文章組手「お祭り(フェスティバル)」2000字

 お祭りと言えば泉州堺の出身である私はだんじりが最初に浮かぶ。しかし私の町内は私が生まれる前にだんじり名物人死にが起きたらしくブツは存在しなかった。他の町内のだんじりを眺めるだけだったのだ。それはそれは惨めな面で。~完~

 終わってどないするねんな。堺と言えばだんじりなんかおまへん。あんな粗野な祭は岸和田あたりに任せとけばよろし。
 上品な堺っ子は「布団太鼓」を推すね。というか布団太鼓を見てしまうとだんじりのスケールの小ささに笑ろてしまうがな。
 布団太鼓って何?嫌やわお客さん。布団太鼓って言えばだんじりを一回り大きくして周りに布団と言うか綿の入った袋を付けまくった物質でやることはだんじりとほぼ同じなアレやがな。

 と、祭りの説明なんぞなにも面白くないのでこのあたりで。祭りといえば地域のヤンキーが先輩ヤンキーから色々と教えてもらい、祭りのテンションで珍棒を満穴に打ち込むリンボの時。関西だけなのかもしれないが、だんじり参加者は木製のお守りをだんじりが終わるまで肌身離さず持っている。大抵はペンダントトップのように首からぶら下げている。
 8月あたりから身につけ、青年団のランニングや笛や太鼓の練習も参加する。そしてこのお守りのすごいのは校則よりも重視されることだ。
 たしかプールの授業だった。めちゃくちゃ怖い体育の先生が「なんやそれは!はずせ!」と怒鳴った。するとヤンキー「これはだんじりのなんだす」という。さすれば先公「ならええわ」ええんかい。
 このようにだんじりは全てのロウより上位にある。そしてだんじりがはじまる10月までガラの悪い堺のヤンキーが酒と煙草をやめるのだ。最初からやるなアホンダラ。

 これはいったいなんなのか?祭りとは儀式だ。肉体をいじめ、魂を爆裂させる儀式なのである。一瞬の爆裂のために耐え堪え我慢する。祭りは誰もが味わえる「緊張と緩和」なのだ。もっと簡単に言えば極限までションベンを我慢して大放出する。そんな場だ。

 しかし大人になって参加する祭りと子供の時に経験した祭りは何かが違う。発散力が違うのか。抑圧されている部分で言えば大人の方が子供よりも抑圧されている。それなのに子供の時に感じたトランス状態にまで入れない。それは抑圧が強すぎて祭りを楽しむ機微がバグっているからなのか。
 祭りの次の日は大抵仕事だ。有給を入れていてもその後は仕事だ。休み明けには取引先や上司に連絡などをする。そんな雑念が頭を横切り、心の中では落ち穂拾い。絶望の欠片を自分から探してしまう。
 だが子供はどうだ?次の日が学校であろうが関係ない。むしろ祭りの当日にバイトが入っていようが声がでなくなるまで爆裂パッションパワーモンガー。御身砕けて土となれ。祭りは明日を考えている人間には楽しめない。大抵は神に何かを捧げる。するってえと祭りって神のため、言うなれば自分の中でマックス上位の存在に向けてソウル見せびらかせタイムを行う訳だ。
 しかし大人と言うのは不敬千万。祭りの中にある信仰などを忘れて余力残してタコ踊り。そんなんでは神は満足しないよ?やり給え。沖縄を見習え。エイサーの練習で早退もできるしエイサーの後は有給取る人間が多すぎて会社が回らないってさっちゃん(故人)が言っていたぞ。
 ならば祭りを心から楽しむためには「明日なんてノーフューチャーマインド」で取り組まねばならない。忘我。何もかもを忘れて踊るのだ。人間、もうどうしようもないとなったら踊る。私だってカレー店に全くお客様がいない瞬間は踊っているし先日は製氷機に足を思い切りぶつけた。

 忘れる。そう、祭りは忘れるためにあり、忘れた人間と忘れられない人間に分かれて楽しめるかが決まってくる。多分、私は忘れられない側の人間なのだ。つまらない人間の証明。しかし、だからこそ、今後多くの祭りを楽しむことができるかもしれない。去年、わが町堺を代表する祭り、堺まつりに行ったが布団太鼓を5分ほど眺めて280円居酒屋ニパチに行ってしまった。理由はすぐに東京に戻らねばいけなかったからだろう。今は社会人という檻から解き放たれ、自営業として修羅の道を歩み始めた私に死角はない。全てを忘れ、思い切り祭りに参加できる日は近い。

 踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らな損々。良い言葉だ。忘れようが忘れまいが神の視点からすると同じ阿呆なのだ。ならば人間であることも忘れ、よだれを垂らし、涙を流し踊るのが人間らしいのかもしれない。祭りが生み出すパワー。カニバルが巻き起こす狂奔。原始、人は祀り上げた。自分ではどうしようもない存在に阿呆の踊りを見せた。文明がそれらを包み隠しわかりにくくした。男ポンマス38歳。そろそろ裸で踊る瞬間が近づいてきた。
 祭りを感じ、御身爆裂肉体フェスタ。マインドオブマツリ。祭りと一体化した時、私は新しいステージに上がることができると信じている。

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