見出し画像

VUCAの時代の中期計画

 先日、3月まで桜美林大学大学院で教授をされていた高橋義郎氏主催の「高橋マネジメント研究所10周年感謝セミナー」があり、基調講演で日本総研の坂本謙太郎氏(株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門シニアマネジャー)から、「中期経営計画は作らなくて良い~マネジメントの限界」という刺激的なタイトルの報告があり、興味深く聴講しました。

 コロナ禍で社会や経済の様相は一変しましたが、それ以前からも、時代はVUCAと言われ、組織の置かれたグローバルな競争環境は絶え間なく変化し、ITを中心とした革新的な技術や製品の投入、経済的な激変や圧力、大規模な気象事象、あるいは、社会的な要求が引き金となって、破壊的な事象がより頻繁に発生しています。
 こうした環境において、3年先、5年先の将来の予測は困難を極めており、様々なデータを集めても、正確な予測は難しい。であれば、こうした不確実な予測に基づいた計画の立案には意味がないのではないかという主張です。

 目標年度を定めた「第x次五か年計画」というような計画を立てて実行するのは、とても厳しい時代になりました。しかしながら、長期計画なしには、時間のかかる設備投資や人財の育成でそれに備えることができません。

 将来予測の精度を少しでも高めようと、データを集めて分析に時間をかけてということでは、知識経営の大家、野中郁次郎先生にまた、「オーバー・アナリシス」「オーバー・プランニング」「オーバー・コンプライアンス」と、たしなめられてしまいそうです。

 会場とのやりとり(オンラインでしたが)の中では、中期計画を毎年見直していき、長期的視点から次の1年に何をやるかを明確にして実行する、ローリング方式がよいのでは、という意見なども出されました。

 何のために中期計画をつくるかを改めて考える機会となりました。

 時代の変化に迅速に対応する俊敏性を組織の能力や強みの一つとして備えることも重要です。しかし目の前の変化に対応するだけでは、何を目標に経営を行っているかがわからなくなります。結果、売上や利益を目標とすることになりがちです。

 こうした組織は、ボルドリッジでは「場当たり的」と呼ばれる組織と評価されるかもしれません。

 今日の業績は、2年前、3年前に打った手が、ようやく実を結んだもの。そうであれば、2年後、3年後にどうありたいかを描いて、そのためにいま何をしなければならないかを検討します。それをプロセスに落とし込んだものが、中期計画と言うことができます。

 ミッション、ビジョンが明確な組織であれば、その達成に向けて、いま、そして次の一年に何をするかを検討できます。

 いわば、未来がどう変わるから、ではなく、未来をどのように変えていくか、によって、計画を立てていきます。
 揺れ動く未来に合わせて経営するか、自ら描いた未来に向けて経営するか。どちらの経営を目指しますか?

 ボルドリッジは、イノベーションを起こせる組織づくりです。イノベーションは、いままだない新しい未来をつくることです。ボルドリッジが目指す組織では、中期計画は十分に機能します。

★★

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダーは日本語で読めます。
 「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。英語版とページ、形式を合わせてあり、対訳版としてもご欄いただけます。

 ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダーでは15ページに4段階で組織の成熟度が示されています。その最初の段階が、「場当たり的」です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?