SNS覇道の時代の終わり。 ~優しい嘘と王道の時代へ~

インターネット掲示板黎明期

かつて、SNS、ともすればネット掲示板というのは、罵詈雑言の吹き荒れる場所だった。ワンクリック広告、詐欺、偽アダルトサイト、ブラクラ、精神的ブラクラ、そんなものが吹き荒れる場所であったのだ。
 特に匿名の2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)はそんな場所だった。

そんな場所では「半年ROMる」(半年間書き込みせず見ることに徹すること)とか、嘘をつく、騙す相手から真実を問いただす「論破」がとても重要だったのである。

彼の「論破芸」も、もともとは、100人いれば100人が嘘ついてる2ちゃんねるで培われたものである。
 2ちゃんねる時代のSNSには管理人などいなかった。正確に言えば、いなかった訳ではないが、全て放置されていた。放置せずにおこう、とした掲示板の管理者は存在していた。しかし、匿名のインターネットからスパム状態に送られる投稿の管理など、誰もできなかったのである。
 そして、その罵詈雑言やののしり合いを”面白いじゃん”と言って放置し、最低限の法的訴訟のみに対応する管理方針で、掲示板を拡大していったのが、この男、西村博之である。

 かくして、罵詈雑言、嘘、詐欺、良くも悪くも様々なものが集まるアンダーグラウンドとしてのインターネット掲示板文化が作られたのである。

 そこの掲示板、ともすればスレの治安は住民の自治であった。すなわち、「せっかくの良スレを荒らす人を、論破してリンチする」という自警団的治安維持である。
 いかなる良スレだとて、荒らし、ネットイナゴ、ミーハーな空気の読めない奴に荒らされては、2ちゃんねるというゴミ溜めからせっかく見つけたのに、台無しになってしまう。

 そのため、住民は理論武装し、良スレを荒らす人を論破してリンチし、締め上げたのである。これこそ、管理人のいない時代のSNSの治安維持であった。

 この時代のSNSはとても一般人が使えるモノではなく、一部のオタクの人だけが使うモノであった

覇道の時代の終わり。優しいSNS時代へ

そんな2ちゃんねる文化から長い時はたち、2010年代。IT大手、プラットフォーマーによるSNS運営が始まった。Facebook、X(旧Twitter)、Youtube、tiktok

 2ちゃんねるの匿名文化を持ち込んだ人々も次第に落ち着き、「良スレ」いや、良アカウントの保護は、プラットフォーマーに勤務する大量する管理者が、「人権侵害」として、削除、アカウント凍結を行うようになった。
 そして、住民同士の「論破による自治」は弁護士の民事訴訟へと姿を変え、ネット自警団の役割は弁護士が担うようになった。

そこでの人気アカウントは、イラストや美人のアカウント、音楽のアカウントなどで、かつてのアングラなコンテンツはもう見かけなくなった。
 精神的ブラクラなども見たことがない。(かつては”リンク踏み職人”と言って、インターネットの怪しいアドレスを踏んで何か教えてくれる奇特な人達もいたのだ)

論破という「混沌を制覇する力、覇道」が支配する時代から、「優しさと嘘、人を傷つけない力、共感で動く王道」の時代へとネットが移り変わったと思う。

 すでに、匿名から論破して、真実を見つける時代ではなくなったと思う。これからは王道。ホワイトライと美人やイケメンの時代なのかもしれない。

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