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家業のある家に産んでくれてありがとう──藤本 麻衣子

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「家業を継いでいないのだから、家業は自分に関係のないこと」「社会に出て企業で働いているから、家業について考えたこともない」。こんな常識を一度疑ってみよう。家業と無関係に思えるあなたの今のキャリアや選択してきた仕事も、ひょっとすると家業のバックボーンがあるからこそかもしれない。ひょっとすると、仕事に大いに活きているのかもしれない。

今回インタビューするのは、経営コンサルタントをしている藤本 麻衣子さん。実家は電気工事業を営んでいる。一見、家業と今のキャリアは全く関係ないように思えるけれど、実は彼女のキャリアには家業のエッセンスがたっぷりつまっているようだ。

プロフィール
名前: 藤本 麻衣子
年齢: 33歳 (5歳の男の子ママ)
家業:電気工事業
代:4代目
事業承継:ない
現在:経営コンサルタント

まずは、彼女の家業の話から、現在のキャリアについて聞いてみよう。

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──家業はなんですか?

電気工事業です。ビルや工場の電気設備工事から、トンネル、道路などの照明防災設備まで人の生活になくてはならない電気に関わる事業をしています。例えば、人の心をワクワクさせるイルミネーションなどのtoB事業や、暮らしの身近に寄り添うオール電化、太陽光発電のtoC事業なども行い、人の暮らしを豊かにすることにやりがいを感じています。
 
──家業にまつわる思い出はありますか?

親戚とお正月に集まると、祖父母や伯父伯母が、景気や家業の話をしていました。今思えばそれは家業持ちならではだと思います。特殊ですよね。
あと、象徴的なエピソードかな、と思うのは、我が家の家族団らんの話題ですね。父は忙しくて、毎日晩御飯を一緒に食べられるというわけではなかったのですが、父が帰ってきて皆が食卓に集まると、父が最近の仕事の話や、従業員さんの話、その従業員さんのご家族の話をしてくれました。やっぱり、ビジネスにはいい時も悪い時もある。物心ついたときから、父のそんな話を聞いていたので、多感な思春期も含めて、戦う父の背中を見続けて大きくなったと思います。

──藤本さんは現在はどんな仕事していますか?

中堅・ベンチャー企業向けのコンサルティングをしています。

──就職活動はしましたか?

しました。父には昔から「継がずにもっと世界に羽ばたけ」と言われていたので、大好きな英語を使って社会貢献したいな、と思っていました。
しかし、就職活動中に色々な人の話を聞いたり、自分の今までのことを振り返っているうちに、自分の中で家族と家業がすごく大きい存在であることに気づきました。

だからこそ、初めての就職先を決めるとなった時は、父のような経営者に寄り添い、役に立ちたいという思いになりました。コミュニケーションを通して経営を支えるという働き方に妙に納得して、新卒で入社したいと思ったのが、リクルートコミュニケーションズでした。

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──新卒時の面接では家業の話をしましたか?

はい。なぜリクルートを受けているのかと聞かれたら、「経営者を元気にしたい」となるし、なぜ経営者を元気にしたいのかと聞かれたら、「父が経営者で、頑張っているのを見てきたから」でしかない。私にとって、”家族=家業”であり、”父=荒波に奮闘する経営者”でした。例えば、親を支えたい、とか、弟の力になりたい、とか、家族に対してそういう自然な気持ちが湧くように、経営者を支えたいと言う気持ちはとても自然なものでした。常に従業員の皆様や従業員の方の家族を大事にしていた父や、理不尽な要求にも走り回って悩み詰めていた父が、私の知っている「経営者」でした。

家業のある家に産んでくれてありがとう

──藤本さんのお仕事に家業が役立っていることはありますか?

父を見ていて強く感じるのは、一つの会社を続けるって途方もないことだということです。経営者や会社の後ろには、従業員の方はもちろん、そのご家族、お客様とお客様のご家族、友人、地域、社会、世界が広がっています。経営者は、自社のビジネスで、誰かの「今」そして、「未来」を豊かにする架け橋を作るために、日々挑戦し、悩み、全身全霊をかけていらっしゃるのです。
経営コンサルティングなんて、仰々しいのですが、経営者の方のご苦労をお伺いしていると、その想いが手に取るようにわかります。人の気持ちを理解するなんて、ビジネスとしては当たり前だとは思いますが、家業を持っている分、経営者の方々の気持ちがちょっぴり想像しやすいのは、ヒトよりもアドバンテージかもしれませんね。家族に感謝です。

経営者を身近に感じて生きてきた自分だからこそ、誰よりも当事者として走っていきたい

世界が目まぐるしく変わる昨今の情勢を考えると、父や祖父を始めとする様々な経営者の方が、誰かを幸せにするために、お金や時間をたくさん投資して作り、育て、たゆまぬ努力をしながらよりよくしてきたものを、次の世代に繋ぐべきものであれば繋ぐべきだと思っています。
例えば、これまで培ってきた技術やナレッジを元に、まだ出会えていないお客様に届けるような仕組みを作ることができると、新たな幸せの広がりが見えるかもしれないな、とか。会社の仕組みを変えることで、従業員の皆様が毎日働き甲斐を感じながら働くことができるようになれば、今のままの事業形態でも、お客様に貢献できる大きさは変わっていくかもしれないな、とか。
経営者や会社が目指す社会の実現を理想や妄想で終わらせずに、どうすればそれができるようになるだろうか、と自分も経営者以上に汗をかいて動いて考えていくことが自分の仕事だと思っています。そうすることで、世界はどんどん良くなるし、人は幸せになれる…格好良く言えば、そんなことをしているつもりです。
私も一児の母なので、100年人生と言われる今、今の仕事が、息子が暮らす100年後の世界をよりよくしていっている、と思えることもやりがいの一つです。

そのためにも、日々勉強、日々成長していかないといけないことは、結構シビアなキャリアチョイスだと思います。だからこそ、一緒に切磋琢磨したいと思える仲間や尊敬できる先輩がたくさんいる今の会社の環境はありがたいと思っています。自分が育児との両立を迫られていても、続けたいと思うのは、今の会社のお蔭です。

──グラフトプレナーに一言

「いつか継ぐけれども、今じゃない」とか「継ぐつもりは絶対ない」と思って、あまり家業に関わらない方もいるかと思います。私も実際、最近まで家業に全く関わっていませんでした。でも、私の家業も、父から次の世代へと事業継承をしていく時期になりました。その際、「家族」の形を考えると同じように「家業」の形にも向き合う必要が出てきたのです。今回、家業に向き合う中で気づいたのは、家業を取り巻く環境も人もスピードも変わって行くのだ、という当たり前のこと。今は継承なんて考えていなくても、家業にある意味人生をある程度影響を受けた自分が向き合わなければいけない時も来る可能性も高いということ。
もし、今、家業のことを何も知らない、むしろあえて聞かないようにしていた、という方は今一度一歩踏み込んでいくことも、いい意味での変化を与えることになると思います。身近に経営者がいらっしゃる方は、記者になったつもりでインタビューしてみるのはいかが?


最後までご覧いただきありがとうございます😊

本記事の内容・表現は、取材当時の"瞬間"を『家業エイド』視点で切り取らせていただいた、あくまで家業を通して皆様が紡いでいる物語の過程です。皆様にとっての「家業」そして「家業との関係性」は日々変わりゆくもの。だからこそ、かけがえのない一人一人の物語がそれを必要とする誰かに届くことを切に願っております。

運営チーム一同より

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