法改正を先取り!『男性の育休』著者 天野妙さんとの男性育休360度ディスカッション(イベントレポート)
グロービス・ワーキングペアレンツクラブ幹事の原田です。
2021/5/7(金)に開催した
「法改正を先取り!『男性の育休』著者 天野妙さんとの男性育休360度ディスカッション」
のイベントレポートをお届けします。
タイトルにある法改正(育児・介護休業法と雇用保険法の改正法案)は、すでに衆議院に送付され、今国会で成立する見通しです。
今の男性育休の現状はどうなっているのか?この法改正が実現することによって、何が変わるのか?を、具体的にお話しいただきました。
天野 妙さん
合同会社Respect each other 代表(https://www.respect2eachother.com)、働き方改革&女性活躍推進コンサルタント
建設・不動産の男性社会の中、総合職ワーキングマザーとして孤軍奮闘した経験をきっかけに、性別・役職・所属・国籍に関係なく、お互いが尊敬しあう社会づくりに貢献したいと考え、起業。
ダイバーシティ/女性活躍を推進する企業の組織コンサルティングや、研修など企業の風土変革者として日本企業の働き方改革のトリガーとして活動する傍ら、国会で参考人・公述人として意見陳述を行うなど、待機児童問題をはじめとした子育て政策に関する提言を行う政策起業家としても活動中。プライベートでは3女児の母でもあり、認知症の母の介護を同時に行うダブルケアの経験者でもある。プロボノ市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」の代表も務める。
■日本の現状:男性の家庭進出はまだまだ発展途上
男性の育休取得率は7%、1ヶ月以上の育休は全体の1%しか取得していません。共働き家庭であっても「ゼロコミット男子(=家事・育児を全くしない夫)」がなんと7割!家事・育児負担が女性に大きく偏っているのが現状です。第1子の出産を機に退職する女性も半数にのぼり、その結果世帯の生涯年収の大幅減が見込まれます。
さらに産後1年以内の女性は、4人に1人が産後うつのリスクも抱えています。出産後のメンタルヘルスの改善には、家族の協力が欠かせません。
■男性育休のメリット:家庭・組織・社会にいい変化をもたらす!
家庭:男性の家事育児時間が多いと、第2子以降の出生率が上がることがわかっています。
組織・企業:「育休」という経験を通じて、新たな視点を持つ人材(=イノベーションを生む人材)を得る、本質的な幸福(ウェルビーイング)を求める若手人材を引き付けることができる、といったメリットがあります。
社会:「男性の育休」を契機に、長時間労働の是正や性別役割分担の解消も進むことが期待されています。
身近に男性育休を取った人がいると、周りの人の育休取得率は11~15%アップします。上司の場合はさらに2.5倍の効果があるそうです。男性育休が広がっていくことで、さらにいい循環が期待できますね。
■実は充実している育休制度…でも制度が知られていないことが大きな課題
現状の育休制度も実はとても充実しています。従業員は雇用保険から給付金が受給できる上に、社会保険料が免除されます。例えば年収600万円の人の場合、手取りベースで実質4%の減少にとどまります(※細かくは年収・扶養家族の数によって異なります)。
さらに社員が育休を取ることで、企業は最大72万円の助成金を受け取ることができるのです!
それなのになぜ、男性正社員の育休取得率はこんなに低いのでしょうか?
調査で挙がってきたのは「会社で制度が整備されていなかった」というもの。つまり「会社に制度がないから、自分は育休が取れない」と思っている人が多いのです。「育休は国の制度なので、たとえ就業規則に載っていなくても取得することができる。しかしそれを知らない人が多い」と天野さんは指摘します。
■今後の法改正のポイント:「企業」に対して、個別周知・育休取得促進を「義務化」すること
「男性育休の義務化」というキーワードで知られる今回の法案ですが、義務を課される対象は実は企業。この法改正によって、男性の育休が人事制度・就業規則に組み込まれ、制度を正しく知る人が増えることが期待されます。
今回はZoomの投票機能を使って参加型クイズをしたり、セミナー中のチャットも感想や質問で盛り上がったりと、あっという間の50分間でした。
参加者の感想をご紹介します。
「男性で育休を取らない選択肢はありえない、と感じるぐらい、メリットがたくさんあるとわかった」
「上司から『おめでとう!育休はいつ取るの?』と声をかけるのが大事だと思った。次から実践したい」
個々の家庭はもちろんのこと、組織や社会にもメリットだらけの男性育休。みんなが幸せになれる社会を作る第一歩として、取得を検討したり、周りの人と話をしたりしてみてはいかがでしょうか?
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