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日本のレトロ建築

この記事を書いている2021年6月は相変わらず旅行には出られない状況。旅好きの皆様はご近所探索に勤しんでいることと思います。そこで、近頃よく耳にする「レトロ建築」についてお話しさせてください。

レトロ建築って?

レトロ建築で検索すると「近代建築」がヒットしてくるのですが、私たちが呼んでいる「レトロ」は、歴史的にただ古いだけじゃない。明治・大正・昭和期に建てられ、西洋など海外の建築様式を取り入れたものを指す場合が多いと思います。おそらく、それは日本に限らず台湾・上海・大連など海外でも見受けられます。当時のままで保管されているもの。内部を改装して現代でも活用しているものなど、挙げるとキリがない数の建築の中から、特に印象に残っているものをご紹介させてください。

関東のレトロ建築

訪問した建築を時代的にザックリ分けると
・明治 擬洋風建築 
旧開智学校(国宝)/富士屋ホテル本館(国の登録有形文化財)など。
--従来の木造日本建築に西洋建築の特徴的意匠や、時には中国風の要素を混合し、庶民に文明開化の息吹を伝えようと各地に建設された--(wikipedia)
・大正
東京駅/早稲田大学など
主要都市の発達や経済の拡張に伴い、都市文化、大衆文化が着目され「大正モダン」と呼ばれる文化が花咲いた時期です。洋風生活を取り入れた「文化住宅」が一般向け住宅として多く建設されましたが、多くは1923年の関東大震災で失われてしまったのが残念です。
・昭和 
街中の商店街では看板建築が続々と建てられ、銀座や日本橋でアールデコ・スタイルのビル、モダン建築が登場してきます。

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ラリック作品が輝く!アール・デコの旧朝香宮邸

東京都庭園美術館にある本館が、旧朝香宮邸です。学生時代にレポートを書いた覚えがある方も多いと思います。

鉄筋コンクリート造2階建て(一部3階建て)、地下1階で1929年(昭和4年)頃から建築準備に取り掛かり1933年(昭和8年)5月に完成。外観は、玄関ポーチの狛犬以外ほとんど装飾がみられないが、内装には当時流行のアール・デコ様式の粋を尽くした瀟洒な建物である。アール・デコ様式の個人住宅は世界中に存在するが、旧朝香宮邸はその中でも質が高く、保全状態が良い。1993年に東京都の有形文化財に指定され、2015年に国の重要文化財に指定された。 建築設計は宮内省内匠寮(担当技師は権藤要吉)であるが、主要な室の内装基本設計はフランスのインテリアデザイナー、アンリ・ラパン(フランス語版)が担当している。また正面玄関にある女神像のガラスレリーフや大客室のシャンデリアなどはフランスの宝飾デザイナーでガラス工芸家でもあったルネ・ラリックの作品である。(Wikipedia)

年に1回だけ建物公開しているので、お散歩がてら見学にいくと楽しいです。建物自体もそうですが、ラリックのガラスレリーフなどの作品はため息が出そうに美しい。やはりアートは生活の中にあって欲しいものです。

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昭和が生んだ近未来建築。中銀カプセルタワービル

日本を代表する建築家・黒川紀章が設計の、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅です。メタボリズム思想ですね。
外観は時計仕掛けのオレンジを連想させる、宇宙船のような近未来感がそそります。

世界で初めて実用化されたカプセル建築。1960年代前後に、イギリスのアーキグラムグループや、フランスのポールメモン、ヨナフリードマン等、建築を脱構築して、その部屋をカプセルとして自立させたり、メガストラクチャーにカプセル建築をとりつける構想と同時代性をもっている。

ここでは、プレハブ(量産)でありながら多様性という新しい質を表現できるかどうかという新しい課題の対する挑戦と、自我の自立という個人主義を経ることなく近代化してしまった日本への批判として、自立する個の空間を目指している。

技術的には4本の高張力ボルトのみでコンクリートコアシャフトに取付けられたカプセルは、実際に取りはずして新しいカプセルと交換されるよう、技術開発がなされている。 カプセル建築は、単身者用の宿泊、デン(書斎)として想定されたが、家族用としては、数個を扉でつなぐことによって可能となるよう計画された。 カプセルの内装は、電化製品や家具、オーディオ、TV、電話まで工場でセットされ、現地でクレーン車によって吊上げれらてシャフトに固定された。

新陳代謝、取換え、リサイクルを実現したサスティナブル建築の原型でもある。

* 2006年 Docomomo Japan-日本近代建築125選に選ばれた。
(Kisho Kurokawa HP)

もちろん有名な建築なのですが、時々話題になるのが「建て替え決議」。建物全体の老朽化と壁の裏側に吹き付けられたアスベストも問題になり、2007年に建て替えは決まってしまいました。しかし2008年のリーマンショックで計画は白紙に。その後、保存活動が盛んになりました。カプセルを交換して使い続けることで、この建築の価値と存在意義が完成するのですが。今後が気になります。
現在はホテルや賃貸物件になっている部屋もあるので、所有者以外でも住み心地を体験できます。以前、賃貸物件で出た時は本当に借りようかと思ってました。
見学会があるので、部屋の内部もじっくり見ることができます。(有料です)

<中銀カプセルタワー見学ツアー>
​1972年に建てられた中銀カプセルタワービルは、すでに竣工後48年が経過し、当時の「近未来的」な内装を残すカプセルは少なくなりました。このツアーは、備え付けの棚はもちろん、オプションで選ぶことができたソニー製のテレビ、オープンリールデッキ、レシーバーなどが設置されたレトロフューチャーな面影を残すカプセルをご覧いただきます。カプセルの中に初めて入る方向けのツアーです。

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休日のお散歩に、レトロ建築はいかがでしょうか

東京都小金井市の「江戸東京たてもの園」では、東京都内にあった文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示しています。スタジオジブリが「千と千尋の神隠し」の制作にあたり“大いに参考にした場所”として公式発表したことでも有名ですね。東側の下町中通りは、「千と千尋の神隠し」で千尋が迷い込んだ商店街。「武居三省堂」の店内は、釜爺の働くボイラー室のモデルかな?子供も楽しめると思います。
井の頭線駒場東大前駅の近く。駒場公園の「旧前田家本邸洋館」
2018年に修復も終わり、建物の内部は一般に公開されています。各室ごとに設けられている暖炉、シャンデリアなどは、ほぼ洋館建築当時のままです。前述した旧朝香宮邸のように広い敷地内に建っており、割と静かな環境。渋谷にも近いのですが、住宅街の中にあり、とてもリラックスできます。オススメです!

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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