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「核となる価値観と概念」の変遷を振り返れば時代の変化が見える

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークにおいて、「核となる価値観と概念」は、組織運営の指導原理、行動規範として使うことができるものです。
 「核となる価値観と概念」は、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークと呼ばれる前、マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)審査基準書の時から存在し、その11個の項目およびそれぞれの意味するところは 、 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク改訂の度に見直されてきました。
 2015-2016年版で大きな 見直しが行われ、現在もそれが引き継がれています。2021-2022年版では、次の11の価値観が提示されています。

核となる価値観と概念(2021-2022年)
システム的視点
先見の明のあるリーダーシップ
顧客に焦点を当てた卓越性
人を大切にする
俊敏性と回復力
組織の学習
成功とイノベーションに焦点を当てる
事実に基づくマネジメント
社会貢献
倫理と透明性
価値と結果の提供

 その中でも、先頭に位置する価値観が一番重要なものとすれば、その変化を追うことで、現在の価値観の位置づけの理解を深めることができます。

 MB賞審査基準書の時代、当初、それは「顧客主導の品質」でした。MB賞創設当初は「品質」が重要なテーマであり、それが「顧客主導」、すなわち「品質はお客様が判断する」ものということの理解が重要でした。
 2000年版での改訂では、それが「先見の明のあるリーダーシップ」に代わりました。組織の競争力強化において、リーダーシップのあり方に、より焦点があてられるようになりました。
 そして2015-2016年版での改訂では、「システム的視点」が最も重要な価値観となりました。「システム的視点」は、ミッションを達成するために組織を統一された全体として管理することを意味しています。さらに、計画、プロセス、手段、行動が一貫していること、部分が完全に相互接続され、統合され、相互に有益な方法で連携していることが求められています。
 2019-2020年版ではさらに、ビジネスエコシステムの概念がボルドリッジ・フレームワークに取り込まれ、組織全体だけでなく、自組織を含むビジネスエコシステム全体へと、その意味が拡張されました。言葉は同じでも、中身が変化していました。組織が独自の強みを磨いて勝負していた時代から、ビジネスエコシステム全体で価値を提供する時代に変わったとも見ることができます。
 「先見の明のあるリーダーシップ」は2番目になりました。そして、その次の「顧客に焦点を当てる」「顧客主導」に代わって入ったものです。お客様の声を聴いてそれに従って製品・サービスを提供することから、お客様を徹底的に観察しお客様も気づいていない新たな価値を組織が提供する。iPhoneなどは、その好例です。それが出るまでは、お客様はそれが欲しいとは言わなかったのです。ある意味、主体が提供側である組織に戻ってきたと言えます。
 そのほか、当初「社員重視」だった項目はその後パートナーやボランティア、さらに関係するすべての人々にまで拡張されて「人を大切にする」になりました。また、「社会的責任」「社会貢献」にその求められる範囲が拡大されました。
 そして2021-2022年版では、レジリエンス(回復力)の概念が価値観に組み入れられました。コロナはそのきっかけですが、相次ぐ甚大な自然災害なども各地で起きており、まさにいまの時代に必要な概念です。

 このように、時代に合わせてボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの根底にある価値観、すなわち組織運営の指導原理、行動規範が進化してきました。

★★

注:タイトル図は2019-2020年版です。「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」からの引用です。

筆者らGQFが翻訳した「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。英語版とページ、形式を合わせてあり、対訳版としてもご欄いただけます。


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