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オランダの性教育ざっくりまとめてみた

性教育について調べてみると、

オランダに住む10代の妊娠率は0.5%とアメリカの5分の1以下。同国は初体験の平均年齢も18.1歳と、北・西ヨーロッパ諸国の中で格段に遅い値を示し、体験やその後の性生活に対する満足度が高いこと。

また、「ダブルダッチ」といえば筆者が子どもの頃は2本の縄を使う大縄跳びの名称だったが、今はオランダで主流のコンドームとピルを併用する安全な避妊法を指す用語として、ティーンに活用されつつあり、同時に、オランダの若年層における性感染症への感染者も、欧米諸国の中で最も低い数か国のうちに入っているということ。

といった、質と効果から、様々な文脈で”オランダの性教育”は扱われます。

そんなわけで今回はオランダの性教育について扱っていきます✨

<目次>
4つの大事にしていること
Lente Kriebel(春のソワソワ)
実は、〇歳からスタートしている
中等教育以降とグラウンドルール
もちろん課題もある

4つの特徴

オランダの性教育には、大まかに4つの特徴があるといわれています。

①性や快楽をポジティブなものとしてとらえる基本的な価値観
②ゆえに包み隠さず早期から全て教える圧倒的な情報量
③家庭でも子どもの恋愛や性を肯定し、オープンに話しサポートする家族文化
④性教育を性知識で終わらせず、特に関係性の機能として理解し、自他ともに尊重する態度を養う機会として捉える視点。性的なトピックから、個人のウェルビーイング、親密性の構築、性的多様性をはじめとする共同社会に生きる人々の多様性について対話を深め、寛容な社会と幸福な個人を育てていく基本方針。

Lente Kriebel(春のソワソワ)

基本的な4つの特徴だけを聞いても、よくわからないとおもうので、全国の公教育で扱われている定番のプログラムを紹介していきます。

名前は「Lente Kriebel(春のソワソワ)」。
(Lentelriebelは本来、長い冬が終わって春がやってきた時に感じる、わくわくソワソワしてじっとしていられない興奮を意味する単語らしい。)

どんな内容かというと

全体的に明るくポジティブなストーリー展開のもとに性に関する知識や議論が展開される動画や、指導案、テキスト、プリントしてそのまま使える授業教材など豊富なリソースをもとに行われ、
動画においては、国営放送の教育チャンネルにあたるNPO ZAPPとの共同で、フレンドリーな女医が性教育の授業をしたり質問に答えたりするTV番組「ドクター・コリー・ショー」も活用されています。

※動画などの発行元は1960~70年代にかけて盛んになったフェミニズム運動の中で女性支援センターとして発足し、現在国内外で性と生殖に関する健康と権利をサポートする活動を幅広く行う団体「Rutgers」。
基本的には厚生労働省からの出資で性教育分野を運営しており、性教育の目的を「健康で幸福な成人の育成のための、若者のエンパワーメント」と定義し作成を行っているようです。

実は、〇歳からスタートしている

この「Lente Kriebel(春のソワソワ)」

4歳児クラスから授業が始められるようになっています。

例えば、自分にとって何が快で、何が不快なのか、振り返る授業。

水着で隠れるゾーンは自分だけのものなので、簡単に他人(たとえ両親であっても)に見せたり、触らせたりしてはいけない。ということを教えます。
ではどんな場面で、どんな人になら見せてもいいのか?

そして、不快な場合は「NO」と言っていいことを学び、言いづらい場合や言っても解決しない場合にどうしたらいいか考える授業。

時には先生が「あまり知らない親戚のおばさん」になって「あら久しぶりね、大きくなって!チューしていい?」と迫真の演技を見せ、自分だったらしたいか?したくない場合、代わりに何をオファーするのか?(握手、ハグ、ハイタッチなど)と考えるロールプレイなど。

日本で言う低学年/中学年に入ると、男女の体の違いや、既に形成され始める「ジェンダー意識」に関する話し合いもしているようです。

高学年に子どもたちの年齢が上がると、

「まじめな恋愛話」などを始め、セックスの前提となる「愛」の話をできる土壌を固めていける形に作られる内容が入り、

このころから少しずつ、男性を好きな男性や、女性を好きな女性、見た目は男性でも頭脳が女性の人がいること、地域や文化によって性のあり方も様々なことなど多様性の話も織り込まれ、

この年齢の子どもに高まるピア・プレッシャーを考慮して、性の発達には個人差があること、性や恋愛に関することは全て自分の選択であることを前提として敷いていくようになるようです。

ちなみに「性機能」については11歳に教えているようで、日本よりも早いことがうかがえます。

中等教育以降とグラウンドルール

初等教育で私たちが想像する「性教育」は終わってしまっているのは、読んでいるみんなもわかったと思います。

では、中等教育以降でどんな性教育をしてるんだろうかって話になってくるわけですよ。

調べてみると、各学校で生徒のレベルや課題に合わせて選べるようテーマごとに膨大な教材が用意されているようです。

内容は、恋人との関係性、妊娠と出産、家族計画、アイデンティティ、性同一性のゆらぎ、ジェンダーと社会、障碍者の性、恋人との行為の線引きをどう決めるか、性的魅力、インターネットにおける性の取り扱い、プライバシーの問題など、性に関係のある多様なトピックについて理解を深めていくことが中心になっていきます。

中学年の「恋愛話」で一度触れたセクシュアリティの多様性に関しても中等教育で改めて振り返り、LGBTQ+についても学ぶ。ここでカミングアウトする子も少なからずいるようです。
多くの人が前提として、知識や受け入れる要領を持っている環境であれば、たしかにカミングアウトしやすいのかもしれない。

こんな話をして、子どもが興奮して大騒ぎしたりしないのだろうか。
と考えてしまう人も読んでいる人もいるでしょう。
まぁ、日本の性教育についての議論においても、出てくる問いではあるのですが…オランダにおいても同じような議論はあるようですが、現地の教育者のインタビューではこのように回答されていました。

「先生によりますが、授業を始める前に、これから話し合う内容がみんなのウェルビーイングにとってとても大切なトピックであること、少し恥ずかしいと感じる人もいるけれどそれも自然な感情であること、お友達の発言や意見を尊重することなどグラウンドルールを確認してから始めるケースもある」
「でも先生がオープンに真剣に話をしていることで、最初は上ずっていた子もだんだん真剣に話すようになる」
実際、先生がオープンに、自己肯定的に性について語る姿がモデルになるんです。
もちろん、「先生もセックスをするの?」と意地悪な質問をする子がいなくはないが、そういう場合は「先生は大人で、子どもがいるけれど、どう思う?」と考えさせれば学習を振り返る機会になるし、あまり個人的な質問をしてきた子に「それはプライバシーだから言わないね」と断れば、子どもが将来同じように侵入されそうになった時のお手本になる。
つまりは先生や周りの大人の器量に関わるところが大きいんです。

もちろん課題もある

すごくいいものに見えるオランダの性教育にも課題は存在している。

1つ目は、”性”にまつわるトピックに付きまといがちな、保守的な人々による「明け透けすぎる」「自分の子どもにまだそこまで知ってほしくない」という批判。

特に、一般のTV番組として放映された先述の「ドクター・コリー・ショー」は、一部の保護者から激しい批判もあった。
日本でいえはNHKのEテレで昼間から陽気な女医が折り紙で作った女性器を手にマスターベーションの仕方を解説しているようなものだから、確かにオランダとはいえ快く思わない保護者がいても不思議はないですね。

また、移民の急増により多様な文化や宗教の背景を持つ子どもが教育現場にも増えたこと。
寛容なオランダ的バリューを教える中で、多様な考え方の存在も認める必要があるわけで、先生は集団指導と並行して生徒ひとりひとりの境界を明確に引くスキルが求められるだろう。

2つ目は、オランダの教育の基本を前提としてデザインされたこの性教育は、ユニバーサルデザインでは決してないということ。

特に性的欲求や機能を100%ポジティブにとらえ、だからこそ大切に扱うというアプローチ。

最後に

知れば知るほど「前提からして全く違う…」と感じた人がたくさんいることでしょう。
でも、今の日本には、性も、ひいてはあなた自身も、とてもいいもので大切なものなんだよ、というメッセージが足りていないように思うので、今回は扱ってみました。


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