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#8. ネパールのポストカード

30年ほど前、ネパールから1枚のポストカードが届いた。

印刷物名:チベット・タンカのポストカード
(TIBETAN TANKA LOKESHWOR THOUSAND HANDS)
サイズ:149 × 105 mm
採取場所:東京(日本)
採取年:不明(1991年から1992年ごろ)
詳細情報:Dingri’s Card-009/Photo: Terata/Printed in Akita, Japan/1 June ’91

大学時代の友人I君からだった。
美術大学時代からセンスの塊みたいな男だったから、このカードもいかにも彼らしいなと思った。
(彼は有名なデザイン事務所に今も勤めている。)

メッセージを読み終えてから、カードに印刷されている小さな文字を読むと、「Printed in Akita, Japan」とあった。
このカードは秋田県からはるばる海を超えてネパールへ渡り、再び日本へ帰ってきたのだった。

I君はオシャレな男ではあったが、肉体的にはタフな感じではなかった。
彼がなんとか生きて帰ってこられた場所なら、私も大丈夫だろう。
そう思い、私はそれからしばらくして、ネパールへと旅に出た

ネパールのみやげ物店では、手漉き紙のカレンダーなどがよく売られていた。

手漉き紙のカレンダー
画像引用元:Amazon

ヒンズー教の神様のポストカードもよく見かけた。
インドで印刷したものをネパールに輸入しているそうだ。
『ガネーシャ』『サラスヴァティー』のカードを買った記憶があるのだが、誰かに送ってしまったのだろうか、今はもうない。

ヒンズー教の神様『ドゥルガー』のポストカード
画像引用元:SUNDER KAMAL(スンダルカマル)

手元に残っているのは、インド人女優のポストカードである。

印刷物名:インド人女優のポストカード
サイズ:147 × 100 mm
採取場所:カトマンズ(ネパール)
採取年:1993年
詳細情報:S. S. Brijbasi & Sons/
59, Mirza Street, Bombay -400 003/
32/1, Fatehpuri, Delhi - 100 006

裏面には数字と女優の名前らしきものが書かれている。

(左)1959 Bhagyashree
(中)2205 Nagma
(右)2138 Divyabharati

せっかくの機会なので、ネットで調べてみた。

まずは左のBhagyashreeさん
日本語のWikipediaページもあった。
日本語では「バーギャシュリー」さん。
この3人の中では一番好きなタイプだ。

真ん中のNagmaさん日本語のWikipediaページがあった。
日本語では「ナグマ」さん。
かわいらしい感じに見えるが、今は政治活動家になっていた。

右のDivyabharatiさんは日本語のWikipediaページはないものの、英語のページがあった。
1993年4月(私がこのカードを買った数か月後)アパートの5階からの転落し、19歳の若さで亡くなっていた。
事故死と結論づけられたが、多くの陰謀説もささやかれたとのこと。

いきなり悲しい気持ちになってしまったが、このカードを印刷物として見たときの考察も書かなくてはいけない。

スキャナーで読み込むときにわかったのは、角が直角になっていないということだ。横の辺を水平の基準に合わせると、縦の辺が垂直にならない。
また、真ん中のNagmaさんのカードをよく見てみると、下のほうに別のカードの画像が入り込んでしまっている。
複数の原稿を「塗り足し」なしで並べて印刷し、紙や時間を節約しているのだろう。

日本の印刷会社でこんなことをやったら間違いなく叱られるだろうが、「Printed in India」と聞くと、「インドだからね」と許せてしまうから不思議である。
むしろ、このおおらかさを羨ましいと思う。

裏面の罫線も、ロットリングで手書きしたような感じである。
太さが不均一だったり曲がったりしているが、これは「あえて味を出している」というわけではなさそうだ。
こんなところも「なんだか大雑把でいいなあ」と思ってしまう。

左上に女優の名前。罫線はいかにも手書きっぽい。

典型的な観光地の絵葉書、という感じのカードも買った。

印刷物名:ネパールのポストカード
サイズ:105 × 147 mm
採取場所:カトマンズ(ネパール)
採取年:1993年
詳細情報:N-1064/ARTCARD HIMALAYA/
PILGRIMS BOOK HOUSE, THAMEL, KATHMANDU/
PHOTOGRAHY: JOHN EVERINGHAM/

飛行機がカトマンズの空港へ着陸するときに見える風景は、まさにこんなふうだった。
私はまた職業病で「写真と罫線の間隔が左側だけ狭いなあ」と瞬間的に気になってしまうが、ネパールの人がそんなことを聞いたら、そんなつまらないことを気にするのかと大笑いするのかもしれない。


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