塾に通えない困窮の原因

私が小学生の頃、難病にかかり倒れた母は
病院で手の施しようがなくなって
家で療養生活を送るようになった。

家といっても家事のできない父は祖母を頼り
居候していた祖母宅で家族4人で過ごすことになったのだ。

この頃私は父に言われて強制的に中学受験の勉強をするようになっていた。
「しないと殺す」というくらいの勢いだった。

にも関わらず塾には通わず、仕事から帰宅した父が
中学受験塾のテキストを使って4教科教えてくれていた。

週末にはテストだけ受けに塾に通った。

なぜ塾の授業を受けなかったかは
「お金がなかったから」だと聞かされていた。

父は大企業で働いていて生活に不自由はないはずだった。

母も難病とは言え特殊な治療を受けているわけではなさそうだった。

その頃、家には大きな壺や大きな聖書のような
仰々しい本が何冊も置かれるようになった。
とても貴重なものだと聞かされていた。

思えば同じ頃の父は
「アルマゲドンで地球が滅びる」などと話すようになっていた。

これが家族の生活を圧迫していたのだと知ったのは
それから四半世紀あまり経ってからだった。



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