Vol.03 強みを得るために必要なこと。|三河谷 弥生さん
大学卒業後、やよさんは東京に残り、“フリーで活躍できるダンサー”を模索する道を選んだ。
そのため、就職はせず、シフト自由なアパレルのアルバイトをしながら、ダンスのインストラクターの仕事と、Team JCDA(日本チアダンス協会プロデュースチーム)での活動を掛け持ちしていたという。
この生活を2、3年続けてきた25歳の時、「人生で一度はダンス留学しておきたい」と考えたやよさんは、全てを辞め単身ニューヨークへ。
エンターテイメントの本場でもあり、大好きな『アニー』の舞台でもあるニューヨークで、ダンス漬けの日々を送っていた。
忙しくも充実した留学生活だったが、環境の変化によるものなのか、頭痛やアレルギーなどの体調不良により、予定よりも少し早く帰国する道を選択する。
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アルバイター、インストラクター、パフォーマーの三足のわらじで歩む大学卒業後の生活から、ニューヨーク留学、そして帰国…。
当時の生活を「体力的には問題なかった」と話したやよさんだったが、こうも話していた。
今思えば、当時は自分のメンテナンスがほとんどできていなかったです。
大学卒業後のみならず、それ以前も、演劇やダンスに力を注いできたやよさんにとって、それらを軸にして、ひたすら走り続けることがひとつの当たり前となっていたのだろう。
しかし、ニューヨーク留学時に身体に現れた不調は、やよさんがこう話しているように、何かのサインであり、今のやよさんをつくる何かのきっかけだったのかもしれない。
ニューヨーク留学時、レッスンのウォーミングアップで、先生が取り入れていたのがヨガでした。留学以前にもヨガは軽くしたことがありましたし、留学中はそこまでヨガに惹かれた訳ではありませんでしたが、その後の自分を振り返ると、あの留学がひとつのターニングポイントではあったと思います。
この留学をきっかけに、帰国後、実家に戻ったやよさんは、アルバイトをしながらヨガのインストラクターの資格を取得した。
留学での経験を生かさなきゃ、という気持ちはありました。それに、周りのインストラクターの中でもヨガを取り入れている人が増えてきていて、「ヨガの何かそんなにいいのか」を単純に知りたい気持ちもありましたね。
資格取得後、しばらくは神戸で過ごしていたやよさんは、憧れの劇団のオーディションを受け、合格。再び上京した。
そのタイミングで大学時代の後輩で、現在、Gravisの取締役とインストラクターを勤める山田 里菜さんと再会し、Gravisの社員として活動を始め、現在に至っている。
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ニューヨーク留学をきっかけに、ヨガを深めていったやよさん。
それまで演劇やダンスを軸にしてきたやよさんに、ヨガはどう作用したのだろうか。
それまで、割と身体を酷使して、自分の限界を知らないまま突っ走ってきてしまったところがあったので、自分と対話するためのひとつの方法としてヨガを取り入れるようになりました。
ヨガをするようになって自分を見つめ直したり、自分に不要なものを省いて、集中すべき部分に集中できるようになったように思います。
そして何より、自分自身の限界を冷静に把握できるようになりました。
これに加え、やよさんが教えてくれたところによると、ヨガには心と身体を“結ぶ”・“繋ぐ”といった意味があるそうだ。
よく、“身体が資本”だというけれども、身体だけが元気でも心が乱れていれば、それは健全とは言えない。その逆も然りである。
身体に問題はなくても心に問題はないか、心に問題はなくても身体に問題はないか。
こうやって自分の外にばかり繋がりがちな意識を、自分の心、そして身体に繋げたり、心と身体がチグハグになっていないかどうかチェックする。
そういった心と身体の両面からアプローチするセルフメンテナンスを取り入れることの重要性は、やよさん自身の経験からも明らかである。
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「セルフメンテナンスが自分でできるというのは強い」とも話していたやよさんは現在、このスイッチとしてのヨガを、子ども向けのチアダンスのレッスンにも取り入れているそうだ。
ヨガをレッスンのメインにするのではなく、意識を切り替えるためのスイッチとしてレッスンの中にヨガの要素があればいいと考えています。
年々、チアで求められる動きがハードになっていて、生徒たちが成長する段階で怪我をすることも多いんです。
ヨガの要素をレッスンに取り入れているのは、そういった怪我を予防するという意味合いも大きいですが、自分と向き合うことで、生徒たちのメンタル部分の強化もできたらいいなと思っています。
自身がこれまでに身に付けてきた技術のみ留まらず、演劇やダンスの延長線上でのこういった経験も併せ、何かの形にして生徒さんたちに還元する。
インストラクターの役割のひとつに、そういったことがあるのだとすれば、やよさんがヨガの要素をレッスンに取り入れるということは、その還元のひとつの形なのだろう。
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やよさんにとってヨガは、自分と対話するためのスイッチであると同時に、ひとつの強みとなっていると思う。
しかし、この強みを得るまでには、自分の弱い部分と出会うことも多かったはずだ。
演劇やダンスといった、人前に立ってアピールすることへの憧れや、それを叶えるための負けん気がある一方で、進む道をひとつに絞ることに怖さを感じたり、ひとりでいる時間がないとダメだったり…。
そしてこれは、やよさんのダンスが好きという気持ちと、真面目さもあいまってのことだろうが、自分の限界を越えて頑張りすぎてしまったり…。
これまで歩んできた道を聞かせてもらって見えてきたのは、こういったやよさんの繊細さや、ちょっと不器用な一面だった。
でも、こういった部分がなければ、やよさんがヨガにたどり着くこともなかっただろうし、Gravisでヨガのクラスを受け持ったり、チアダンスのレッスンの中で取り入れることもなかったかもしれない。
そして、ニューヨーク留学をきっかけに、「『ヨガの何かそんなにいいのか』を単純に知りたい」という好奇心を持ったあの時、何もせずにいれば、やよさんがこのスイッチを強みとして得ることもなかったかもしれない。
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自分の弱みは強みと異なり、わざわざ知ろうとせずとも、薄々気づいてたりするものだと思う。
そう考えると、強みを得るために必要なのは、自分の弱いところに不意に遭遇してしまったり、思いがけず知るきっかけがあった時、どう行動するかを考え、何か行動を起こすことなのではないだろうか。
やよさんのこれまでの歩みを聞いていて、そんなことを考えた。
(Vol.04へつづきます)
#Gravis #チアダンス #Gravisの素直なところ 。