見出し画像

さわやかな香り

香りは好きだけど香水のことはよくわからないという方々に「どんな香りが好きですか」と尋ねると、多くの方が数秒唸って「さわやかな香り」と答える。
それを聞いた私は、やはり数秒唸って「さわやかですかぁぁぁ…」と途方に暮れる。

香水がお好きな方ならわかっていらっしゃると思う。
「さわやか」と言っても、柑橘系なのか、フローラルなのか、フルーツなのか、あるいは森か海か、レシピによってどれも「さわやか」になりうる。
しかし、ノート(香調)というものを知らない彼・彼女たちは、「さわやか」とひと言で好みを表すのだ。

「さわやかな香り」ってなんだろう…

「さわやか」という単語は、英語でも表わしにくいのでは?と私は思っている。こちらを読むと確かにそうである。

日本語としての「さわやか」は爽快の爽で「爽やか」と書き表すので、気分が快い、さっぱりしている、すっきりしている、すがすがしいということだろうか。

実に面白いことに、Guimauve de Nöel 31というグルマン系(お菓子のような甘い香り)香水を「さわやか」と表現した方がいた。
それを纏っていた時は、冬の冷たい風が強く吹いていて、空気もとても乾燥していた。そんな日に、私の首元から香る美味しそうな甘い香りを「さわやか」と表現したのだった。

うーむ、ますますわからぬ…

香水売り場でウロウロしていると、販売員が声をかけてくれる。
「何か香りをお探しですか?」
ある程度香水のことを知っている人なら、具体的に香水名を挙げて「○○を探しています」とか、あるいは「ウッディ系で木の香りが強くなくグリーン寄りで少しフルーティな感じのある香り」などと表現することができるが、「さわやかな香り」という注文から客が欲する香りにたどり着くまで、販売員はなかなか大変だろうなと想像する。

言葉にするのが難しい香りの世界。
けれど、言葉にできないいろいろな感覚や感情が引き出されるのが香水だ。
私は今日も心の中で、香水を作っている人や売っている人に、「頑張ってね」とさわやかな声援を贈っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?