音楽制作用・DTM用のパソコンについて

 音楽制作用パソコンについてです。正直、今の時代はどのメーカーも色々とコストカットで「地雷」が多く、制作用のパソコン選びは非常に難しいですが、皆様の参考になればと思います。

※2020年7月5日版。内容に間違いがあればご指摘いただけたらと思います。

【デスクトップorノート】:ノートパソコン

 業務用スタジオ据置機でもなければ、ノートが良いと思います。デスクトップの方が多少スペックに優れる面はありますが、いつでもどこでも作曲・録音・ミックスできる機動性がある方が遥かにメリットがあります。

【OS】:基本的にはどちらでも問題ないと思います。

 「どうしても使いたいMac専用ソフトがある」もしくは「多少お金は割高でも、とにかく何も考えずに付属ソフトで手軽に始めたい」という人ならばMacの方が良いでしょう。(最近のMacはOSアップデートや仕様変更による過去ソフトの切り捨て等の話題もあるので、その辺は要注意。)

 ちなみに私はコストパフォーマンスや音楽用途以外での汎用性も考慮してWindows派です。以下、Windows前提でのパソコンの選び方です。

≪買う上で注意したい点≫※2020年7月版

 音楽制作用・DTM用ならメーカーものを買うよりBTOで仕様をカスタマイズして購入するのが良いと思います。最低でも下記の点に注意しましょう。

【CPU】Intel Core i7 第8世代以降 ※末尾「U」は×

 「DTMではそこまでCPUは使わないからi5でもOK」というような事を言う人もいますが、パソコンは毎年買い替える物ではないので、何年も使うことを考えたらi5ではなくi7を選んだ方が結果的にコストパフォーマンスが良いです。なお、「Core i7」とだけ書いてあるPCは要注意です。必ず世代を確認しましょう。例えば第8世代ならば8000番台、第9世代なら9000番台です。なお、末尾にUが付くモデルは省電力版で性能が抑えられているので要注意です。

【メモリ】16GB以上

 一般的なバンド編成やJ-POP等ならば16GBで問題無いと思います。フルオーケストラ等で超大容量音源を使う場合は32GBあった方が良いでしょう。ただし、現時点でノートパソコンでメモリ32GBはかなり選択肢が少ない&高額です。メモリを32GBにできる機種は無駄にグラフィックボードのランクが高かったりして値段が高価になります。

【SSD】M.2 SSDで1TB以上

 SSDは一番難しいです。「SSD」と言っても色々な規格があり、メーカーによる品質もピンからキリまでなので、パソコンの不具合や故障、相性問題が出るとしたら間違いなくここでしょう。音源の読み込みや書き出しのトラブル、プチノイズやプチフリーズを避けるためにも特にこだわりましょう。

 まず容量ですが、絶対に1TB以上が良いです。SSDを本来の性能を維持しながら使うためには半分以上容量を空けておく必要があります。512GBでは半分の256GBしか使えないので大容量音源は使えなくなってしまいます。

 次に規格関係です。SATAとNVMeがありますが、新しいのはNVMeです。ただ、SATAでもHDDとは速度が雲泥の差ですし、NVMeにも熱問題や性能を使いきれない問題等色々ありますので、絶対に最新のNVMeでなければいけないということはないと思います。基本的にはM.2 SSDであれば、SATAでもNVMeでもどちらでも実用上はOKだと思います。

 しかし、SSDでさらに難しいのが「TLC」と「QLC」の問題です。簡略化して説明すれば「QLC」は安価だが寿命が短い(書き込み耐性が低くデータの長期保存における信頼性が低い)という問題があり、可能であれば「TLC」のSSDが良いです。しかし、現在はQLCが主流で、QLCのPCしか買えない可能性も高いです。その場合はバックアップやデータ保存には気を付けた方が良いと思われます。(QLCでも実用上問題ないとの意見もありますが、このあたりは見解が分かれているところです。)

 最後にメーカーです。SSDのメーカー名が書いてあるPCが良いです。Intel、WD、SanDisk、Crucial、Samsungあたりが品質に実績があり、これらのメーカー品が搭載されている場合はほぼ間違いなく記載があります。記載がない場合は無名メーカーや三流メーカーのSSDの可能性が高いです。

【グラフィクボード】NVIDIA GeForce GTX1650以上

 音楽制作やDTM自体でグラフィックボードで高度な処理をすることはありませんが、CPUの負荷を下げてPC全体のパフォーマンスを向上させるためにグラフィックボードは付いていた方がいいです。

【USBポートの数】※超重要です。

 地味に重要なのがUSBポートです。基本的にノートパソコンはUSBポートが少ないです。音楽制作をする上では、マウス等の基本周辺機器に加え、オーディオインターフェース、各種ドングル等、外付けHDD等、色々と接続するものも多いと思われますので、最低でも3つは必須だと思います。

 なお、規格関係ですが、基本的にはUSB3.0や3.1や3.2でTYPE-Aのものが汎用性が高く良いです。今となってはUSB2.0は速度が遅く、古い機材との互換性を気にする場合以外では不要と思われます。(なお、USB2.0用の製品でもUSB3.0や3.1や3.2でほとんどの場合問題なく動きます。)

 最近は本体小型化軽量化の為にTYPE-C搭載機種も多くなってきましたが、ケーブル端子の形状からして違うので要注意です。

【Display】FHD 1920×1080 ※色域や視野角に注意

 意外とコストカットされているのはここです。表面上スペックが高いのに値段が安い製品は大抵ディスプレイでコストカットしていることが多い気がします。流石にFHD以下のディスプレイは大分減ってきてはおりますが、色域(sRGBカバー率等)や視野角が悪いものがまだまだ多いので現物を見れないBTOでは意外と気を付けなければならないポイントです。

 この辺りの評判は比較サイトや個人ブログ等で確認するしかないのですが、最近流行のゲーミングノートで「144Hz駆動」等を謳っている物は、基本的にしっかりしたものが多く、一つの目安材料になると思います。

 また、高級ラインでは4K OLEDの有機ELディスプレイもありますが、個人的には制作用のPCは長時間同じDAW画面を開いたりして、焼き付きが怖いのでオススメしません。寿命の面からの有機ELは避けた方が良いでしょう。

【表面温度・静音性・バッテリー等】※膨張に要注意

 正直、温度や静音性(騒音)やバッテリー持ちはよく分かりません。メーカーにより傾向はありますが、同じメーカーでも機種によって違ったりしますので何とも言えないというのが現状です。ただ、絶対に気を付けた方がいいのはバッテリー膨張です。バッテリー膨張は物理的に基盤が破壊されたりするので、比較サイトや個人ブログでの情報を要チェックです。

 リチウムイオンバッテリーは性質上どのバッテリーでも膨張する可能性がありますが、実際には特定のメーカーや特定の機種で発生することが多いです。これは構造上の問題や熱処理、バッテリー管理ソフト等の問題だと思われますが有名メーカーでもリコールレベルでバッテリー膨張報告がある機種があるので、バッテリー膨張の情報については特に要注意です。

【結局どのメーカーが良いの?】

 ここはアフィリエイトブログではないので、特定メーカーを推すことはしません。また、企業は経営者や経営方針の変更により、製品の品質が大きく変わることがありますのでよく情報収集する必要があります。

 ただ、共通で言えることは、過去に部品偽装やスペック偽装をしたBTOショップは使わないということです。既に有名ショップでも実例がたくさんありますが、こういうショップは何度も同じことをやりますので絶対にやめましょう。また、スペックやパーツの情報開示が少ない会社も避けるべきです。上で色々と書きましたが、安いパソコンには色々な「落とし穴」があるので情報開示が適切にされている企業のものが安心して買える製品です。

 長文となりましたが、最後に伝えたいメッセージがあります。ユーザー側の目線が厳しくなれば、企業も情報を適切に開示しなければならなくなり、手抜きができなくなります。安易に値段や宣伝文句に釣られることなく、きちんと情報を調べて購入し、適切なメッセージを発していくことで市場は発展し、健全化するものだと思っております。

本記事は以上です。


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