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タイさんの取材ヨレヨレ日記⑨ たまには私もスクープ

スクープを抜かれた話、ライバルに大負けした話を書き連ねてきました。でも、私だって大きなスクープをした経験はあるんです。長く記者をやっていましたからね。

世界でもトップクラスの規模と売り上げを誇る某企業を取材していた時です。その会社が1世紀以上にわたって続けてきた主力部門とはまったく別の分野へ新たに乗り出すという情報をキャッチしました。事実ならば、日本の産業構造そのものの転換につながる大ニュースです。

その会社の幹部たちや関連する省庁のトップたちに連日、夜討ち朝駆けしました。「情報は正しい」との感触を得た私は、朝刊の一面トップでそのスクープを放ちました。この新規参入の経済的な意義や今後の展望、世界市場への影響などについてもたっぷり書いて、解説記事として載せました。

もちろん記事の内容には絶対の自信があります。ところが問題の企業ではまだトップたちによる最終決定をしていませんでした。私の記事の正しさを認めて正式に公表するまで、かなりの日時が経過したんです。

公表を待つ間、それはそれは辛いものがありました。一面トップで書いた記事が万が一誤報だったら、私の記者人生はジ・エンド。長く険しい「その後」が待っています。

ようやく記事の正しさが正式に認められた時は、一気にストレスが解消。肌や髪の毛のツヤが良くなった気もしました。鈍い胃痛に悩まされていたのがウソのように食欲もどんどんわいてきました。

そうすると現金なもので、上司や同僚たちの私を見る目も様変わりします。「こいつ、本当に大丈夫か?」と疑いの眼で見られていたのが、その日を境に一変。「おめでとう」「すごいスクープだったね」と絶賛の嵐です。

「勝てば官軍」

この言葉をしみじみとかみしめたことを今もくっきりと覚えています。

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