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アウトプットなし、インプットだらけの生活。デザイナーの育休。

はじめまして、グランドデザイン アートディレクターで二児の母 狩集美穂です。そして弊社初の育児休業を取得した社員です。二人分で合計約3年半の育休期間から得た、生活に基づくデザイナー視点での気付きを綴りたいと思います。

発信する側から受信する側へ、180度の転身。

創り出しても受け取り手が見えない生活から、創ることなくひたすら受け取る生活へ。

育児休業を取得する前までは、私もフルタイムで働くアートディレクターでした。
いわゆるクリエイターと呼ばれる「新しいものを作って発信する」側の人間でしたが、出産を機に長い休業生活に入ると、生活は一変しました。これまでは朝出勤して夢中で仕事して、終電でまっすぐ帰宅してバッタリと寝床に倒れ込む。ごくたまに自分のデザインしたものを街中で見かけることがあったり。そんな毎日から、午前中はスーパーへ買い物に、午後は散歩や育児イベントに足繁く通う、まさに今まで触れることのなかった営みの中に身を置くことになったのです。

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今まで見えなかった人たちの生活が見えてくる。

マーケデータから想像するしかなかった、あらゆるターゲット層とリアルに接する生活に。

生活がガラリと変わると、いろいろなものが目に入ってきました。平日なのに毎日朝一番は大混雑で入り口付近で行列ができている激安スーパー、シニア世代のコミュニティ形成の場と化した地元の小さな病院、遊歩道で自分の部下になってくれそうな人をスカウトする生保レディのおばちゃん、昼下がりに家庭を次々訪問しては下水管清掃のセールストークを披露する金髪の若いお兄さん…

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また、保育園のママと接することで異業種交流が生まれることも大きな発見でした。とある現代の妊娠出産傾向を分析した記事に、こんなことが書いてありました。「出産年齢が高齢化する原因の一つとして、女性が職場進出し重要なポストに就て活躍することで、妊娠出産を理由に抜け出すことが難しくなっているという実態がある」と。保育園に我が子を預けるママたちは、まさにその記事に登場するような、それぞれの業界で重要な仕事を任される優秀な人材であろうことが垣間見られる出来事にもたくさん出会いました。
そういったデキる女性たちの意見のなんと新鮮なこと。自分の生活にプラスになることはどんどん興味を持って取り入れていくアンテナと積極性を持っています。
今までは主婦の井戸端会議といえば誰それの悪口や家族の愚痴などが中心なのだろう、と偏見の目で見ていましたが(すみません…)、ここでもものすごく有意義な情報交換が行われていました。

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私が経験した、こんなエピソードがあります。このコロナ禍において、ドラッグストアからアルコール消毒液、除菌ウェットティッシュが姿を消しました。この事態に私の住む自治体ではいち早く大型の次亜塩素酸水製造機を購入し、大量に製造していくつかの公共施設で市民に無料配布を始めました。ところが街の掲示板や市の広報誌など限られたメディアでしか告知されず、画期的な取り組みにもかかわらず、私も全く知らず、消毒液不足に不安な日々を過ごしていました。それがママ友ネットワークを通して、市が配布活動を始めたことからそもそも次亜塩素酸水とは何か?ということまで、ママたちの手によってよりわかりやすい情報となって私のところにも届きました。次の日早速私もママ友に勧められた容器を持って近くの施設へ行き、消毒液を受け取りました。主婦同士、お互いに家事や経済の効率アップが見込める情報をセレクトして共有する(いわゆる口コミ)能力には本当に驚かされ、ぜひ今後仕事に活かしたいと思った出来事でした。


これ、もっとわかりやすく出来そう。

生活の中に眠るデザインの市場はまだまだいっぱい。

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家事育児関連や自治体の情報など、これまでほとんど接点のなかったカテゴリに触れることで、まだまだデザイナーとして踏み込んでいける領域が眠っていることに日々気づかされます。
例えば、住んでいるエリアによって違うゴミの分別回収。
分別の仕方が複雑だったり、隔週だったりする資源ゴミの回収日…常に頭に入っているわけではありません。パッと見られるところに貼り出しておきたいけど、部屋の景観を損ねるデザインだったり、情報のまとめ方がイマイチだったり。
スマホアプリでサクッと見られるといいのに、なんて思うけど、私の住む自治体ではまだそういうサービスはありません。

もしゴミ回収カレンダーがすごくおしゃれな作りだったら?
ゴミ分別マニュアルがちょっと綺麗なZINEみたいな冊子だったら?
ゴミの回収日のリマインドとちょっとした小ネタが一緒にスマホに届いたら?

ゴミ回収カレンダーなのに、リビングで使いたくなるデザイン。しかも自治体から配布されるものなら無料だしちょっと嬉しい。
ゴミ分別マニュアルが綺麗なZINE。あえて本棚にしまわず部屋に飾ったり、中の記事が面白く読める内容になっていたら楽しい。
ゴミの回収日リマインドに「こんな意外なものも捨てられますよ」なんて小ネタがついてくると、誰かに教えてあげたくなるかも。

また、この時できた素材を他の自治体も共有できるコンテンツ化したら、より大きな仕組みと広がりが生まれ様々な用途に使うことができるかもしれない。

長い育児休業中、このような気づきはまだまだあるので今後どんどん書いていきます。私と同じワーキングマザーの皆様、またそういうご家族がいらっしゃったりして興味がある方、忙しい時間の中で、共感したりクスッとできるお話もあるかもしれません。楽しみにしていてください。

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