心地のよい身体を纏う

 黄色い薄手の五分丈ニットと黄緑色の石がぶら下がったピアス。「New arrivals」って書いてあった。新しい季節を待つのは、自然で心地よい。それを着て、歩いている「わたし」を想像して気持ちが軽くなるかもしれない。その季節がやってきたら、値下がりするかもしれないそれを購入する価値はそこにあると思う。

 今、まさに身にまとっているこの身体に、そんな希望がもてたら良いなと思う。先日、接骨院を受診した。なぜなら、肩凝りが酷いのと、首が痛い、そしてお腹が常に張っている感じがしたりして、痛い。そして、眠りも浅いから受診した(すべての症状がいつものことで、我慢しきれないほど辛かったわけでもなく、何とかなるかもしれないという切なる希望で受診)。すでに通院もしてみてもらっているから大丈夫かもしれないけれど、それでもしんどい時や疲労感があるときは、鍼灸院とかマッサージとかに行ってみる。ときには、エステにもいってみる。気になることといえば、年末年始に右の卵巣に7㎝の成熟嚢胞性奇形腫 (皮様嚢腫)があり、手術と入院をしたこと。特に今のところ問題はないのだけれど、なんかその部分が痛いような張っているような気がして(気がしてるだけかな?なんて思いつつ毎日暮らしていて)、その部分が気になっていた。病院でもそれはある程度は仕方のないことだと言われた。でも、感覚的にどうにかできるはず!と思っていた。

 その接骨院の看板が濃いピンク色で可愛かった。すぐに、わかってここだ!と思った。少し、待合で待っていると、目の前に本が何冊かあって福岡伸一の「動的均衡」や「すべておまかせ」など、興味のある本が並んでいた。先生に呼ばれて中に入ると、空気が澄んでいたから安心した。お腹が張っている感覚をその先生は「左に引っ張られて違和感があったのね」と、まさに言葉にしてくれた。「背筋伸ばす、これダメね!」左に引っ張られていて常に右側の腹部が休憩できてなくて、痛むから「こうやって、右を伸ばさないように、座るときはふわっとたるんと座る。これ、今日の宿題ね!」と先生が言った。お腹は副交感神経がたくさん通っているから、右がずっと突っ張っていたら身体全身が休まらないらしい。わたしは、その座り方を1回練習してみた。「上手!」と先生。横を向いて眠るときの身体の体勢も教えてもらって、とても心地良くて、自然だった。そして、何となく、わたしはぼんやりと思った。

『痛いところ、大切にしていいんだ。大切にしたかったけど、大切にする方法知らなかった。無理しなくていい。がんばらなくていい。』

 帰り道、電車でその状態で座席に座ると、驚くべき楽さで気持ち良かった。痛くないから楽というのもあるし、身体を大事にするわたしの捉え方が変わったことが伝わったから思ったのかもしれない。心も少し変わったような気がした。いつも纏っている肉体に休日を!

 その日の晩、よく眠った。
 そして、次の日もよく眠った。

 心地よい毎日があって、それがただ、うれしい。手術後の立って歩くことの苦痛と幸せを思い出した。毎日暑くて、死にそうだけれどもう少しくらいは生き延びられるかもしれない。

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