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部下の結婚式で主賓挨拶をした時の体験談 〜衝撃のビデオメッセージ編〜

昔、中部支店長として名古屋に着任してまだ間もないころ、部下の結婚式の主賓として出席し、衝撃の体験をした話です。今回は前編です。

着任して2日目の朝、部下の営業所長に連れられ一人の若い社員が部屋に入ってきて、「支店長、僕結婚することになりました!ぜひ結婚式で主賓のスピーチをお願いします!」と叫ぶのです。着任挨拶の時に声を掛けたので顔は覚えていましたが、まだ顔と名前が一致していないほぼ初対面での依頼に私はかなりたじろぎました。でも彼の真摯な依頼を断る訳にもいかず笑顔で引き受けたのでした。

しかし当日結婚式場へ行った私は顔から血の気が引くような恐怖と緊張を体験します。場所は関西最高級ホテル、来場者300名、関西財界有名人、霞が関の高級官僚、大臣秘書が出席し、披露宴の開宴を待っています。 

新郎の父親は、政界・関西財界に強いつながりのあるとんでもない実力者だったのです。こんな日本を代表するトップエリートの集まるパーティーで、一民間会社の地方支店でエラそうにしている私なんかが主賓挨拶をするなんて、”近所の学級代表をやってる小学生が日経ビジネスフォーラムで講演をする”ようなものです。着席した私は緊張で自律神経を制御できず、目は泳ぎ吐きそうになっていました。

どうしたら皆に気づかれずに逃げ出せるかを必死で考えていると、

ホテルの担当者が私の席の横に膝を折り、小声で話し掛けてきました。

「本日はおめでとうございます。秋山様のご挨拶を頂くのですが、その前にビデオレターと祝電披露がございます。その後ご案内をしますのでしばらくお待ちください」

? 主賓挨拶の前にビデオレターと祝電披露?なんかおかしな順番だなと。すると司会者からの案内が響きます

「それではお待たせいたしました。新郎新婦に大臣のT様からビデオメッセージが届いております。皆様スクリーンをご覧ください」

!?マジかー!!

ニュースに出てるT大臣が巨大スクリーンに笑顔で出てる!

「・・・T様からの心温まるビデオメッセージでした。それでは続きまして祝電が届いております。お時間の関係上一部の方のみのご披露をどうぞご容赦ください。NK長官S様、K大臣S様・・」

・・・・・

「それでは大変お待たせしました。新郎がお勤めの会社上司でおられます、SC工業株式会社中部支店長秋山様、どうぞよろしくお願いいたします。」

・・ないわ~、ありえんわ~、このタイミングで私ごときが主賓挨拶とは格が違いすぎる・・
着任挨拶のギャグで微妙にしかウケなかった罰ゲームなのか?このアンバランス感に新郎は気付かないのか?失敗したら恥ずかしくて会社に行けなくなるではないか・・・

もう緊張で気絶しそうですし、眩暈もしてきました。呼吸困難にもなっていましたが仕方ありません。何の気付きも閃きも無く、腹をくくってゆっくり立ち上がり、マイクに向かって歩き始めます。すると一歩近づくにつれて、緊張から解放され、マイクの前に立った時は会場を見渡すこともできるようになってきました。不思議な感覚です。覚悟を決めるとこんなにも落ち着くものなのか。そんな土壇場での自分の特性に初めて気付いたのでした。  私は笑顔で自己紹介し、練習してきたスピーチをゆっくり始めました。

つづく



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