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ただオタクでリーマンが台湾で日本書専門店の店長をやった結果   その3

「日本のコンテンツは思ったほど流行っていない?」

日本のアニメやマンガ、ゲームといったポップカルチャーは、ご存じの通り世界中でキラーコンテンツとなっている。
実際に台湾でも日本発のコンテンツは人気だというのは、日本書だけを売る書店が、いまだに営業を続けていられるのは、その人気の裏付けだという実感がある。

では、果たして日本で流行っているコンテンツが、等しく台湾でも流行るのかというと、そういう訳でもないというのは、売上を見ながら感じたところでもある。

例えば、「ドラえもん」「ちびまる子ちゃん」「アンパンマン」は日本の誰もがよく知るキャラクターだが、「アンパンマン」の知名度はそれほどでもない。
「ニチアサ」といえば、日曜朝8時30分からはじまる子供向け番組帯の略で、「プリキュア」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」は大人も子供も一緒になって楽しめるコンテンツだが、台湾でこれらを知っている子供はほとんどいない事だろう。

理由はいくつかあるだろうが、ひとつは母国語での紹介がないことが一つにあげられる。
日本好きの台湾ではあるが、当然ほとんどの人は日本語はわからない。
どれだけ日本で流行っていても、ローカライズされていなければ、それを台湾で流行らせるのは、相当の手間ヒマが掛かるというのは、私も過去に実践したことがあるので、身をもって分かっている。

そして、もう一つの要素は、ローカライズされたものを広げる媒体が必要ということ。
媒体というとピンとこないと思うが、媒体を英語に訳するとイメージしやすいと思う。
媒体=メディア
だ。
メディアといっても、雑誌やテレビなど様々あるが、台湾の場合、影響力の大きいのはWebメディアだ。最近では個人のインフルエンサーやYoutuberなどもある。
2~3年前に雑誌のBRUTUSで、台湾の特集が組まれたときに表紙を飾ったのが、台北では良く見る「道の両側には食べ物屋さんが並び、道路の路肩にスクーターがぎっしり止められている」そんな、いわゆる日常風景写真だった。ちなみに等身大の台北の風景という意味では、良い写真だと個人的には思う。
この号が台湾のWebメディアに取り上げられ、「俺たち私たちが紹介したい風景ではない!」と各々がおススメする台湾の風景をBRUTUS風の画像にしてSNS上にアップする騒動があったのは、Web発信でひとつの雑誌がブレイクした良い例だと思う。
普段、我々のお店を利用しない人からも問い合わせがあり、反響の多さから、出版社も増補版として表紙の写真を差し替えMOOKとして発売することになった。

このローカライズとメディアやSNSでの拡散が、台湾でコンテンツを流行らせる重要なポイントとなっている。

まだ台湾にいた時代に、知り合いを通じて、台湾でイベントをやりたいとか、台湾で物を売り出したいとか、相談を受けたことが何件かあったが、中には「日本好きの台湾でだったら、何とかなりそう」程度で考えてる人もいて、話を聞いてみると、大抵は台湾に一度も来た事が無い人ばかりだったので、「一度台湾に来て、お話しましょうか?」と言うと、それ以来何の音沙汰もなくなってしまうのが、ほとんどでした。

日本は良質なコンテンツを作り出す術には長けているが、肝心のそれを広げる術が下手だなとつくづく思う。
しかし、ローカライズの精度や、それにかかる時間などは、以前に比べれば格段に進歩している。
最近では集英社のMANGA Plusというサービスは週刊少年ジャンプ連載のマンガが日本の発売日と同時に英語とスペイン語で読めるようになるというもので、私個人としてはようやくかという気持ちが強いが、それでも大手出版社が、本腰を入れてきたという意味では、大きなステップだと思う。

じゃあ、それ以前も日本でも流行ったマンガやアニメが海外でも、ほぼ同時期に流行っていたでしょ?という疑問については、デリケートな話題でもあるので、書けたら有料で公開しましょうかね。

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