君はこんなものを仕事にするのか4
バイアウト
商業施設や、ランドマーク施設、または電気や自動車のメーカーから、高級ブランドまで、直接依頼をうけるか、広告代理店経由で仕事の依頼を受けるか、当社はどちらかからの方法でお仕事を頂戴しています。
ある雑誌の取材からテレビや雑誌の取材を受けるようになり、会社の業界での知名度も上がっていった。
売上も関東方面が約5割、関西も5割と、営業範囲も広くなった。
仕事がどんどん入ってくると、自分の知らない現場も増え始め、嬉しくもあり、逆に寂しくもなり始めた頃だった。
この頃からいろいろな情報が耳に入ってくるようになり、また、いろいろな技術やサービスをいち早く目にすることができる立場になってきていた。
IT系のベンチャー社長とも繋がりが増え、VCの話をよく聞くようになった。
羨ましいなぁ
初めVCの話を聞いたとき、率直な感想だった。
売上はある程度まできていたが、事業内容が、まだまだ銀行から理解されるところになく、長期借入が出来ずに、したい事、チャレンジしたいことも少しずつ自力で取り組むしかなかった自社からすると、
他人資本でレバレッジを効かせて、急成長ができる彼らに心底、嫉妬した。
まず資金繰りの、あの特有のチクチク胃が痛む苦痛から解放されている彼らに嫉妬した。
でも出口戦略、つまりイグジットはどうなんですか?と聞くと、
「ま、売却っすね」
と、軽く口から出てくる彼らにも驚いた。
当日、二つの会社のオーナーだった自分に照らし合わせると、その時、会社を売却ということは考えも及ばなかった。
会社の売却か
僕は二つの会社のオーナーだったが、正直、二つはしんどかった。
どちらかの会社を売却するとしたらどうだろう。
売却もあり得るよなと、頭をよぎった。
未公開の小さな会社を売却できるのか?
その時はまだ、具体的にどうすればいいか分からなかった。
訴訟手続き
もう一つの関連会社では、慌ただしくなっていた。
再任しなかった取締役が退職し、暫くして、競合他社の執行役員に就任する噂が耳に入った。
同業の先輩からの情報だった。気をつけろと。
再任しなかった取締役は元々、別の会社の人間だったが、社内の行き詰まりで、会社を買ってくれないかと打診してきて、買収した先の人間だった。
彼とは別にもう一人、当日買収した先の人間が社内にはいた。
同業の先輩からはそのもう一人にも噂があるということだった。そいつまだ辞めてないの?そいつもその競合他社に最近頻繁に出入りしていると聞いてるよと。
すぐに社内で、取締役を集め、会議をした。
大丈夫ですよ。信用しましょう。疑うのは良くないですよ。
そんな意見だったが、その、もう一人の彼に、僕はおかしな雰囲気を感じていた。
要注意だ。
競合他社に移ったという情報はそれからすぐに手に入った。
一部の取引先が移動しはじめた。その動きからすぐに訪問し事情を確認したが、皆、別の理由を話すが目が泳いでいたので、その情報が正しいことに確信した。
Facebookで、競合他社の社長と繋がっていたが、
書き込みでお祝いしていることも知った。
その理由も。
夜、弁護士と相談した。
訴訟の準備に入った。幹部は徹底的にやりましょうと盛り上がっていたが、一人だけ無言の人間がいることに僕は気づいていた。
内容証明を発送し、戦線布告した。
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