見出し画像

ジョニー・キャッシュの初期キャリアから『At Folsom Prison』まで


ジョニー・キャッシュは、アメリカの音楽史における伝説的な人物であり、その独特な音楽スタイルと深い声で多くのファンを魅了しました。彼のキャリアは、カントリー、ロックンロール、フォークなど様々なジャンルを跨いでおり、幅広い影響力を持っています。本記事ではキャッシュの1950年代から1960年代の初期キャリアと、彼のキャリアにおいて特に重要とされる1969年のライブアルバム『At Folsom Prison』に焦点を当てて紹介していきます。


1950年代から1960年代の初期キャリア

まず背景として、カントリーミュージックは1950年代から1960年代にかけて大きな変革期を迎えていました。1950年代初頭はハンク・ウィリアムズのようなアーティストによる「涙のビールソング(tear-in-my-beer honky-tonk songs)」が主流でしたが、エルヴィス・プレスリーの登場により、ロカビリーという新しいスタイルが生まれました。ロカビリーはカントリーとロックンロールを融合させたもので、ジョニー・キャッシュもこのスタイルを取り入れ、その結果、彼の音楽は広範なリスナー層に受け入れられるようになりました​。


サン・レコード時代 (1955年 - 1958年)

ジョニー・キャッシュの音楽キャリアは1955年、メンフィスにあるサン・レコードとの契約から始まりました。当時、サン・レコードはサム・フィリップスが設立したレーベルで、エルヴィス・プレスリー、ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンスなどのスターを輩出していました​​。サム・フィリップスはジョニー・キャッシュのゴスペルソングのパフォーマンスを拒否し、「Go home and sin, then come back with a song I can sell(罪を犯して、それから売れる曲を持ってきてくれ)」と言ったことが有名です。その後、ジョニー・キャッシュは独自のスタイルで新しい曲を制作し、最初のシングル「Hey Porter」と「Cry, Cry, Cry」をリリースしました。続く「Folsom Prison Blues」はカントリーチャートのトップ5に入り、「I Walk the Line」はカントリーチャートで1位を獲得し、ポップチャートでも20位以内に入りました​ 。

「Folsom Prison Blues」
この曲はジョニー・キャッシュのサウンドを象徴する曲の一つで、彼の「Boom-Chicka-Boom」と呼ばれるリズムスタイルが際立っています。シンプルなギターリフと深いバリトンボイスが特徴で、ロカビリーとカントリーの要素を融合させた独自のスタイルです。この曲は、1955年にメンフィスのサンスタジオで録音されました。キャッシュが空軍に在籍していた1951年に見たドキュメンタリー「Inside the Walls of Folsom Prison」に触発されて書かれました。ジョニー・キャッシュはこの映画を見て、囚人たちの厳しい生活に共感し、歌詞を書き始めました。また、曲のメロディーと一部の歌詞は、ゴードン・ジェンキンスの「Crescent City Blues」からインスパイアされています。ジョニー・キャッシュはこの曲の成功後、ゴードン・ジェンキンスに和解金を支払いました​。


「I Walk the Line」
ジョニー・キャッシュの「I Walk the Line」は、彼のキャリアにおいて非常に重要な曲であり、彼の代表作です。この曲は1956年にリリースされ、ビルボードのカントリーチャートで1位を獲得し、ジョニー・キャッシュの名声を確立しました。

この曲の独特なギタープレイは、キャッシュがギターの弦を片手で弾きながら、指を弦にスライドさせることで生まれる音です。この技法により、シンプルでありながら印象的なリズムが生み出されています。他にもジョニー・キャッシュが曲のキーを変更するために用いる「ハンブルグ」技法もこの曲で使われています​。

[Verse 1]
I keep a close watch on this heart of mine
この心をしっかり見守っている
I keep my eyes wide open all the time
いつも目を大きく開けている
I keep the ends out for the tie that binds
絆を保つために努力している
Because you're mine, I walk the line
君がいるから、俺は道を外さない

[Verse 2]
I find it very, very easy to be true
誠実であることがとても簡単だ
I find myself alone when each day's through
一日の終わりには一人になる
Yes, I'll admit that I'm a fool for you
そう、君のために愚か者になると認めるよ
Because you're mine, I walk the line
君がいるから、俺は道を外さない

[Verse 3]
As sure as night is dark and day is light
夜が暗く昼が明るいのと同じくらい確かに
I keep you on my mind both day and night
昼も夜も君を思い続けている
And happiness I've known proves that it's right
俺が知っている幸せが、それが正しいことを証明している
Because you're mine, I walk the line
君がいるから、俺は正しい道を歩む

[Verse 4]
You've got a way to keep me on your side
君には私を引き留める方法がある
You give me cause for love that I can't hide
隠しきれない愛の理由を君はくれる
For you, I know I'd even try to turn the tide
君のためなら、逆流にさえ挑むだろう
Because you're mine, I walk the line
君がいるから、俺は道を外さない


この時期のジョニー・キャッシュの音楽スタイルはカントリーとロックンロールの要素を融合させたものであり、その独特なリズムとハスキーボイスが大きな特徴でした。



Columbia Records移籍後 (1958年 - 1969年)

1958年、ジョニー・キャッシュはColumbia Recordsに移籍し、その後のキャリアを大きく飛躍させました。この移籍により、彼の音楽スタイルはさらに多様化し、「Don't Take Your Guns to Town」「Ring of Fire」などの大ヒット曲を生み出しました。

「Don't Take Your Guns to Town」
1958年にリリースしたシングルで、ジョニー・キャッシュのストーリーテリングの才能を示す代表的な曲です。シンプルなカントリースタイルのサウンドがその才能を引き立てています。

[Verse 1]
A young cowboy named Billy Joe grew restless on the farm
若いカウボーイのビリー・ジョーは農場に飽き飽きしていた
A boy filled with wanderlust who really meant no harm
本当に害を及ぼすつもりはなかったが、冒険心に満ちた少年だった
He changed his clothes and shined his boots
彼は服を着替え、ブーツを磨いた
And combed his dark hair down
そして黒髪を整えた
And his mother cried as he walked out
彼が出て行くとき、母親は泣いた

[Chorus]
Don't take your guns to town son
銃を町に持って行くなよ、息子よ
Leave your guns at home, Bill
銃は家に置いて行くんだ、ビル
Don't take your guns to town
銃を町に持って行くな

[Verse 2]
He laughed and kissed his mom
彼は笑って母親にキスをした
And said, "Your Billy Joe's a man
そして言った、「あなたのビリー・ジョーはもう男だよ」
I can shoot as quick and straight as anybody can
俺は誰よりも早く、正確に撃てる
But I wouldn't shoot without a cause
でも理由もなく撃つことはない
I'd gun nobody down,"
誰も撃ち倒さないよと
But she cried again as he rode away
しかし彼が馬に乗って去っていくと、彼女は再び泣いた


「Ring of Fire」
ジョニー・キャッシュの代表的な曲の一つで、妻であるジューン・カーター・キャッシュとメル・キルゴアによって書かれました。この曲は1963年にリリースされ、ビルボードのカントリーチャートで1位を獲得しました。
この曲の特徴的なサウンドは、メキシカンスタイルのマリアッチバンドの影響を受けています。特にブラスバンドのホーンセクションが目立ち、カントリーミュージックには珍しい要素を取り入れています。ジョニー・キャッシュ自身がこのサウンドを提案しました。

[Verse 1]
Love is a burning thing
愛は燃えるもの
And it makes a fiery ring
そしてそれは炎の輪を作る
Bound by wild desire
激しい欲望に縛られて
I fell into a ring of fire
私は炎の輪に落ちた

[Chorus]
I fell into a burning ring of fire
私は燃える炎の輪に落ちた
I went down, down, down
私はどんどん落ちていった
And the flames went higher
そして炎はさらに高く燃え上がった
And it burns, burns, burns
そしてそれは燃え続ける
The ring of fire
炎の輪
The ring of fire
炎の輪


ジョニー・キャッシュは1960年代から1970年代にかけて、独特のスタイルとテーマで数々のコンセプトアルバムをリリースしました。ここでは、そのなかでも代表的なコンセプトアルバムである『Ride This Train』、『Blood, Sweat and Tears』、『Bitter Tears: Ballads of the American Indian』、『Ballads of the True West』の4つについて紹介していきます。

『Ride This Train』 (1960年)
『Ride This Train』は、ジョニー・キャッシュの初のコンセプトアルバムであり、アメリカの歴史と労働者の生活をテーマにしています。このアルバムは列車の旅をメタファーとして使用し、アメリカ各地を旅するような体験を与えてくれます。各トラックの間にはジョニー・キャッシュ自身のナレーションが挿入されています。このアルバムは炭鉱労働者の過酷な労働を描いた「Loading Coal」や、南部の労働者の生活を描いた「Slow Rider」など、地域ごとの労働者の生活を詳しく描写しています。また、「Going to Memphis」ではミシシッピ川の船乗りの視点から南部の歴史が語られます​。

[Verse 1]
My Pappy said when I was seventeen
父さんが俺が17の時に言った
"You're six feet tall and your face is clean
「お前は身長六フィートで顔もきれいだ
And it don't look right for a boy that old
それだけ大きくなってるのに
To not make a living loading coal"
石炭を積む仕事をしていないのはおかしい」

[Chorus]
Loading coal, loading coal
石炭を積む、石炭を積む
I'm a double first cousin to a dag-blamed mole
俺はくそったれなモグラの親戚みたいなもんだ
Never get rich for to save my soul
魂を救うために金持ちにはなれない
In forty-eleven years of loading coal, loading coal
40年以上も石炭を積み続けて

[Verse 2]
Ain't never got acquainted with a dollar bill
ドル札とは縁がない
And I don't ever reckon that I ever will
そして今後も縁がないだろう
A dollar isn't made for a fellar I'm told
ドルは俺みたいな奴のためには作られていない
That scoops up a living loading coal
石炭を積むことで生きる奴には

「Loading Coal」


『Blood, Sweat and Tears』 (1963年)
『Blood, Sweat and Tears』は労働者階級の苦労をテーマにしたアルバムです。このアルバムは炭鉱労働者、農場労働者、工場労働者など様々な労働者の視点から描かれています。「The Legend of John Henry's Hammer」では、アメリカ民間伝承の英雄ジョン・ヘンリーの物語が語られています。

John Henry said to his captain, "A man ain't nothin' but a man. But if you bring that steam drill around, I'll beat it fair and honest. I'll die with my hammer in my hand, but I'll be laughing because you can't replace a steel-driving man."

ジョン・ヘンリーはキャプテンに言った。「人間はただの人間だ。でも、その蒸気ドリルを持ってきたら、公平に勝負してやる。俺はハンマーを手にして死ぬだろうが、笑っているさ。人間の力は機械には置き換えられないからな。」

「The Legend of John Henry's Hammer」


『Bitter Tears: Ballads of the American Indian』 (1964年)
『Bitter Tears: Ballads of the American Indian』はアメリカ先住民の歴史とその苦難をテーマにしたアルバムです。このアルバムは先住民の視点からアメリカの歴史を再考することを目指して作られました。「The Ballad of Ira Hayes」は第二次世界大戦の英雄であるアイラ・ヘイズの物語を描いており、彼の栄光とその後の悲劇的な人生が語られています。また、「Custer」はジョージ・カスター将軍とリトルビッグホーンの戦いを描いた曲です。歌詞ではカスター将軍の軍事的無能さと残虐行為が描かれています。また、クレイジー・ホースやシッティング・ブルといった先住民のリーダーたちが歌詞の中で登場します。

[Verse 2]
Now, Custer done his fighting without too much exciting
カスターはそれほど興奮することなく戦いを終えた
And the General, he don't ride well anymore
そして将軍はもう馬にうまく乗れない
General Custer come in pumping when the men were out a-hunting
カスター将軍は男たちが狩りに出ているときに乗り込んできた
But the General, he don't ride well anymore
しかし将軍はもう馬にうまく乗れない

[Verse 3]
With victories he was swimming: he killed children, dogs, and women
彼は勝利を収めながら、子供や犬、女性を殺した
But the General, he don't ride well anymore
しかし将軍はもう馬にうまく乗れない
Crazy Horse sent out the call to Sitting Bull and Gall
クレイジー・ホースはシッティング・ブルとガルに呼びかけた
And the General, he don't ride well anymore
そして将軍はもう馬にうまく乗れない

「Custer」


『Ballads of the True West』 (1965年)
『Ballads of the True West』はアメリカ西部の歴史とその伝説をテーマにしたアルバムです。アルバムは二枚組の大ボリュームで、合計20曲が収録されています。これには古典的なカウボーイソング、新たに書き下ろされたオリジナル曲、そして語りのパートが含まれています。このアルバムの代表曲の「The Road to Kaintuck」は西部開拓時代の旅を描いた曲で、その過酷な道のりが語られています。制作背景には、ジョニー・キャッシュ自身の人生の困難な時期が影響しています。この時期は薬物依存に苦しみ、法的トラブルにも巻き込まれていましたが、このアルバムを通じて、シンプルで力強い時代への回帰を試みました。

[Verse 1]
There was a time when going way out west meant going to Kaintuck
かつて、西へ行くということはカイントゥックに行くことを意味していた
The dark and bloody ground as Indians called it
インディアンが「暗く血なまぐさい地」と呼んだ場所だ
Indians wars were ragin' and men like Daniel Boone and Michael Stoner
インディアン戦争が激しく、ダニエル・ブーンやマイケル・ストーナーのような男たちが
Came down the wilderness road like countless families did
無数の家族と同じように荒野の道を下ってきた
Through a place in south West Virginia called Big Moccasin Gap
南西バージニアのビッグ・モカシン・ギャップと呼ばれる場所を通って
It's a hot day in '73 and this is my wife and my kids with me
'73年の暑い日、これは私の妻と子供たちだ
Daniel Boone lost his boy the other day young Jim Boone is dead twenty miles away
ダニエル・ブーンはこの前息子を失った、若いジム・ブーンは20マイル離れた場所で死んだ
The wagons turn and went back home even Daniel couldn't make it alone
ワゴンは方向を変えて家に戻った、ダニエルさえ一人ではやっていけなかった
I guess probably Daniel could but he stopped awhile in castle wood
多分ダニエルはできただろうが、彼はキャッスルウッドでしばらく立ち止まった

「The Road to Kaintuck」


プロデューサーのドン・ローは、ジョニー・キャッシュが当時のフォーク音楽リバイバルと結びつくよう奨励しました。これにより、ジョニー・キャッシュの音楽はカントリー音楽の枠を超え、社会的なテーマや歴史的な物語を取り入れることで、より広範な層に訴えるものとなりました。しかし、これらの新しい方向性は常にカントリーミュージックの古参ファンには受け入れられず、一部では「カントリーらしくない」との批判もありました。


ジョニー・キャッシュの伝説的なライブアルバム『At Folsom Prison』(1968年)

ジョニー・キャッシュは、刑務所でのパフォーマンスに対して特別な関心を持っていました。1955年にリリースした「Folsom Prison Blues」以来、彼は刑務所でのライブ録音を夢見ていましたが、その実現には時間がかかりました。

1968年1月13日、キャッシュはカリフォルニア州のフォルサム刑務所で念願のライブを行い、その模様を録音しました。このライブは彼のキャリアにおいて非常に重要な出来事となりました。ライブ当日、受刑者たちはキャッシュのパフォーマンスを心待ちにしており、彼の登場を熱狂的に歓迎しました。その歓声も消されずにちゃんと録音されており、当時のライブの空気感をそのまま味わうこともできます。このライブはライブならではのパワフルなパフォーマンス、ジョニー・キャッシュのユーモアのある人間性が垣間見ることができ、今聞いてもとても楽しむことができます。このライブは午前と午後の二階に分けて行われたそうで、そのためか途中でエネルギーが切れることないパフォーマンスを見せてくれています。

他にもこのライブにまつわる魅力的な話があります。ジョニー・キャッシュは、フォルサム刑務所でのライブの前の1968年1月12日の夜、フォルサム刑務所の牧師であるフロイド・グレセットから、囚人のグレン・シャーリーが書いた「Greystone Chapel」という曲を紹介されました。ジョニー・キャッシュはその場でこの曲に深く感銘を受け、翌日のライブで演奏することを即座に決めました。ライブ当日、ジョニー・キャッシュは「Greystone Chapel」を演奏し、シャーリーを前列に座らせて彼の曲が演奏される様子を直接見せることで、シャーリーに大きな感動を与えました。

ジョニー・キャッシュはこのライブを通じて、エンターテインメントの枠を超えた社会問題に対する強いメッセージを発信しました。彼は刑務所改革の重要性を訴え、「Greystone Chapel」の演奏を通じて、受刑者たちに希望と救いのメッセージを届けました。


収録曲

「Folsom Prison Blues」 
ジョニー・キャッシュのシグネチャーソングであり、刑務所生活の厳しさを描写した楽曲。ライブバージョンはオリジナルよりもさらに力強いパフォーマンスとなっています。またライブの初めの曲だからか、囚人たちのリアクションや拍手がたくさん聞こえてきます。


「Dark as a Dungeon」
アパラチア地方の鉱夫たちの生活を描いたメル・トラヴィスの曲で、ジョニー・キャッシュはその歌詞の深さと悲哀を強調しながら演奏しました。曲の途中で囚人たちの笑い声に対して、ジョニー・キャッシュは「録音中だから笑わないで」とジョークを交えてコメントするのも注目ポイントです。また曲の最後のコメントも面白いので下にのせておきます。

"Thank you very much, thank you very much. I'm sorry about that little interruption there, but I just want to tell you that this show is being recorded for an album release on Columbia Records and you can't say 'hell' or 'shit' or anything like that. How's that grab you, Bob?"

「どうもありがとう、どうもありがとう。途中で少し中断して申し訳ないが、このショーはコロムビアレコードのアルバムリリースのために録音されているので、『地獄』とか『クソ』とか言えないんだ。どうだい、ボブ?」


「Cocaine Blues」 
薬物依存の危険性を訴える曲で、その激しいリズムとジョニー・キャッシュの力強いボーカルが印象的です。この曲はスピーディーなテンポとリズミカルなギターラインが特徴です。

[Verse 1]
Early one morning, while making the rounds
ある朝早く、見回りをしていると
I took a shot of cocaine, and I shot my woman down
コカインを一服し、女を撃ち殺した
I went right home, and I went to bed
すぐに家に帰り、ベッドに入った
I stuck that loving .44 beneath my head
愛用の.44を枕の下に隠した
Got up next morning, and I grabbed that gun
次の朝起きて、銃を手に取った
Took a shot of cocaine, and away I run
コカインを一服して、逃げ出した
Made a good run, but I run too slow
逃げ切ったが、走るのが遅すぎた
They overtook me down in Juarez, Mexico
メキシコのフアレスで捕まった

[Verse 2]
Laid in the hot joints, taking the pills
刑務所で薬を飲んでいた
In walked the Sheriff from Jericho Hill
ジェリコ・ヒルから保安官が入ってきた
He said, "Willy Lee, your name is not Jack Brown
「ウィリー・リー、お前の名前はジャック・ブラウンじゃない
You're the dirty hack that shot your woman down"
お前は女を撃ち殺した汚いハックだ」
"Yes, oh yes, my name is Willy Lee
「そうだ、俺の名前はウィリー・リーだ
If you've got a warrant, just a-read it to me
逮捕状があるなら読んでくれ
Shot her down because she made me slow
彼女が俺を遅らせたから撃ち殺した
I thought I was her daddy, but she had five more"
俺は彼女のダディだと思っていたが、彼女には他に五人もいたんだ」

[Verse 3]
When I was arrested I was dressed in black
逮捕されたとき、俺は黒い服を着ていた
They put me on a train, and they took me back
俺を列車に乗せて連れ戻した
Had no friend for to go my bail
保釈金を払う友達もいなかった
They slapped my dried up carcass in that county jail
俺の干からびた体を郡の刑務所に放り込んだ
Early next morning, 'bout a half past nine
次の朝早く、9時半頃
I spied a Sheriff coming down the line
保安官が列に沿って歩いてくるのが見えた
Hocked and he coughed as he cleared his throat
咳をして喉を清めながら
He said, "Come on you dirty hack into that district court"
「おい、汚いハック、地区裁判所に来い」と言った

[Verse 4]
Into the courtroom, my trial began
法廷に入り、裁判が始まった
Where I was handled by twelve honest men
十二人の正直な男たちが担当した
Just before the jury started out
陪審員が出て行く直前
I saw that little judge commence to look about
小柄な判事が周りを見回し始めた
In about five minutes, in walked a man
五分ほどで、一人の男が入ってきた
Holding the verdict in his right hand
右手に判決を持って
The verdict read, "In the first degree..."
判決は「第一級殺人罪...」と書かれていた
I hollered, "Lordy, Lordy, have mercy on me"
「おお、神よ、私に慈悲を」と叫んだ
The judge, he smiled as he picked up his pen
判事は微笑みながらペンを取った
Ninety-nine years in the Folsom Pen
フォルサム刑務所で99年
Ninety-nine years underneath that ground
地の底で99年
I can't forget the day I shot that bad bitch down
あの悪い女を撃ち殺した日を忘れられない

[Outro]
Come all, you've got to listen unto me
皆、俺の話を聞いてくれ
Lay off that whiskey, and let that cocaine be
ウィスキーをやめて、コカインもやめろ


「25 Minutes to Go」 
この曲は、死刑囚が処刑までの25分間をカウントダウンしながら、自分の状況と心境を語るという内容です。ジョニー・キャッシュはこの深刻なテーマを扱いながらも、途中でふざけた歌い方を取り入れ、観客の囚人たちを楽しませました。

Verse 1]
Well, they're building a gallows outside my cell
処刑台を俺の独房の外に作っている
And I've got 25 minutes to go
あと25分だ
And the whole town's waiting just to hear me yell
町中の人々が俺の叫び声を聞くのを待っている
I got 24 minutes to go
あと24分だ

[Verse 2]
Well, they gave me some beans for my last meal
最後の食事に豆を出された
With 23 minutes to go
あと23分だ
But nobody asked me how I feel
でも誰も俺の気持ちを聞いてくれない
I got 22 minutes to go
あと22分だ

[Verse 3]
Well, I sent for the governor and the whole durn bunch
知事やその一団に連絡を取った
With 21 minutes to go
あと21分だ
And I called up the mayor but he's out to lunch
市長に電話したが昼食に出ていた
I got 20 more minutes to go
あと20分だ


「The Long Black Veil」 
無実の罪で処刑される男の物語を描いた悲しいバラード。物語は主人公が親友の妻との不倫関係を隠すために、殺人の罪を黙って受け入れるというものです。判事からアリバイを求められた主人公は、不倫関係を明かすことなく、命を捨てることを選びます。主人公の死後、彼の恋人が夜ごとに墓を訪れ、彼の無念を悲しむという物語が描かれています。この曲はメランコリックなメロディと深い感情が特徴で、ジョニー・キャッシュの低音が物語を引き立てます。

[Chorus]
She walks these hills in a long black veil
彼女は長い黒いヴェールをまとってこの丘を歩く
She visits my grave when the night winds wail
夜の風が泣くとき、彼女は俺の墓を訪れる
Nobody knows, nobody sees
誰も知らない、誰も見ない
Nobody knows but me
俺以外誰も知らない


「Jackson」 
ジューン・カーターとのデュエット曲であり、その明るく楽しいパフォーマンスがライブの雰囲気を一層盛り上げました。シェーン・カーターとの息の合ったパフォーマンスが見どころです。

Johnny: "Hey, will you sing a song with me?"
ジョニー: 「一緒に歌ってくれるかい?」

June: "I'd be very pleased to sing a song with you!"
ジューン: 「喜んで歌うわ!」

Johnny: "You sure look nice!"
ジョニー: 「本当に素敵だよ!」

June: "Thank you, I'm - glad to be back in Folsom!"
ジューン: 「ありがとう、フォルサムに戻れて嬉しいわ!」

Johnny: "Oh, I like - (laughs) I like to watch you talk."
ジョニー: 「君が話すのを見るのが好きだよ。(笑)」

June: "I'm talkin' with my mouth! (Laughs) It's way up here!"
ジューン: 「私は口で話してるのよ!(笑)口はここにあるの!」

Johnny: "Alright, let's do a song!"
ジョニー: 「よし、歌おう!」

舞台上での妻との軽妙なやり取り


「Greystone Chapel」 
ジョニー・キャッシュがこのライブを行う前夜、フォルサム刑務所の牧師フロイド・グレセットがジョニー・キャッシュにシャーリーの曲「Greystone Chapel」を紹介しました。この曲はシャーリーがフォルサム刑務所内の礼拝堂について書いたものです。ジョニー・キャッシュはこの曲に強く感動し、翌日のライブで演奏することを即座に決めました​。

"Thank you very much. This next song was written by a man right here in Folsom Prison. And last night was the first time I ever sung this song. Anyway, this song was written by our friend Glenn Shirley, and... (applause) I hope I do your song justice, Glenn. We'll do our best..."

「どうもありがとう。次の曲はここフォルサム刑務所にいる男が書いた曲です。昨晩がこの曲を初めて歌いました。この曲は私たちの友人グレン・シャーリーが書いたもので…(拍手)グレン、君の曲をちゃんと歌えることを願っているよ。最善を尽くします…」

[Chorus]
Inside the walls of prison my body may be
刑務所の中に体は閉じ込められていても
But my Lord has set my soul free
主が私の魂を解放してくれた

[Verse 1]
There's a grey stone chapel here at Folsom
フォルサムには灰色の石造りの礼拝堂がある
A house of worship in this den of sin
この罪の巣窟にある礼拝の場所だ
You wouldn't think that God had a place here at Folsom
神がこんな場所にいるとは思わないだろう
But he saved the soul of many lost men
でも彼は多くの迷える魂を救ってきた
Now this grey stone chapel here at Folsom
今、このフォルサムの灰色の礼拝堂は
Stands a hundred years old made of granite rock
花崗岩でできて百年の歴史を持つ
It takes a ring of keys to move here at Folsom
ここでは一束の鍵が必要だけど
But the door to the house of God is never locked
神の家の扉はいつでも開いている

[Chorus]
Inside the walls of prison my body may be
刑務所の中に体は閉じ込められていても
But my Lord has set my soul free
主が私の魂を解放してくれた

[Verse 2]
There are men here that don't ever worship
ここには礼拝しない男たちもいる
There are men here who scoff at the ones who pray
祈る者を嘲笑う男たちもいる
But I've got down on my knees in that grey stone chapel
でも私はその灰色の礼拝堂で膝をつき
And I've thanked the Lord for helping me each day
毎日助けてくれる主に感謝した
Now this grey stone chapel here at Folsom
今、このフォルサムの灰色の礼拝堂は
It has a touch of God's hand on every stone
一つ一つの石に神の手が触れている
It's a flower of light in a field of darkness
暗闇の中の光の花だ
And it's given me the strength to carry on
そして前に進む力を与えてくれた

[Chorus]
Inside the walls of prison my body may be
刑務所の中に体は閉じ込められていても
But my Lord has set my soul free
主が私の魂を解放してくれた


詳しい和訳はジョニー・キャッシュ名曲和訳リストでご確認ください。


アルバムの制作とリリース
このライブの録音は、プロデューサーのボブ・ジョンストンによって編集され、1968年5月にアルバムとしてリリースされました。アルバムのリリースには、ジョニー・キャッシュの友人であり当時のカリフォルニア州知事であったロナルド・レーガンも立ち会いました。


ライブアルバム『At Folsom Prison』は音楽業界やファンから絶賛されました。このアルバムは、ジョニー・キャッシュの社会的なメッセージを広める手段としても非常に重要であり、意義深い作品です。商業的にも大成功を収め、このアルバムはジョニー・キャッシュのキャリアにおける最高の作品として評価されています。


1969年には、キャッシュのテレビショー『The Johnny Cash Show』が開始されました。このショーはジョニー・キャッシュの音楽と人物像を広く紹介する場となり、多くの著名なアーティストと共演する機会を提供しました。特に、クリス・クリストファーソンの「Sunday Morning Coming Down」のパフォーマンスは大きな話題となり、カントリーチャートで1位を獲得しました。

最後にこの時期のジョニーキャッシュの情報をもっと知れる映画を紹介します。ディズニープラスで見れるのでぜひ見ることをオススメします。


映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』

映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』は、ジョニー・キャッシュの人生とキャリアを描いた伝記映画で、2005年に公開されました。この映画はジョニー・キャッシュの音楽キャリアの始まりから、彼が成功を収めるまでの困難な道のりを描いています。

ジョニー・キャッシュ役をジョーカー訳で有名なホアキン・フェニックスが演じ、彼の妻であり、音楽パートナーであるジューン・カーター役をリース・ウィザースプーンが演じています。

映画はジョニー・キャッシュが幼少期に兄を失うという悲劇から始まります。その後、彼は軍隊に入隊し、音楽の道を志し、サン・レコードと契約するところが描かれます。そこでエルヴィス・プレスリーやジェリー・リー・ルイスと共にツアーを行いながら、ジューン・カーターと出会い、彼女との関係が映画の中心テーマとなります。映画全体を通して、キャッシュの音楽が巧みに織り交ぜられており、人生と音楽の深い関わりを描いています。ジョニー・キャッシュについて深く知りたい人には必見の作品です。







この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?