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風になる

風になった事があるだろうか。自分は自信を持って「ある」と言うことができる。

なんのアニメかドラマか忘れたが、主人公とヒロインが「今私たち風になってるよ!」と言っているシーンがあったような気がする。断言する。
それは風になっていない。(調べてみたらトトロのめいとさつきがトトロにしがみついて空を飛んでるシーンだった)髪が風でなびいて、思いっきり風を感じている。それは風になったと言えない。

アインシュタインが光の速さで移動すれば光が止まって見えると考えたように、地球というマクロな視点で見れば地球上で静止していても、等速度運動をしていても同じと見なすことができるように(この例えはちょっと違うかも)、風になっている時は全く風を感じないのだ。

自分がいつそれを感じたかと言うと、初夏になって、自転車を漕いでも肌寒く感じることもなくなり、半袖で通学をしている時だった。夜9時半過ぎに川沿いの土手の歩道をいつものように走っていた。近くに大きなマンションが立っており、その道だけ少し広くなって走りやすく、車道からその道に入る時、坂道になっているのでペダルを漕がずに自転車に乗っていたらその時が訪れた。
自転車に乗っていたら絶対に感じることのない無風状態。「凪」だった。感じたのはわずか5秒ほど。最初は妙な違和感。顔にいつもだったら感じるはずの空気抵抗が全くない。変だなと思い、考えて気づいた時にはもう終わっていた。自分は風と同じ速さで、同じ方向に動いていたのだ。
あのわずか数秒間だけ風になっていた。

1ヶ月以上経った今でも忘れることができない。
自分の他にも感じたことがある人がいるだろうか。生きていればまたあの状態になる事があるのだろうか。浪人生も悪くねえなと感じた瞬間だった。

また、風になることを願って今日も予備校に自転車を走らせている。

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