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Vol.02 負けず嫌いを燃料に。|三河谷 弥生さん


やよさんがミュージカル『アニー』のオーディションに合格したのが、中学3年生の秋も終わりのこと。この時期の中学3年生にとって、目下に迫っていたのは高校受験だった。

このオーディションに合格してからは、それまで受験しようと考えていた高校から、演劇等の芸能活動が継続できる高校を探し、受験校を変えた。進学後、授業に出席し始めたのは、『アニー』の春公演を終えてからだったため、中には、やよさんのことを“不登校の子”だと思っていた同級生もいたそうだ。


『アニー』への出演を皮切りに、受験校まで変え、そのまま演劇の道をひた走るのかと思いきや、高校時代は演劇も続けつつ、ごくごく真面目に学校での勉強に励んでていたという。

高校のクラスが成績順で分けられてたので、下のクラスに落ちたくない気持ちはありました。成績も同級生に負けたくなかったのかも知れないですね。

負けず嫌いがゆえの真面目さなのか、やよさんの負けず嫌いエピソードはこれだけに留まらない。


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高校卒業が近づいても、当時のやよさんには大学へ進学する気持ちは無く、それよりも、芸能活動を続けていきたいという思いが強かったという。

しかし、結果的にチアダンスと出会うことになった玉川大学への進学を決めたのはなぜだろう。

演劇の世界は不安定な世界というのも知っていましたし、「将来の選択肢を広げるためにも大学へ行ってみたらいいのでは?」という学校の先生の話もあり、「進学してみようかな」という気になったのだと思います。

最初は、憧れの演劇の先生がいる大学の芸術学部を狙っていました。でも、体験入学に行ってみたら、なんか想像していたのと違って…。そこで、演劇だけではなくもう少し広く色んなことが学べそうな、玉川大学のリベラルアーツ学科に一般入試で入学しました。

これに加え、好きなダンスや演劇“だけ”の道を選ばなかったのは、「ひとつの道に絞るのが怖かった」と、やよさんは話していたが、同時に、「何をやってもある程度までできてしまう反面、突出して何かできるという訳でもない」と、自身の特性を客観視する冷静さも持ち合わせていたからだろう。


そして、やはり大学進学を決める時にも、やよさんの負けず嫌いな一面が顔を覗かせていた。

そういえば昔、「塾に行かないで進学なんてできないよ」と友達に言われたことがあって…。「塾に行かないで大学まで行ってやる」と思ったことも、大学進学に至ったひとつの要因かもしれません(笑)。


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大学に入り、チアダンス部への入部を決めたやよさん。

入部理由には、もちろん好きなダンスを続けるという目的もあっただろうが、どうやら、チアダンス部の先輩の言葉にも惹かれる部分があったみたいだ。

部の先輩が「チアリーダーとは、ダンスの技術だけでなく、生活面や学業面でも努力をし続けられる人」という話をしていて。その話を聞いていて「チアリーダーのこういう姿って、生き方としていいな」と思いました。

玉川大学のチアダンス部は、ダンスが上手いだけでは大会に出場させてもらえません。出場条件にGPA(大学の成績評価)の数値も関係する大会もあったので、バイトよりも大学での勉強を優先していました。

その結果、学科での成績は、4年間トップを維持したそう。

やよさんが話していた通り、彼女が本当に“真面目なのに面倒くさがり”だとすれば、なかなかこういった結果にはならないだろう。


おそらく本当は、“負けず嫌いを燃料に、真面目に努力ができる人”なのだと思う。


加えて本人は、「単位の取りやすい授業ばかり取っていたから」、「先生に媚びを売るのだけはうまかった」と謙遜していたけれど、これは言い変えれば“正しく努力できる”ということだ。

そういう意味でも、やよさんにはどこか“戦略家”な一面もありそうな気がした。


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もしかしたら、この戦略家気質を持ち併せているのは、やよさんのこんな別の一面も影響しているのかもしれない。

意外と心配性で、割と考え込んでしまうタイプです。

それに、週に一度はひとりの時間がないとダメですね。ずっと人といると疲れてしまって。大学時代も、わざと深夜の時間帯にバイトを入れたりしてましたし、飲み会みたいな席にもあまり出ませんでした(笑)。

ひとりっ子というのも関係あるかもしれませんが、母からは、「小さい頃から大人の顔色を気にしていたような子どもだった」と言われます。

大学進学を決めたのは、自身の特性を客観視する冷静さがあったから、と書いたが、それも裏返せば彼女のこういう繊細な部分の現れなのかもしれない。


そして、大学卒業後のやよさんについて知ると、彼女のこの繊細な部分がより際立つような気がした。




(Vol.03へつづきます)


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#Gravis #チアダンス #Gravisの素直なところ