チェンジ・リーダーの条件
「チェンジ・リーダーとは、変化を機会としてとらえる者のことである。変化を求め、機会とすべき変化を識別し、それらの変化を意味あるものとする者である。」
これは度々引用されるP.F.ドラッカーの言葉です。「チェンジ・リーダーの条件」という書籍もあるようですが、私は、「明日を支配するもの」(上田惇生訳、1999年、ダイヤモンド社刊)で読みました。
この文章だけを読むと、組織のリーダー、人の特性として「チェンジ・リーダー」になることが求められているように聞こえます。そして実際に、チェンジリーダー育成セミナー、チェンジリーダーシップ研修などが開発されてきました。
しかし、少なくとも「明日を支配するもの」では、その前の一文を併せて読むことで、これはリーダーという人のことではなく、組織のこと、組織に求められていることだとわかります。
したがって、このチェンジ・リーダーとなることが、あらゆる組織にとって、二十一世紀の中心的な課題となる。チェンジ・リーダーとは、変化を機会としてとらえる者のことである。変化を求め、機会とすべき変化を識別し、それらの変化を意味あるものとする者である。
(「明日を支配するもの」第3章冒頭より引用)
言い換えれば、「チェンジ・リーダーとは、変化を機会としてとらえる組織のことである。変化を求め、機会とすべき変化を識別し、それらの変化を意味あるものとする組織である。」と言っているのですね。
(「チェンジ・リーダーの条件」(上田惇生訳、2000年、ダイヤモンド社刊)の方は見ていないので、少なくとも「明日を支配するもの」ではとなります。)
これはまさにボルドリッジで言っていることと同じです。
変化を求め、機会とすべき変化を識別し、それがインテリジェントリスクかどうかを判断し、インテリジェントリスクであれば、それを追求します。それがイノベーションを生み出す機会となります。
ボルドリッジでは、イノベーションを生み出す組織となるには、継続的改善の文化が必要だとして、それを組織に定着させることを目指しています。そのために、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークでは、審査基準として質問集を準備し、組織はその質問に答え、その答えを自ら評価し、改善点を見つけ出して改善するというサイクルを繰り返します。
継続的改善の積み重ねが、イノベーションにつながるとしています。
改善は自らを変えていくこと、自ら変化を起こすことです。それが定着することで変化を許容する組織となります。変化に抵抗する文化がある組織ではイノベーションが生まれません。
ボルドリッジでは、まず継続的改善を重視しますが、ドラッカーは「明日を支配するもの」で、イノベーション、継続的改善の前にもうひとつ体系的廃棄をチェンジ・リーダーの条件に挙げています。
「体系的廃棄(Organaized Abandonment)」とは、「変化を可能にするための仕組みとしての廃棄」であり、組織において、もはや成果を上げられなくなったものや、貢献できなくなったものに投入している資源を引き上げることです。
この「体系的廃棄」の第一の段階は、あらゆることについて、すでに行っていなかったとして、今これを始めるかを問うこと。そして、答えがノーであれば、次に、それを直ちに止めるかどうか検討し、行動します。
点検の対象はすべて、すなわち、あらゆる製品、サービス、プロセス、市場、流通チャネル、顧客、最終用途などです。
製品、サービス、プロセス、市場の寿命が、まだ数年はある、と言われるようになった状況では、廃棄が正しい行動であると、延命に力を注ぐことに否定的な考えを示しています。
チェンジ・リーダー(組織)の第一の条件が、体系的廃棄。第二の条件が、継続的改善。第三の条件が、成功の追求。そしてその次に、イノベーションが出てきます。
成功の追求、イノベーションも、ボルドリッジでは、基本的価値観と概念のひとつとして重視しています。
ドラッカー ボルドリッジ
1.体系的廃棄 Organized abandonment
2.継続的改善 Organized improvement Continuous improvement
3.成功の追求 Exploiting success Focus on success
4.イノベーション Innovation Managing for Innovation
★★
「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」を一緒に作った田中典生氏(㈱脳力開発センター代表)が、最近「明日を支配するもの」の再読をしきりに勧めるので、読み直しています。特に氏が勧めるのは第二章ですが、第三章が最初に目に留まりました。
・
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?