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往復note (13): 老いないこと、死なないこと

Tさん、あけましておめでとうございます。

往復note、今年も続けていきたいと思いますが、お話したようにもう少しゆったりしたペースにしましょう。こんな感じのルールでどうでしょうか。

  1. noteを受け取ってから、2週間を目途に返信する。それぞれ月1ペース、但し、2週間絶対ではない。

  2. 文字数の制限はなし(これは変わらず)

  3. 相手への質問は、特にあればあげるし、なければ近況報告か読んだ本、観た映画など何でもその時に書きたいものを書く。

では、前回頂いた下記の質問に答えますね。図らずも新ルールに近いですが(笑)。

質問ですが、最近読んだ本について教えてください。

取り上げるのは、吉森保著『ライフサイエンス』です。これは生命科学のわかりやすい教科書のような本で、細胞の仕組みの基礎から、オートファジーまでが学べるようになっています。

死なない生き物・老化しない生き物

本の中で印象的だったのが次の言葉です。

「生命は、エントロピーの増大を相殺することで定常状態を保持している」。つまり生き物は、存在としてエントロピー増大に逆らうシステムなのだということです。

吉森保『ライフサイエンス』p.204

その後で筆者は疑問を提示します。恒常性が維持されるのになぜ生き物は老化したり、死んだりするのかということです。

その後に生き物はすべて必ずしも死んだり、老化したりするわけではないとして例をあげます。まず死なない生き物としてベニクラゲ(但し、老化はするらしいです、若返るらしいですが)、もう一つ、老化しない生き物としてアホウドリやハダカデバネズミをあげられます。

では、なぜ人間は老化したり、死んだりするのかというと、その方が進化の過程で生き残るのに有利だったからではないかと筆者は述べます。

オートファジーとそれを阻むもの

人間が健康なのは恒常性を維持しているからですが、細胞の新陳代謝を維持しているのがオートファジーです。細胞はどんどん入れ替わるのですが、神経細胞と心筋細胞だけは入れ替わらずに同じ細胞が使われるため、オートファジーが特に重要になるそうです。

しかしオートファジーは歳を取るとともに働きが悪くなり、それがアルツハイマーやパーキンソン病が生まれる要因でもあるようです。なぜオートファジーが働かなくなるかというとルビコンというタンパクが増えるかららしいです。今のところこのルビコンの増加を抑える特効薬はないらしいので、オートファジーを活性化するのは、以下につきるそうです。

腹八分で、運動する。脂っこい食事を避ける。

吉森保『ライフサイエンス』p.332

何だい、それかよ!という声が聞こえてきそうです(笑)。

老いないことが実現した未来

ここからは、思考実験です。未来において人が老いない社会が実現したとします。例えば、皆25歳の姿形のまま歳を取り、ある時死ぬという社会です。ちょっと想像しただけでも以下のようなことが起こるでしょう。

  • ライフプランが好きに立てられる。特に女性にとって出産時期に制限がほとんどなくなるので、より女性にとって良さそうです

  • いくつになっても新しい事にチャレンジしやすくなる、例えば50歳過ぎてからプロ野球とかプロサッカー選手になるとか

  • 恋愛が年齢差関係なく発生する

これまでは老いとの戦いみたいなものがあったので何歳までに何をしておかねばということに追われていたようなものから解放され、またチャレンジも何回もできるような気がします。それに若いままなので病気もとても減り社会保障費のようなものも大きく減少すると思います。

逆にネガティブな面を考えると、最後のポイントを逆の面から見ると、老いることが特権のようなものになるかもしれません。老いていいのは病気の治療費(その時にはとてつもなく高いものになるかもしれません、ごく少数の人にしか提供されないため)を支払える大金持ちだけになるかもしれません。老いる自由を得るためにはお金が必要というわけです。アンチエイジングがこんなに求められている今、想像し難いですが。

死なないことが実現した未来

では、死なないことが実現した未来はどうでしょう。これについては、老いないことが実現したか、しないかによっても変わってきますが、ここでは老いないかつ、死なないと言うことで考えてみます。(実際、神経細胞、つまり脳の寿命が120年位なので、老いないで120年生きられるようになったとして、死なないというのは難しそうですが。)

國分功一郎の『暇と退屈の倫理学』で語られているように、人は刺激がないと退屈してしまいますが、刺激がありすぎると耐えられないのでそれを習慣化しようとします。そしてその習慣化の過程で、心にいろんな傷を負います。その傷が暇になった時に疼き出して、また刺激を求めてしまうということになります。このことから死なないということは、心に負った傷が途方もなく多くなってしまうことになるでしょう。そうなった時に人は耐えられるのだろうかということを考えてしまいます。ベニクラゲが生き続けることに耐えられるのは記憶を持たないからだと言えるかもしれません。

そこで求められるのは、記憶の消去サービスのようなものかもしれません。ある年齢に達したら、一旦記憶をクリアして、新しい人格としてやり直すみないな感じです。その時、若いままならやりやすいかもしれません。記憶を消してまた新しい人生を始める、生きながら輪廻転生しているようにも思えますね。その時は親子関係とかどうなるのかと思ってしまいます。

そもそも皆死なないのだから、人口は増え続けてしまいます。そこでは、食料やエネルギーの問題も大きな課題になりそうです。そう思うと全ての人が死なないということは、あまり良い未来ではないのかもしれません。

Tさんは、人が老いない社会や死なない社会について、どんな想像をしますか?少し想像してみてください。

それでは、質問です。Tさんは、最近読んだ本で印象に残ったものはありますか?あればそれについて、なければ近況報告みたいな感じでお願いします。


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