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4/20 Eclipse

前日の夕方は雲が多く、若干の心配もあったが、当日の朝は雲一つない快晴!まさにイクリプス日和である。
主に撮影隊は太一君とモモちゃんと自分の3人。それ以外の面々は岩山の上で観ると言い、歩いて行った。晴天ではあるが風が強く、望遠動画撮影にはなかなか厳しい状況である。
日食には部分日食や金環日食、皆既日食など種類があるが、今回は我々のいるオーストラリアの一部やインドネシア、東ティモールなどでは太陽と月がほぼ同じ大きさに重なる皆既日食が見られ、月からの距離が離れるインド洋や太平洋の一部では少しだけ月の大きさが太陽より小さく金環日食となり、それら周辺の地域では部分日食となる。
今回のように皆既日食と金環日食が同時に発生する日食は「金環皆既日食(ハイブリッド日食)」と言い、17年に1回程度しか起こらないかなりレアな現象らしい。
10:30頃、日食眼鏡で太陽を見るとほぼ真上の辺りが欠け始めている。単に太陽が欠けるというよりも、太陽と地球の間に月が割り込んできた感じがする。これからゆっくりと1時間ほどの時間をかけて完全に重なっていく。
太一君は計6台?のカメラ、モモちゃん2台、自分はlumixのフルサイズ2台とInsta360の3台、3人で11台くらいのカメラで動画とスチルの撮影。
前回の2017年オレゴンではOregin Eclipseという砂漠地帯の巨大なパーティーで体験したので4万人くらいの人たちと同時に体感したが、今回は360度広がる荒野で我々8人。遠くで観ている5人は岩山の上で豆粒のような大きさで手を振っているのが見える。
11:20を過ぎていよいよ太陽の光は細くなってきた。最初の欠け始めが第一接触、完全に重なる瞬間が第二接触。赤道儀がない自分は三脚上で手動でカメラを動かし連写する。横の太一君のPCからは「Still nice Still nice」という機械的な音声が「So nice So nice」という声に変わり、シャッターの自動連写音が聞こえ始める。太陽の5時半くらいの位置に一点の強烈な光が輝きダイヤモンドリングが現れた。同時に世界が薄暗くなり、すーっと涼しくなる。地平線360度が夕焼けの色に染まり、私も共演します…と言わんばかりに(おそらく)金星が見え始めた。太陽と月と自分と地球が直線に並び、それを金星と夕焼けが盛り立ててるような…。なんたる演出!気付けば涙が頬を伝っていたのは2017の時も同じだった。
重なった瞬間、太陽の輪郭が一瞬ぐわっと赤くなり、太陽から噴き出る火の柱プロミネンスが肉眼でも見えた。(これ一つで地球数個分の高さというから驚き)通常肉眼では絶対に見られない姿が、陰と陽が重なり見えるのだ。太陽のドヤ顔を見た気がした。
日食の時、海では大潮になる。これは月の引力と太陽の引力が同時に地球に影響を与え、水が引っ張り上げられるから起こる。太陽と地球の綱引きに月も加勢して2馬力で引っ張られてるような感じか、有機的な水が上昇するのも頷ける。もしかしたら日食の瞬間に体重測ったら軽くなってたりするのでは?とか思ってしまう。地球の表面の水の割合と人の水分比率が近いと言うから、体内の水分も吸い上げられ、勝手に涙が溢れるのかも知れない。そんな事はさておき、ここまで辿り着けて無事にこうして皆で見れたことに感動していた。
太一君のPCは冷静に「Too nice Too nice」と連呼し、モモちゃんが雄叫びを上げ、それに呼応するように岩山の上からも雄叫びが返って来た。
感動しながらもシャッターを連射した。
58秒という3天体と私の直列の儀は終わり、第三接触に。左上11時くらいの位置から太陽の光が戻って来た。一点の光ではなく二点から光が放たれ、ダブルダイヤモンドリングが現れた!
ショーのフィナーレで涙流しながら雄叫びを上げ、シャッターを連射する。
昼間の夕焼けと金星はフェードアウトし、再び焼けつくような太陽の光が戻って来た。
太一君とモモちゃんとハグをして喜びを分かち合った。程なくして岩山で体感した5人も満面の笑みで戻って来た。
天体現象はもちろん天候によって左右する。雲に覆われれば見ることはできない。時間とお金と手配と、まあいろいろなことを費やし、辿り着いても見れないこともあるわけで。その見れなかった時の無念さたるはどんな感情なんだろうか。前回今回と一緒に行ったモモちゃんは既に今回で8回目のイクリプスチェイサーで、その全て天候に恵まれ見てると言うから驚きだ。
こうして今回の旅の目的は達成し、多幸感と高揚感と脱力感の中、蟻塚ゲートの観測基地の撤収を開始した。

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