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『The Queen Is Dead』ザ・スミス 徹底解説

アルバムの制作背景
『The Queen Is Dead』の制作は、1985年の中頃から1986年の初頭にかけて行われました。この時期、バンドはすでに二枚のアルバム『The Smiths』と『Meat Is Murder』をリリースしており、イギリスの音楽シーンで確固たる地位を築いていました。

アルバム『The Queen Is Dead』のレコーディングは、ロンドンのジャム・スタジオとマンチェスターのスタジオで行われました。プロデューサーにはジョニー・マーとスティーヴン・ストリートが参加しています。ジョニー・マーは、バンドのサウンドを進化させるために多くの時間と努力を費やしました。一方で、スティーヴン・ストリートは技術的なサポートを提供し、アルバム制作を支えました。この二人のコラボレーションにより、バンドの音楽はさらに深みと洗練を増し、独自のスタイルが確立されました。

サウンド
『The Queen Is Dead』のサウンドは、ザ・スミスの他のアルバムと比べても特に多様で革新的です。ジョニー・マーのギターは曲ごとに異なるスタイルと技法を駆使しており、アルバム全体にわたって一貫した独自の音色を提供しています。ジョニー・マーはリバーブやディレイを効果的に使用し、楽曲に広がりと深みを加えています。

アンディ・ルークのベースラインは、曲のリズムと構造を支え、力強くかつメロディアスな演奏を展開しています。アンディ・ルークのベースはジョニー・マーのギターと巧みに絡み合い、バンド全体のサウンドに一体感を与えています。

それとモリッシーのボーカルはこのアルバムの最大の特徴の一つです。モリッシーの独特の歌唱スタイルは、曲ごとに異なる感情とニュアンスを表現しています。彼の声は時には激しく、時には静かに囁くように、心を揺さぶってきます。また、モリッシーの歌詞は詩的で鋭く、社会批判や個人的な感情を巧みに織り交ぜています。『The Queen Is Dead』はそのリリース以来、多くの批評家やファンから絶賛され、カルト的な名盤としての地位を確立しています。


1980年代のイギリス社会とパンクロック
1980年代のイギリスは、サッチャー政権下で大きな変革期を迎えていました。マーガレット・サッチャー首相が1979年に就任し、新自由主義的な政策は国内の経済や社会に深い影響を与えました。サッチャーの改革は労働組合の弱体化、国営企業の民営化、社会保障の削減などを含み、多くの労働者階級や中産階級に困難をもたらしました。それに伴い失業率は急増し、特に工業地帯では社会的不安が広がりました。これはハードコアの怒りの原動力になったことでも知られています。

イギリスの文化的な側面ではパンクロックが1970年代後半から1980年代初頭にかけて一世を風靡し、その反骨精神は新たな音楽ムーブメントを生み出しました。この時代の音楽シーンは、政治的メッセージを含むものが多いのが特徴です。スミスのパンク的な要素はこれらの影響をもろに受けていると思います。

収録曲

「The Queen Is Dead」
アルバムの表題曲「The Queen Is Dead」は、壮大なイントロダクションから始まり、ジョニー・マーの力強いギターリフとモリッシーの鋭い歌詞が融合した名曲です。

王室に対する皮肉たっぷりのフレーズ「Her very Lowness with a head in a sling(彼女のとても低い地位と吊り下げられた頭)」では王室も昔のように尊敬おらず、伝統的な権力が崩壊しつつある現実を描写しています。

他にもモリッシーは「So, I broke into the palace with a sponge and a rusty spanner」と歌います。スポンジと錆びたスパナを持って宮殿に侵入するという行為は、権威に対する無意味でな挑戦を表現しています。「王室に対する挑戦なんて、実際やってみたらこんなにバカバカしいことだ」と言っているみたいです。

モリッシーは、この曲で王室や伝統的な権威を批判しつつも、それに抵抗すること自体の無意味さも同時に批判しています。つまり、この曲のユーモアと皮肉はただの批判ではなく、もっと深い層での社会批評を行っているのです。

[Intro]
"Oh, take me back to dear old Blighty
「ああ、懐かしのブライティへ連れて行って
Put me on the train for London Town
ロンドン行きの列車に乗せてくれ
Take me anywhere, drop me anywhere
どこへでも連れて行って、どこで降ろされても構わない
In Liverpool, Leeds or Birmingham, but I don't care
リヴァプールでも、リーズでも、バーミンガムでも、どこでもいいんだ
I should like to see—"
見てみたいんだ—」

[Verse 1]
(I don't bless them)
(彼らを祝福する気はない)
Farewell to this land's cheerless marshes
この国の陰鬱な湿地帯よ、さようなら
Hemmed in like a boar between archers
弓兵に囲まれた猪のように追い詰められて
Her very lowness with her head in a sling
頭を吊るされた彼女の卑しさ
I'm truly sorry, but it sounds like a wonderful thing
本当にすまないが、素晴らしいことのように聞こえる
I say, Charles, don't you ever crave
チャールズ、君も時々は願わないか
To appear on the front of the Daily Mail
デイリーメールの一面に出たいとは
Dressed in your mother's bridal veil?
母親のウェディングベールをまとって
(Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh)

[Verse 2]
And so I checked all the registered historical facts
そして歴史的事実をすべて調べてみた
And I was shocked into shame to discover
すると恥ずかしさに打ちひしがれた
How I'm the eighteenth pale descendant
自分が18代目の青白い子孫だということを知って
Of some old queen or other
ある古い女王の
Oh, has the world changed or have I changed?
世界が変わったのか、それとも私が変わったのか?
Oh, has the world changed or have I changed?
世界が変わったのか、それとも私が変わったのか?
Some nine year old tough who peddles drugs
9歳のガキがドラッグを売りさばいている
I swear to God, I swear I never even knew what drugs were
誓って、ドラッグが何かさえ知らなかった
(Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh)

[Verse 3]
So I broke into the Palace
だから宮殿に侵入した
With a sponge and a rusty spanner
スポンジと錆びたスパナを持って
She said, "'Ey, I know you, and you cannot sing"
彼女は言った、「あんたのこと知ってる、歌なんて歌えないでしょ」
I said, "That's nothing, you should hear me play piano"
僕は言った、「そんなの問題じゃない、僕のピアノを聴いてみろよ」
We can go for a walk where it's quiet and dry
静かで乾いた場所へ散歩に行こう
And talk about precious things
大切なことについて話そう
But when you are tied to your mother's apron
でも母親のエプロンに縛られていると
No one talks about castration
誰も去勢については話さない
(Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh)


「Frankly, Mr. Shankly」
この曲はレコード会社の幹部や音楽業界全体に対するモリッシーの不満を表現したもので、軽快なメロディに乗せて、辛辣な批判を繰り広げています。

[Verse 3]
Frankly, Mr. Shankly, this position I've held
正直に言うと、シャンクリーさん、この仕事は
It pays my way, and it corrodes my soul
給料はいいけれど、魂を蝕んでいる
Oh, I didn't realise that you wrote poetry
ああ、君が詩を書いているなんて知らなかったよ
I didn't realise you wrote such bloody awful poetry, Mr. Shankly
そんな酷い詩を書いているとは思わなかった、シャンクリーさん
Frankly, Mr. Shankly, since you ask
正直に言うと、シャンクリーさん、君が聞くからには
You are a flatulent pain in the arse
君は屁のように煩わしい存在だ
I do not mean to be so rude
失礼するつもりはないんだけど
Still, I must speak frankly, Mr. Shankly
それでも正直に言わなければならないんだ、シャンクリーさん
Oh, give us your money!
おい、金を出してくれよ!


「I Know It's Over」
アルバムの中でもかなり暗い曲であり、失恋や孤独、絶望について歌っています。モリッシーの歌声とジョニー・マーのメランコリックなギターが美しく調和しています。この曲はスミスの楽曲の中でも特に心に残る一曲です。

[Verse 2]
Oh, Mother, I can feel
ああ、お母さん、感じるんだ
The soil falling over my head
土が僕の頭に降り積もるのを
See, the sea wants to take me, the knife wants to slit me
海が僕をさらおうとし、ナイフが僕を裂こうとする
Do you think you can help me?
助けてくれると思うかい?
Sad veiled bride, please be happy
悲しみに覆われた花嫁よ、どうか幸せになって
Handsome groom, give her room
美しい花婿よ、彼女に自由を与えて
Loud, loutish lover, treat her kindly
騒がしく乱暴な恋人よ、彼女に優しくして
Though she needs you more than she loves you
彼女は君を愛しているよりも必要としている

[Chorus]
And I know it's over, still I cling
終わったことは分かっているけど、それでもすがりつく
I don't know where else I can go
他に行く場所が分からない
Over and over and over and over, over and over
何度も何度も繰り返して
I know it's over, and it never really began
終わったことは分かっているけど、実際には始まってもいなかった
But in my heart it was so real
でも僕の心の中では本当にリアルだった
And you even spoke to me, and said
君も僕に話しかけて、こう言った


「Never Had No One Ever」
この曲はモリッシーの孤独感を表したもので、孤独に悩んでいる人におすすめの曲です。重厚なベースラインとドラムがリズムを支え、モリッシーの独特な歌声が前面に出ています。

[Verse 1]
When you walk without ease
気楽に歩けないとき
On these streets where you were raised
育ったこの通りで
I had a really bad dream
本当に悪い夢を見たんだ
It lasted twenty years, seven months
それは20年と7か月続いた
And twenty-seven days, and I know
そして27日間、そして分かるんだ

[Chorus]
I know that I never, ever, oh, weh, woah
分かってる、僕は一度も、ああ
Had no one ever
誰もいなかった

[Verse 2]
Now I'm outside your house, I'm alone
今、君の家の外にいるんだ、一人で
And I'm outside your house
君の家の外に立って
I hate to intrude, oh, alone, I'm alone
邪魔はしたくないんだ、ああ、一人で
I'm alone, I'm alone, I'm alone, I'm alone
一人なんだ、一人ぼっちなんだ、一人きりなんだ、一人なんだ

[Chorus]
And I never, never, oh, woah, woah
僕は一度も、ああ
Had no one ever
誰もいなかった
I never had no one ever
一度も誰もいなかった
I never had no, no one ever
誰もいなかった、一度も
Had no one ever, never
誰もいなかった、一度も
No
いなかった


「Cemetry Gates」
この曲は軽快なテンポの中に、死や詩に対するモリッシーの関心が反映されています。歌詞の最後の部分では、友人が引用する伝統的で高尚な詩人キーツとイェイツに対し、モリッシーはユーモアに富んだ詩を書くオスカー・ワイルドを引用します。ここでオスカー・ワイルドを出すことでモリッシーのひととなりが見えてくる気がします。

[Chorus]
A dreaded sunny day, so let's go where we're happy
うんざりするような晴れの日、だから幸せな場所へ行こう
And I meet you at the cemetery gates
そして墓地の門で君に会う
Oh, Keats and Yeats are on your side
ああ、キーツとイェイツが君の味方だ
A dreaded sunny day, so let's go where we're wanted
うんざりするような晴れの日、だから求められる場所へ行こう
And I meet you at the cemetery gates
そして墓地の門で君に会う
Keats and Yeats are on your side, but you lose
キーツとイェイツが君の味方だけど、君は負ける
'Cause whale blubber Wilde is on m-mine (Sugar)
だって、ウィットに富んだワイルドが僕の味方だから


「Bigmouth Strikes Again」
モリッシーが思わず言ってしまう過激な発言を皮肉ったエネルギッシュな曲です。ジョニー・マーのギターリフがかっこよく、ライブでも非常に人気の高い楽曲です。ジャンヌ・ダルクがウォークマンを溶かしながら処刑されるシーンは、モリッシーのなユーモアが炸裂しています。

[Verse]
Sweetness, sweetness
甘い君、甘い君
I was only joking when I said
冗談で言っただけだよ
I'd like to smash every tooth in your head
君の歯を全部叩き割りたいなんて
Oh-oh, sweetness, sweetness
ああ、甘い君、甘い君
I was only joking when I said
冗談で言っただけだよ
By rights you should be bludgeoned in your bed
君は寝床で撲殺されるべきだなんて

[Pre-Chorus]
And now I know how Joan of Arc felt
今、ジャンヌ・ダルクがどんな気持ちだったか分かるよ
Now I know how Joan of Arc felt
今、ジャンヌ・ダルクがどんな気持ちだったか分かる
As the flames rose to her Roman nose
炎が彼女の高い鼻に迫り
And her Walkman started to melt (Ah)
ウォークマンが溶け出すように

[Chorus]
Bigmouth, la-da-da-da-da
ビッグマウス
Bigmouth la-da-da-da
ビッグマウス
Bigmouth strikes again
ビッグマウスがまたやらかした
And I've got no right to take my place
僕はこの場所に立つ資格がない
With the human race, oh, oh, oh-oh
人類と共に


「The Boy with the Thorn in His Side」
ザ・スミスのシングルとしてもリリースされ、バンドの代表曲の一つとなっています。ジョニー・マーはこの曲で初めてフェンダー・ストラトキャスターを使用した曲としても知られています。プレイスタイルは西アフリカのハイライフ音楽にも影響を受けています​ 。

[Verse 2]
How can they see the love in our eyes
どうして彼らは僕たちの目の中の愛を見て
And still they don't believe us?
それでも信じてくれないのか?
And after all this time
これだけの時間が経っても
They don't want to believe us
信じたくないのか?
And if they don't believe us now
今信じてくれないなら
Will they ever believe us?
一体いつ信じてくれるんだ?
And when you want to live, how do you start?
生きたいと思ったら、どう始めるんだ?
Where do you go? Who do you need to know?
どこへ行けばいい?誰を知ればいいんだ?
Oh, ohh
ああ


「Vicar in a Tutu」
この曲はかなり変わった歌詞が特徴で、モリッシーのユーモアセンスが存分に発揮されています。チュチュはバレエで使われるひらひらとしたスカートのことです。

[Chorus]
A vicar in a tutu
チュチュを着た牧師が
He's not strange
彼は変じゃない
He just wants to live his life this way
ただこうやって生きたいだけ


「There Is a Light That Never Goes Out」
スミスの楽曲の中でも特に人気が高い曲です。この曲には映画『天井桟敷の人々』からの影響も見られます。モリッシーは、この映画での恋人たちの劇的な愛の表現にインスピレーションを受けたと言われています。この映画では、二人の恋人が一緒に自殺を図るシーンがありますが、それがこの曲のロマンティックな死の描写に影響を与えたのでしょう。

[Chorus]
And if a double-decker bus crashes into us
もし二階建てバスが僕たちに突っ込んできたら
To die by your side is such a heavenly way to die
君のそばで死ぬのは、なんて素晴らしい死に方だろう
And if a ten tonne truck kills the both of us
もし十トンのトラックが僕たち二人を殺したら
To die by your side, well, the pleasure, the privilege is mine
君のそばで死ぬのは、僕にとっての喜びであり、名誉だ


「Some Girls Are Bigger Than Others」
アルバムの締めくくりとなるこの曲は、軽妙なリズムが特徴的です。モリッシーの独特な視点が光る一曲であり、アルバムの最後を飾るのにふさわしい楽曲です。「女の子の中には大きな子もいるし、母親も他の母親より大きいことがある」というフレーズはかなりモリッシーらしいと思います。

[Verse 1]
From the ice age to the dole age
氷河期から失業時代まで
There is but one concern
一つだけ気になることがある
I have just discovered
今、発見したんだ

[Chorus]
Some girls are bigger than others
女の子には大きい子もいる
Some girls are bigger than others
女の子には大きい子もいる
Some girls' mothers are bigger than other girls' mothers
ある女の子の母親は、他の女の子の母親よりも大きい
Some girls are bigger than others
女の子には大きい子もいる
Some girls are bigger than others
女の子には大きい子もいる
Some girls' mothers are bigger than other girls' mothers
ある女の子の母親は、他の女の子の母親よりも大きい


各曲の詳しい和訳はこちらでご確認ください。


「The Boy with the Thorn in His Side」モリッシーのインタビュー

“The thorn is the music industry and all these people who never believe anything that I said, tried to get rid of me and wouldn’t play the records,” he told Clarke. “So I think we’ve reached a stage where we feel… if they don’t believe me now, will they ever believe me? You know, what more can a poor boy do?

“I wanted [fame] for so long and now I’ve got it, isn’t that odd?” he added. “The strangest thing in the world is when you get what you really pray for.”


「その棘は音楽業界と、僕の言うことを信じず、僕を排除しようとしてレコードをかけてくれない人たちのことです」と彼はクラークに語った。「だから、もし今信じてもらえないなら、いつ信じてもらえるのかと思う段階に達したんです。貧しい少年に一体何ができるのでしょう?

「ずっと求めていた名声を手に入れたのに、こんなに奇妙な気持ちになるなんて不思議だ」と彼は続けた。「本当に祈り求めたものを手に入れると、それが一番奇妙なことなんです。」

https://www.thisisdig.com/feature/the-boy-with-the-thorn-in-his-side-the-smiths-song-story/

ここで曲紹介の時に紹介しきれなかった興味深いインタビューをのせておきます。




『The Queen Is Dead』はザ・スミスのファンコミュニティにとって特別な意味を持つアルバムです。このアルバムは、単なる音楽作品にとどまらず、ファンにとっては人生と深く結びついています。そのため『The Queen Is Dead』に寄せられたコメントを見ていきたいと思います。まずは日本のファンのコメント(Amazonのレビュー)から見ていきます

「ロック好き、音楽好きには聞き流せないこの空間。正直このバンドが英国で無名なバンドなら聞くことはまずなかったと思う。いろんな人が絶賛して、自分も聞いてみて、はじめはイマイチなのに自分も理解したいから聴き続けて、、、って人僕だけじゃないはずだ!でもスミスを聞いてはじめて一発ではまった曲がこのアルバムにはあった。10曲目だ!」

「80年代においては、U2、R.E.Mと並んで評価されるべきグループ。個人的には幕切が曖昧だったため、本作を持ってThe Smithsの最終章として考えている。且つ最高傑作であり、80年代を代表する1枚である。彼らが唱えた現実(問題)は今もって世界規模で解決できていない。先進国の混迷にまで発展してしまっている。今も、彼らの影響と魅力は衰える事はない」

「本作品はザ・スミスの4枚のオリジナル・アルバムの中でも、特Aの評価であり続けている。発売当初から、雑誌、評論家ウケが良く、同じく評価の高い2edアルバム『ミート・イズ・マーダー』の続編、もしくは進化形とも言えるだろう。個人的には2edアルバム、3edアルバムは甲乙が付けがたく、ザ・スミスの最高傑作は『ミート・イズ・マーダー』と言われても否定はしない。しかし、本作には"Bigmouth Strikes Again"という名曲があるし、より英国籍バンドとしてのアイデンティティーを感じる、アルバム・タイトルにジャケットが素敵だ。くわえて、ジョニー・マーのギター・プレイに神がかり的な広がりを感じる数曲が存在する。」


次により歌詞を深く味わえる英語圏のファンからのコメントもみていきます。RateYourMusicや他のレビューサイトからの引用です。

The Queen Is Dead is an album that changed my life. Morrissey's lyrics resonated with my teenage angst and loneliness, and Johnny Marr's guitar work was simply mesmerizing. 'There Is a Light That Never Goes Out' became my anthem during my darkest times. This album is a masterpiece that has stood the test of time.

『The Queen Is Dead』は私の人生を変えたアルバムです。モリッシーの歌詞は私の十代の不安や孤独に共鳴し、ジョニー・マーのギターワークはただただ魅了されました。「There Is a Light That Never Goes Out」は私の最も暗い時期のアンセムとなりました。このアルバムは時の試練に耐えた傑作です。

I first heard The Queen Is Dead in college, and it instantly became my favorite album. The wit and melancholy in Morrissey's lyrics, combined with Marr's brilliant guitar playing, created a sound that was unlike anything I had ever heard before. It felt like they were speaking directly to me.

大学で初めて『The Queen Is Dead』を聴いたとき、瞬く間に私のお気に入りのアルバムになりました。モリッシーの歌詞のウィットと憂鬱、そしてジョニー・マーの素晴らしいギタープレイが組み合わさって、今までに聞いたことのないサウンドになっています。まるで彼らが私に直接語りかけているように感じました。


ファンのコメントを通じて見えてくるのは『The Queen Is Dead』が単なる音楽アルバム以上のものであるということです。特にモリッシーに関する言及がアルバムのレビューを見ていると圧倒的に多いような気がします。それほどモリッシーの歌詞とボーカルは宗教的要素があるということでしょう。あとやっぱり英語圏のファンは、このアルバムを聴くことで孤独や不安に寄り添ってくれるところを高く評価しているように感じます。ファンにとって『The Queen Is Dead』は単なる過去の作品ではなく、現代にも通じる普遍的なメッセージを持つものとして受け入れられているようにも思いました。このアルバムはレビューを読むのも面白いので、ぜひ皆さんも見ることをオススメします。


同時期にリリースされたアルバム

『The Queen Is Dead』がリリースされた1986年は、音楽シーンにおいても非常に豊作な年でした。この年には多くの影響力のあるアルバムがリリースされ、音楽の多様性と革新が花開きました。最後に1986年にリリースされた注目すべきアルバムをいくつか挙げ、当時の音楽状況を説明します。アメリカとイギリスで音楽シーンが異なるため分けて説明します。

アメリカ

『Graceland』 - ポール・サイモン
ポール・サイモンの『Graceland』は、1986年の最も画期的なアルバムの一つです。このアルバムは、南アフリカの音楽とアメリカのフォークロックを融合させた作品であり、ワールドミュージックの可能性を広げました。

『Master of Puppets』 - メタリカ
メタリカの『Master of Puppets』は、1986年のメタルシーンにおいて重要な位置を占めるアルバムです。このアルバムはスラッシュメタルの金字塔とされ、複雑な楽曲構成と社会批判的なリリックが特徴です。メタリカは、このアルバムでメタル界における地位を確立し、その後のメタルバンドに多大な影響を与えました。

当時のアメリカの音楽状況

1986年のアメリカの音楽シーンは多様性と革新に満ちていました。新しい技術とプロデュース手法の進化により、アーティストたちはジャンルの枠を超えて実験的な音楽を創造することが可能となりました。またMTVの影響により、ミュージックビデオが音楽プロモーションの重要な手段となり、視覚と音楽の融合が進みました。そこで人気を博していったのがマドンナプリンスです。少し前にはマイケル・ジャクソンがこの流れを決定づけました。

イギリス

『So』 - ピーター・ガブリエル
このアルバムは、シンセポップとロックを融合させたものであり、「Sledgehammer」や「In Your Eyes」などのヒット曲を生み出しました。ガブリエルの音楽は、ビジュアルアートやミュージックビデオとの融合も特徴的であり、MTV世代に強い影響を与えました。

『Brotherhood』 - ニュー・オーダー
ニュー・オーダーのアルバム『Brotherhood』も1986年にリリースされました。このアルバムはバンドのエレクトロニックサウンドとポストパンクの要素を融合させた作品であり、「Bizarre Love Triangle」などのヒット曲を含んでいます。ニュー・オーダーの音楽はクラブシーンやダンスミュージックに大きな影響を与えました。

『Black Celebration』 - デペッシュ・モード
デペッシュ・モードの『Black Celebration』も1986年のリリースで、このアルバムはダークなシンセポップサウンドと深い歌詞で知られています。アルバム全体が統一されたテーマを持ち、バンドの成熟と音楽的進化を示しています。

当時のイギリスの音楽状況

ポストパンクとニューウェーブの台頭
1980年代中期、ポストパンクとニューウェーブの影響が強まりました。これらのジャンルはパンクロックの反抗的な精神を引き継ぎつつ、より洗練された音楽的要素を取り入れました。ザ・スミス、ニュー・オーダー、デペッシュ・モードなどのバンドがこのシーンをリードし、イギリス音楽に新たな潮流を生み出しました。

インディーロックとオルタナティブの発展
ザ・スミスの『The Queen Is Dead』は、インディーロックとオルタナティブロックの重要な位置を占めています。商業主義から距離を置き、独自のスタイルとメッセージを持つことを目指していました。このアプローチは他のインディーアーティストやバンドにも影響を与え、1980年代後半から1990年代にかけてのオルタナティブシーンの発展に寄与しました。

エレクトロニックミュージックの進化
1986年には、エレクトロニックミュージックも大きな進化を遂げていました。ニュー・オーダーの『Brotherhood』やデペッシュ・モードの『Black Celebration』は、シンセサイザーを駆使した音楽制作の可能性を広げ、クラブシーンやダンスミュージックに大きな影響を与えました。

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