システムを理解する
システム的視点(SYSTEMS PERSPECTIVE)は、経営において最も重要な価値観の一つです。
また、リーダーシップシステムに始まり、統治システム、パフォーマンス管理システム、従業員の学習育成システム、情報システム、業務システムなど、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークは様々なシステムを包含しています。
リーダーシップシステムや業務システム、また、体系的(SYSTEMATIC)という語は、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの主要用語集にも定義されていますが、「システム」という語そのものは一般用語として(定義しないで)ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの中で使われています。
システム的視点や体系的の意味をより深く明確にするために、「システム」そのものの定義を探していましたが、デミングに一つの答えがありました。
デミングは、「デミング博士の新経営システム論」という書で、彼が変革に向けて必要だとしている「深遠なる知識のシステム」について紹介するために、その前に「システム入門」という章をおいて、システムについての「正しい理解」を促しています。
システムとは何か システムとは、目的を達成しようとして協力する、相互に依存しあう複数の独立した構成要素の結合組織(ネットワーク)である。
(「デミング博士の新経営システム論」第二章より引用)
そしてシステムの条件として次の点を挙げています。
・システムには目的がなくてはならない(目的がなければシステムは存在しない)。
・システムの運営管理には、システム内のすべての構成要素間の相互関係や、そこで働く人々に関する知識が求められる。
・システムは管理されなければならない(システムは自らを管理することはできない)。
(「デミング博士の新経営システム論」第二章より引用。箇条書きは筆者)
そして、望ましい目的として、「ここで提案するあらゆる組織のための目的は、株主、従業員、供給業者、顧客、地域社会、環境などのいずれもが、長期にわたって利益を得ることである」とし、「近視眼的発想のため、日々生き延びることしか目的になく、将来への考えをまったく持たない会社もある」と戒めています。
また、反例として「システムの破壊」についても例を挙げて説明しています。
その一つの論拠として、「すべてのものが最高であっても十分たりえない」として、「組織のさまざまな構成要素がすべて最適化されたとしても(それぞれが自らの利益を求め、それぞれが主役であろうとするなら)、その組織自体は最適化されないであろう」と説明しています。
システム的視点の意味するところの理解に助けになります。
システム的視点(SYSTEMS PERSPECTIVE)
システム的視点とは、ミッションを達成するために組織のすべての部分を統一された全体として管理することです。
(出展:ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】)
蛇足ですが、デミングは同書で、ビジネスエコシステムの概念も先取りしています。
システムには競争相手が含まれている マーケットを拡大し、まだ満たされていないニーズへの対応を目的とし、互いに結びつき協力し合いながら競争相手同士で努力していくことは、全体としての最適化に良いことである。競争相手同士の焦点が、顧客により良いサービス(より低価格、環境保護など)を提供することであれば、顧客の誰もがわれ先にやってくる。
(「デミング博士の新経営システム論」第三章より引用)
市場で競争し合ってパイを奪い合うのでなく、競争相手と一緒にマーケットを拡大していくことに力を注げば、共に繁栄することができるという考え方です。
ドラッカーの言う「顧客の創造」とも共通しています。
※「デミング博士の新経営システム論」は、The New Economics for Industry, Government, Education (Second Edition), W. E. Deming, 1994 の日本語版(NTTデータ通信品質管理研究会訳、NTT出版刊)。絶版のため、ボルドリッジの理解に役立つ点はここに残しておきます。
※「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。
下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。英語版とページ、形式を合わせてあり、対訳版としてもご欄いただけます。
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