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デザイン会社の役員が世代交代して考えたこと

株式会社グッドパッチの松岡です。
Goodpatch Design Advent Calendarの記事を書かせていただくことになりました。

2021年もそろそろ終わりということで、普段はあまり振り返らないタイプですが、直近1年の事を振り返っておきたいと思います。
※その都度反省や自省はしますが、過去から学べることを得たら、それ以上は深く考えずに、寧ろ積極的に忘れていくタイプで、「Learn and Burn」がモットーです

自分の管理職としてのポジションを後任に引き継いでの1年というテーマで、私自身の経験や思ったことをまとめてみたいと思います。
どのような人に読んでいただきたいかというと、クリエイティブ部門のマネージャーや事業責任者の方向けの内容になっています。
何かしら、参考になることがあれば幸いです。

★私自身の紹介

現在の役割


株式会社グッドパッチで取締役 執行役員をしております。
ざっくりいうと、UIデザインとUXデザインを中心に、戦略のデザインや組織のデザインを手掛けている会社です。
※代表的な事例はこちらでご紹介しております

その中で私は、国内デザインパートナー事業とGoodpatch Anywhereの事業責任者をしています。
国内デザインパートナー事業にとっては担当役員という立場で、Goodpatch Anywhereにとっては事業責任者(ゼネラルマネージャー)という立場です。

1年前までは国内デザインパートナー事業の事業責任者(ゼネラルマネージャー)という立場でしたが、後任に役割を引き継いで1年経過した状態です。

国内デザインパートナー事業とGoodpatch Anywhereの事業内容は、ほぼ同じです。
ただ、デザインパートナー事業は正社員中心の創業事業、Goodpatch Anywhereはフリーランス中心で約2年の事業となり、事業の成長フェーズが大きく違い、組織マネジメントも大きく違います。

それでは、事業責任者ポジションを後任に引き継いだ直近1年の振り返りとなります。


★新陳代謝や世代交代を、今から意識しておく


管理職が長くなってきて、権限と責任を持つ期間が長くなればなるほど、自分の思う正解が現場の正解と乖離してきます。
「いや、自分は大丈夫」と思っている人ほど危険です。

デザインパートナー事業での事業責任者の期間が長いため、どうしても自分バイアスや松岡ルール(自分の基でのみ通用するルールや考え方)があったと思います。
事業責任者である期間は、組織をまとめて成果を出して、社員や利害関係者に還元するという責任がある以上、仕方ないと思います。
ただ、新陳代謝も必要で、理想としては良い状態の時に交代する・任せるという意識が必要で、その準備をしているかしていないかは、事業にとっても組織にとっても、大きな影響を与えると思っています。

成果がでている時ほど危険であると自覚する

仮に、これを読んでい頂いているアナタが、今はマネージャー(課長や係長ポジション)であったとしても、事業やチームが良い状態の時に交代する・任せようと意識して、日々過ごすのと過ごしていないのとでは、明らかな差がでます。
その差とは、「いつかは自分とは違う価値観やルールで事業をしていく」覚悟でもあり、メンバーを許容して育成する姿勢に差がでてくると思うからです。

管理職が長くなると「まだまだ任せられないな」とか「ここは自分がいないと」と思ってしまうこともありますが、自分にはできない飛躍や結果を求めるのであれば、心配は横においておいて、「今よりマイナスにならなければ良しとする」くらいがいいと思います。

ちなみに、デザインパートナー事業では交代しようと決めてから(その時は人選は白紙でしたが)、2年かかりました。
途中でIPOがあったりもしたので、時間がかかってしまいましたが、交代できる状態にするだけでも、それなりの準備が必要なので、早めの着手がオススメです。


★寛容であることを意識する(時には我慢)


交代したり、新しいマネージャーを登用する際に、どうしても気になることがでてくると思います。
「自分ならそういう判断はしないな」とか「これ、大丈夫なのか?」という思いです。

ここでアレコレ指示したり、結論を提示してしまうと、新陳代謝は起きません。

なぜ交代したり、登用しているかといえば、自分にはできない飛躍や結果を求めたからのハズです。
つまり、斬新さのみを求めた方がいいと思います。
「自分とは違う判断だから良い」、「自分が不安になる、つまり想定外だから良い」くらいの解釈でいいと思います。

マネジメントとしての基礎(マネジメントとしての基本的な言動に誤りがあるなど)は教えないといけないと思いますが、事業(弊社でいうとデザインの良し悪しなど)については、現場に近い方が正解を持っていると認識した方がいいと思います。

関与するしないの見極めが非常に重要で、楽観と悲観を使い分ける

なら、何でも許可すればいいのか?というと、それは無責任につながるので、失敗した場合の責任やリカバリーを積極的にやって、その姿から学んでもらった方が有益だと思います。
また、撤退ライン(この状態になったら諦めてもらう、ここを下回ったらストップする)を明確に引くのも大切です。

これができていれば、万が一の事態が発生しても、自分が介入すれば最悪なんとかなるからです。
管理職として、交代(自分のポジションを誰かに譲って、自分は違うことに取り組む)や登用をしている人であれば、万が一の事態を収束させる力量は既に十分に身についていると思うからです。


★それでも、なお難しい(反省)


新体制になって、新しい価値観で、自分にはできない飛躍や結果がでるハズが、そう簡単にはいきません。
「もっと自分が関わった方ががいいんじゃないか」、「想像と違ってヤキモキする」など、不安や誘惑にかられます。
見守ることは無責任なんじゃないかと思い始めて、介入したい気持ちがでてきます。
もっといくと自分は何もしてないんじゃないか?という考えに至ることもあると思います。
※事業責任者ポジションを交代した場合や、社長交代した場合のレアケースで、想像がつくかわかりませんが

その時こそ、下記4点を意識した1年間でした。
1.新体制で解決できない難問の対応を積極的にやる
 トラブルの対応などをすることが、新体制に自分の仕事を見せる良い機会でもあります。
2.新体制となったマネジメントメンバーが、手が回っていない、且つ邪魔しない仕事を積極的にやる
 ハイパフォーマーな黒子=裏方を心がける。
3.自分自身で、新しい役割を作り出す
 自分にとっては、Goodpatch Anywhereの事業責任者がこれに当たり、来年も新しい挑戦をする予定です!
4.最後の責任はそれでも自分にあり、自分が知らないことがあったとしても、快く責任をとる
 ここを放棄したらただの人、これまでの自分の信頼貯金を使いまくる。

今の自分の関心は、もっとマネジメントメンバーが現場と一体となって、それぞれ個性を発揮するにはどうしたら良いか?です。
映画やゲームスタジオにあった◯◯組がイメージに近いです。
※反社ではなく、監督やプロデューサーを中心に、才能をもった職人が集まり、人を感動させる作品を提供する集団

近々、映画・TV制作の会社さんにお邪魔してお話をお伺いする予定です。


★デザイナーとしての生活軸がズレている危険性に敏感になる


コロナになって、随分と生活が変わりました。
ここで思うのは、1人の生活者として接触する世界が狭まり、感性や判断軸が狭まっているという状態が、非常に危険だと思っています。
つまり、デザイナーが想像して考えるユーザー像や生活感が、非常に狭い根拠から導きだされる可能性がある点です。

思えば、私自身も普段の生活の行動範囲は半径5kmくらいです。
20年経っても馴染めない東京に通うこともなくなって、通勤電車で見かける色々な人を観察したり、ふと立ち寄ったお店で何かを見るという偶然の出会いがなくなりました。

私自身もコロナになって、SNSやメディアへの接触を大きく見直しました。
SNSでは、真意不明の情報が盛り上がっては消えていき、自分に直接の被害がないのに他人を非難したり、それについて怒りをぶつける必要があるのかなみたいな事を感じることが多くなり、狭くなったなと思っています。
メディアも、どのような基準でそのネタを扱っているのか、反対意見も伝えているのかよくわからなくなりました。
気がつけば、音楽のプレイリストも、個人の趣味嗜好を理解してくれるAIのおかげで、偶発的出会いがなくなり、似たような音楽ばっかりになってしまいました。

行動の制約が、感性や思考を狭くする危険性

インターネットに多様性はあるかもしれませんが、結局人は見たいものしか見ないと思っています。
※多様な環境であるほど、自分基準の行動をする特性

今は、サイロ化(狭く孤立したグループがたくさんある状態)しているどこかに、自分は所属しているのでは?と思っています。
リモートやデジタルの恩恵はありつつも、それが故に、狭い世界で似たような情報や人のみで生活することが危険だと思うようになっています。

来年、コロナが落ち着けば、行動範囲を無理にでも拡大して、普段は関心がない・触れない情報に触れて、現場をみて、自分の感性を広げていきたいと思っています。
実生活の行動範囲や接触する対象の広さと、ネットの深さを併用して、自分の感性がサイロ化の影響を受けないように、意識しないといけないなと思っています。

またそれを、弊社のデザイナーやエンジニアにも認識してもらう必要があると思っています。


★最後に


株式会社グッドパッチでは、デザインの力を証明したい人を募集しています。
現在募集中の職種は、こちらにまとまっています。

来年も、今のメンバーと力を合わせて、もっと多くのユーザー様やクライアント様にデザインの価値をお届けしたいと思います。



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