5Gが変えるARバトルの未来
こんにちは、Graffityの森本です。普段は私たちが「ARバトル」と呼んでいるARシューティングゲームを開発しています。今回は、5GがARバトルの未来をどのように変えるのかについて書きたいと思います。
5Gと4Gの違い
まずは、2020年春から本格開始すると言われている5Gの特徴をおさらいします。特徴は大きく分けて3つあり、通信速度アップ、遅延の低減、そして、同じエリアでの同時接続台数の増加です。
1つめは、通信速度の向上です。5Gは4Gと比較すると10倍になります。国内で主流であるLTEは下り325.1Mbps、上り86.4Mbpsです。5Gでは、最大通信速度が10Gps (10,000Mbps)なので、LTEと比較すると約30倍〜100倍になります。例えば、容量3GBの映画をダウンロードした場合にかかる時間は、LTEで約1.3分、5Gだとたった2秒台となります。
2つめは、遅延の低減です。4Gの場合はリクエストに対する反応速度が数十msですが、5Gだと一桁台になります。通常オンラインゲームでは30ms以内の反応速度が適しているとされ、FPSやTPS、格闘ゲームなどよりリアルタイムさが求められるオンラインゲームにおける応答速度の速さはさらに低い15ms以下が求められます。5Gがあれば、これまで以上に遅延がなく、どこでもオンラインゲームを楽しむことができます。
3つめは、同じエリアでの同時接続台数増加です。簡単に言えば、一つの基地局で同時に通信できる端末の台数が増えるということです。今後日本の5Gの帯域は、3.7GHz帯・4.5GHz帯・28GHz帯の3つの利用が想定されており、既存の電波の周波数帯域と比較すると、波長が長く直進性が高くなります。つまり、回折がしづらく、1つの基地局でカバーできる面積は少なくなってしまうのですが、1つの基地局で同時に扱える通信台数は増えるというイメージです。
5Gの普及について
ひとつの基地局における5Gのカバー範囲が狭いことから、通信会社は多くの基地局を建設しなければいけません。つまり、現状では5G開始と同時に一般まで一気に5Gサービスが普及するということはありません。特定のエリアから5G利用が開始され、全てのエリアがカバーされるには、今後数年かかると考えられます。
なお、KDDI株式会社は、今後2023年度末までに国内最多となる53,626局、基盤展開率93.2% にのぼる全国をカバーする5Gネットワークの展開を計画しています。
※出典:KDDI株式会社「5G商用基地局の設置開始」(https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2019/09/30/4035.html)
5GのユースケースとしてARが選ばれる理由
ここまで話してきた5Gの3つの利点と非常に相性がいい技術が私たちの開発している「AR」です。
ARと一口に言っても、様々な活用方法が挙げられますが、その一つが「ARグラス」を利用した体験です。「Nreal」や「Magicleap」を始めとするARグラスが2020年には本格的に販売開始され、「ARグラス元年になる」と言われています。しかし、ARグラスを一人一台持つ世界になるのは2024年から2025年と言われており、数年後の普及へ向けて各社がようやく動き出しはじめた段階です。2020年における5G・ARグラスの普及はあくまで特定のアーリーアダプターまでであり、数年後ようやく一般にまで伝播すると考えます。
ARグラスの主な体験は、空間の共有体験であり、その場で同時に空間を共有し、リアルタイムに通信することが求められます。3次元のARは他のアプリと比較して膨大なデータ通信の量を求められる一方で、リアルタイムに表示されるため遅延は許容できません。さらに同時に数百人〜数千人などが同じエリアで接続する可能性が高いため、AR技術の開発・運営を行う私たちにとって5G技術の普及は市場拡大の大きな一手となり、かなり期待できるものです。
5GによってARバトルはどのように変わるのか?
Graffityは「ARバトル」を提供する企業です。創業当初よりARで人と人の繋がり方を変えていきたいと考え、ゲーム性を利用したコミュニケーション体験にフォーカスしています。
そもそもARバトルとは、友だちや家族と複数人で楽しむARスポーツです。Graffityは2018年12月世界で初めてのARバトル、ARシューティングバトル「ペチャバト」をリリースし、1週間で1万DL、1ヶ月で10万バトルという結果を出すことができました。現在は2020年秋に向けて新タイトルとなるARシューティングバトル「HoloBreak」を企画開発しております。
5Gがあれば、私たちの開発するARバトルをよりリッチな体験にできると考えています。
まず、通信速度向上により、高度な3D表現を行うアプリの容量を少なくすることが可能になります。「通信速度が上がっても、アプリの容量自体は変わらないのではないか?」と思われるかもしれませんが、クラウド上に3Dモデルを置き、それを適宜5Gによってシームレスにダウンロードする形にすれば、アプリ自体の容量を減らすことができます。さらに、「アプリの容量」という概念から解放されることで、これまで以上に複雑な3D表現をすることが可能になります。例えば、ARバトルでのキャラクターや武器やエフェクトをより多様化させることも自由に行えます。
また、遅延が低減することで、「リアルタイムさ」を追求することが可能になります。ARバトルの場合、ユーザーはフィールドで身体を動かすことになりますが、現在の技術では自分が動いてもAR空間上の自分のマトや武器が動かないことが多々起こります。その場合、「避けたはずなのに相手からダメージを受けた」や、「狙った場所に攻撃が当たらない」といった負の体験が起こります。ユーザーとしてその体験は直感的ではなく、我々のARバトルの楽しさを最大限伝えられないことになります。遅延のない体験があれば、ARバトルをリアルタイムに楽しめることが可能です。
さらに、同じエリアでの同時接続台数が向上すると、多人数でのARバトルが可能となります。現在Graffityでは3vs3までの対戦プレイを提供しておりますはが、5Gを利用すれば、100vs100といった大人数でのARバトルも提供可能です。例えば、代々木公園のような場所や、街全体がフィールドとなり、AR版のFPSのような世界を作ることも可能になるのです。
5Gによって実現するARCloudとは?
最後に「ARCloud」と呼ばれる技術と5G技術を使用すれば、さらに高度な位置の把握が可能になるため、それについてもご説明できればと思います。
ARCloudとは、一言でいうと「現実世界に紐付くデータから3次元マップ情報をクラウド上に保存したもの」を指します。
※ARCloudの詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ARCloudは、GPSに代わる新たな位置情報システムとなりえます。GPSから、「Visual Positioning Service/System(VPS)」と言われるシステムに進化するのです。GPSは緯度・経度と方向の2次元の位置情報ですが、VPSでは3次元の位置情報が取得できます。GPSでは、ビルの1階にいても、2階にいても同じ緯度・経度になりますが、VPSでは1階、2階のどの階にいるのか、さらにフロアのどの方向へ動いているかまで正確にわかります。
ARCloudの技術では、リアルタイムかつ3次元で自分の位置を推定する必要があるため、5Gの通信速度向上と、遅延の低減が強く求められます。5Gが普及すると、どこでもARCloudを利用することができるようになり、自分の位置を3次元的に把握できます。また、ARCloudを複数人で利用すれば、互いの空間を共有できるため、先ほど説明した、同時に多くの人が参加可能なAR版FPSの世界の実現可能性が非常に高まります。
5G×ARバトルで共同開発するパートナー募集
Graffityは、2019年10月にバンダイナムコアクセラレータに優秀賞で採択され、12月14日・15日に大阪にあるエンタメ系バラエティスポーツ施設「VS PARK」にて「HoloBreak」の体験イベントを2日間開催しました。
「バンダイナムコアクセラレーター」とは、バンダイナムコグループが事業開発支援を行い、スタートアップとの共創による、新しい夢、新しい遊びの創造につなげることを目指すプログラムです。Graffityは、本プログラムに応募した200社超のうちから5社に採択され、現在バンダイナムコグループの支援のもと「HoloBreak」の開発・検証を行っています。
ARシューティング「HoloBreak」 12月14日(土) - 15日(日) 2日間限定開催
今後は、ARグラスを利用したARバトルに「HoloBreak」をアップデートしたいと考えています。ARバトルの体験をよりよくするためには、5Gの技術が必須となり、Graffityでは共同開発を行うパートナーを募集しております。
興味関心がある方は、ぜひHPよりお問い合わせください。
日本から世界へ、ARバトルを新しい文化にしていきましょう!