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デジタル的に成熟した組織の6つの特質

 ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」組織経営のフレームワークです。
 ボルドリッジは2年ごとに改訂され、時代の変化に対応して、最新の実践を取り入れています。

 最新の、とはいえ、ボルドリッジには未だに出てこない言葉があります。その一つが、DX、デジタルトランスフォーメーションです。

 ICTの活用が進んでいる米国では、いまさらDXが話題の中心ではない、ということかと思っておりましたが、2022年1月31日付で、HBSから次のようなタイトルの調査結果の報告がありました。

研究とアイデア
デジタルトランスフォーメーションはどこにあなたを連れて行くことができますか?1,700人のリーダーからの洞察

RESEARCH & IDEAS Where Can Digital Transformation Take You? Insights from 1,700 Leaders; by Linda A. Hill, Ann Le Cam, Sunand Menon, and Emily Tedards)

 少し中身を見てみましたが、そこに示された「デジタル的に成熟した組織の6つの特質」がボルドリッジと非常に親和性があるようです。

 デジタル的に成熟した組織の6つの特質
1.顧客の親密でダイナミックな理解
2.データ主導ではなく、データに基づいた文化
3.挑戦者の考え方と混乱させる意欲
4.分散型の意思決定と共創
5.継続的な実験と学習
6.倫理的な意思決定と積極的なガバナンス

 ボルドリッジの基盤となっている「核となる価値観と概念」と比較するとよいでしょう。

核となる価値観と概念
・システム的視点
・将来を見据えたリーダーシップ
・顧客に焦点を当てた卓越性
・人を大切にする
・俊敏性と回復力
・組織の学習
・成功とイノベーションに焦点を当てる
・事実に基づくマネジメント
・社会貢献
・倫理と透明性
・価値と結果の提供
(ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】より引用)

1.顧客の親密でダイナミックな理解
 これは「顧客に焦点を当てた卓越性」そのものです。デジタル的に成熟した組織では、より多くのより良いデータが利用可能になり、企業はかつてないほど顧客を知ることができます。同様に、顧客の方でも、インターネットによってほかの人のレビューや価格を簡単に閲覧できるようになりました。こうしたことから、デジタル的に成熟した企業は、ユニークで、多くの場合、よりカスタマイズされた、エンドツーエンドの顧客体験を提供することを目指しています。

2.データ主導ではなく、データに基づいた文化
 これは、「事実に基づくマネジメント」です。
 デジタル的に成熟した組織は、多くのデータを採取し、それを使用してより適切で迅速な意思決定を行います。しかし、データは意思決定を支援しますが、意思決定は現場にあります。
 デジタル的に成熟した組織では、従業員がデータに簡単にアクセスできるようになっていること、従業員のワークフローとプロセスに統合されていること、従業員は、年功序列、経験、年齢に関係なく、データの解釈方法を知っていることが求められます。

3.挑戦者の考え方と破壊に対する意欲
 このタイトルでは理解が難しいかもしれません。デジタル的に成熟した企業は、たとえこれがコアビジネスを根本的に再考することを意味するとしても、従業員に現状の変革に挑戦することを奨励します。
 組織内の全員が、顧客、サプライヤー、および社外の他の利害関係者からのシグナルを聞く責任があります。彼らは、ビジネスのあらゆる側面に疑問を投げかけ、顧客に価値を創造するための新しい方法を提案する権限を与えられています。
 これは「人を大切にする」に含まれる従業員への権限移譲です。期待を示し、実現することに対する責任も与えます。

4.分散型の意思決定と共創
 デジタル的に成熟した組織のリーダーは、機能的なサイロや組織レベルを超えて、さまざまなスキルセットを持つ個人を集めて問題を組み立て、解決することを考えています。このためには、現場での意思決定を尊重する文化が重要です。
 従業員を「フォロワー」よりも「協力者」と見なす考え方は「人を大切にする」に含まれています。また、エコシステムまで含めて、そこに属するメンバーとの共創を重視しています。

5.継続的な実験と学習
 これはまさにボルドリッジが核とするところです。これが定着することを重視しています。核となる価値観と概念では「組織の学習」に当たります。
 デジタル的に成熟した組織は、デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル手法を活用してイノベーションを推進します。
 ボルドリッジは特定の手法を推奨することはしません。ボルドリッジに、デザイン思考は出てきませんが、リーン、アジャイルについては、事例として登場します。

6.倫理的な意思決定と積極的なガバナンス
  ボルドリッジでは、「倫理と透明性」を重視しています。ガバナンスはリーダーシップの重要な要素であるとともに、核となる価値観と概念にある「社会貢献」は社会的責任を包含しており(もとは「社会的責任」であったものが、社会の変化に対応した改訂に伴い、拡張された)、ガバナンスについても言及しています。
 デジタル的に成熟した組織においては、データの収集やその活用において倫理的な配慮が特に求められます。

★★

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。英語版とページ、形式を合わせてあり、対訳版としてもご欄いただけます。




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