽がそこにあった。

その中でも、私が特に好きなのは星野源さんとBE:FIRSTだ。好きすぎて苦しいくらい好きだ。え?!星野源とBE:FIRSTって全然違うじゃん!とか、アラフォーでボーイズグループ好きなの?すごいね!とか言われることがあるが、私は好きになるミュージシャンに偏見も持っていなければ、ジャンルも限定していない。ごく自然と、彼らに惹かれ、順調に憑りつかれている。

が、BE:FIRSTを好きになったとき私はどうしても「推し」という言葉を受け入れられなかった。「推す」という動詞が、どこかキャッチーでポップで軽やかすぎる響きを帯びているように感じたからだ。「完全に見た目と雰囲気だけで、きゃー!かっこいいー!ってはしゃぐこと」を指すのではないか?私はそう見られているのか?それだけは絶対に違う、という確信があったため、私は推し活をしているとは言いたくなかったのだ。

たとえばもし今私が入院したら病床でずっと彼らの音楽を聴きたいし、私がいつか天に召されたら送り出される時にも曲をかけてほしい。彼ら自身がおじいさんになってもずっと仲良く幸せでいてほしいし、それを命の限り見守り続けたい。それくらい激重な愛情を持っている。

歌い方が変わればすぐわかる。ラジオの声で体調を心配する。これまで私の人生を救ってくれた彼らと出会えてなかったらと思うと背筋が凍る。クオリティの高い演奏や歌、ダンスはもちろん、源もBE:FIRSTも、生き方、考え方、ファンへの愛情、素の表情・・・人として本当に気持ちよく素敵だから、全肯定、全力応援したくなる。

このドデカ感情を、「推し活」と表現することが果たして正解なんだろうか。私は真剣に悩んでいる。私は彼らの一挙手一投足が本当に大好きなんだ。推すどころの騒ぎではない。

そう思っていた少し前、彼らへの想いが募りすぎて、溢れて、苦しくて切なくて、SNSのストーリーズに、彼らのどこがどれだけ好きかを書きなぐったうえで、CDを何枚も買ったり、グッズを買ったり、メンバーとおそろいのアクセサリーを買ったりしたのは初めてだと続けた。そして、これは推し活なのかな・・・と本音がぽろりとこぼれた。

幼稚園からの幼馴染から、秒でダイレクトメッセージがきた。

「推し活だよ(笑)」

・・・そうか、推し活なのか。え?私は推し活をしているのか?!こんな一歩間違えると引かれてしまいそうなほど愛していても推し活なのか?!私の頭の中は沸騰寸前となってしまった。

そしてついにググった。

「推し活 とは」

「推し」とは、深い愛着を持っており他の方にもおすすめしたいと思う人物や物を指す表現

ファンとの違いは、ただ好きなだけでなく、人にも薦めたいと思うかどうか、ということらしい。「夏休みの推薦図書」的な感覚か?

なるほど確かに、私は星野源もBE:FIRSTもあまりに素晴らしすぎて、子どもたちはもちろん夫や両親にも紹介し、好きになってもらえるよう一緒にDVDを観たり、ライブに行ったり、出演番組やYouTubeを観るようにしている。自分の好きなものを知ってほしい、シェアしたい、願わくば一緒に好きになってほしい。

ここで気づいた。

これ、推し活だわ。

推す度合いは人によってさまざまで、それを否定も非難もしない。そもそも音楽自体をどれくらい好きかも全く違うんだし。でも私は、これまで苦しくて挫折したりもう無理だと思ったときに、彼らの音楽が寄り添ってくれた。大げさではなく命の、人生の恩人なんだから、重めの愛でも許してほしい。

ちなみに、言うまでもなく私の「最推し」は子供たちだ。
子供たちの幸せのためなら課金も応援も全力でする。

先日、オンラインの講義の仕事があり、一人部屋にこもっていたところ、娘が扉をちょっと開けて顔をのぞかせた。最初は気にしないようにしていたが、何度も何度もこちらに来るので、「どうしたの?」と小声で訊いた。

「・・・・ママ、だいすきっ!」

娘はオンライン講義中の私に渾身の投げキッスを送って去っていった。

もしかして、娘にとっての今の「推し」は、私なのかもしれない。

推しに推されるって、こんな感覚なんだな。
激重な推し活も、悪くないじゃないか。

好きなものを、まっすぐ好きと言える自分でいたいと、いつも思っている。

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