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Water Room Recordsの素敵な旅(前編)

今日はThe Käfersやpaddy isleといった曲者バンドのラインナップで知られるWater Room Recordsを紹介しよう。20代の若き社長でレーベルオーナーの水戸部優彦氏、通称「マサ」に話を聞いた。

水戸部優彦氏

3月から3ヶ月連続のマンスリーイベント、この5月19日は千秋楽、まぁ、3回で千秋楽というのもあれだけど(笑)、Festival in the Water Room、お疲れ様でした。マサ:いや〜、大変でした(笑)!いろんなお店にポスターを貼って頂いたりしまして。ありがとうございます!
今、レーベルとしてはThe Käfers、paddy isleにマムシ?
マサ:マムシは僕がベースを弾いてるブルーズバンドなので別枠ではありますが、所属バンドとしてはイギリスのGeorgia CrandonにThe Käfers、paddy isle、それに最新リリースはデトロイトのガールズサイケバンドShadow Showです。
おお、そうだった!Shadow Show、聴いたよ!シャングリラズを連想したりした(笑)。なかなかいいバンドだよね。
マサ:いや〜、いいバンドです。5月はFM群馬のパワープレイに選ばれてまして、ありがたいです。

最新リリースのShadow Show


レーベルの歴史とかも聞かせて欲しいんだけど、とっかかりとして、このShadow Show、どういう経緯で今回のリリースに至ったの?
マサ:マイク・ロジャースという方からの紹介なんです。元々はディスクユニオンの蒲池さんという僕の担当の方に来た話みたいで、僕のレーベルと合いそうだからどう?という感じで紹介して頂きました。いつもお世話になってます。
あ、知ってる。日本のインディーズバンドを紹介してる方だよね。その筋では有名な。ラジオをやってるよね。
マサ:はい、その方です。彼と知り合ったのはThe Käfersがきっかけなんです。今回話を聞くにあたって、ちょっと調べたんだけど、『外タレ』はShadow Showが初めてではなく、Georgia and the Vintage Youthというバンドもいるよね。
マサ:そうです。実はそのGeorgiaがこのレーベルの第1弾でした。

レーベル第1弾となったGeorgia and The Vintage Youth


へぇ、『外タレ』が最初なんだ。じゃ、その辺からレーベル始めたあたりの話を聞かせてよ。
マサ:Georgiaは僕のロンドン時代に通ってた語学学校の先生から教えてもらいました。彼が教えてくれるバンドはいつも良くて、一緒にいろんなライブを観に行きました。『いいバンドがいるんだ、聴いてくれ。』ってGeorgiaの音源が送られて来たのは日本に帰って来てからですね。でもCDとかは日本に入って来てなかったんです。欲しいなぁ、と思いながらディスクユニオンで働いていたら、プロデューサー募集!みたいな公募がありまして、それなら自分で作っちゃおう!って。それで立ち上げたのがWater Room Recordsです。
そうか、ロンドンに住んでたことがあるんだよね。マサの英語が超英国訛りというのはそれだからなんだ。
マサ:アメリカで英語を覚えた人からは発音が悪過ぎるってバカにされます。ネイティブからは訛りがひどいなぁって言われながらも一応は話せてるみたいです(笑)。
同じ英語でも違うからねぇ。だって、あれだぜ、英国の映画をアメリカで上映する時、字幕が付くって聞いたぜ。
マサ:ははは、聞いたことあります(苦笑)。
話を戻してGeorgia、聴いてみるとロンドンぽいサウンドだよね。SKAやソウルミュージック色が強くて、エイミー・ワインハウス思わせるとこもある。Water Room配給は確か・・・。
マサ:ディスクユニオンです。お世話になってます。
プロデューサー公募って、もともとレーベルやったりそういうのをやりたかったの?
マサ:僕は新潟出身なんですけど、そこで『オトノハコ』という音楽事務所で音響とかいろいろやってたんです。そういう影響もあると思います。レーベルは音響とか関係なく、さっきは自分で出しちゃえ!とは言ったので、後付けになっちゃうんですけど、僕が好きなバンドをみんなに知ってもらいたいってことで始めました。
Do It Yourself、まさにパンクロックの精神だね。そのロンドン時代のこと少し話してくれる?元々ロンドンて言うか英国的なものに憧れがあったの?
マサ:いや、実は当初留学はアトランタに行こうと思ってたんですよ。
⁈ え、そうなの⁈ あー、そう言われてみるとこの前ディッキー・ベッツが亡くなったときにfacebookに追悼文投稿してたよね。
マサ:はい。アメリカ南部に行って、オーティスとかサム&デイヴ、サム・クックとか追体験をしたいと思いまして。ニューオーリンズとか、ずっとソウルミュージックが好きだったので、本場に行ってみたいと思ってたんですが、『マサはアトランタに行ったら生きて帰って来れない。』って周りから言われて諦めたんですよ(苦笑)。
それでロンドンって訳か。
マサ:ロンドンに着いたのが奇遇にも1月30日、まず行ったのがサヴィル・ロウ3番地・・・。
あっ!
マサ:アップルのあったビルを見上げながらルーフトップの音源を聴いて1969年に想いを馳せてました(笑)。寒空の中40分間、バカですよね(笑)。
あはは、なんとロマンチックな!
マサ:僕の英語は中学英語で止まってたので、最初は買い物も大変でした。留学のよくあるパターンで外国にいても日本人だけでかたまっちゃったりみたいな、そういうのが嫌で、とにかく英語しか使わない、いや、使えない状況に自分を追い込みました。
なるほど、セルフ・スパルタって訳だ・・・。
マサ:さっきもお話したように、英語の先生にライブに連れて行ってもらったり、放課後は誰かを連れてパブとかで飲んでました。僕の英語はパブイングリッシュです(笑)。その甲斐あってひどい英国訛りになりましたけど(苦笑)。
いやいや、カッコいいよ。僕はブリュッセルに住んでたことがあるんだけど、日本人駐在員の間で英国が一番英語が通じない!てのがあって。英国では英語は文化だからね。英国人が喋る英語だけが本物で、あとはコミュニケーションの手段なんだよね。さっきまさにDIY精神ていうかパンクロックに通じる感じを受けたんだけど、パンクも聴いてたの?
マサ:中2の頃にPistolsを聴いて好きになれなくてパンクは敬遠してたんですけど、僕のロンドンでのホスト・ファザーがClashが大好きで。『お前な、クラッシュを知らずしてどうする?好きになるまで日本に帰さないぞ』と脅されて・・・(苦笑)。今はClashは好きです。その前からJohnny Thundersは好きでした。
そりゃいい(爆笑)! ところで、さっき、ソウルが好きだったって言ってたけど、それってどういう経緯なの?
マサ:僕の10代って、キヨシローさんなんです。中2の頃は彼しか聴いてませんでしたね。歌詞になんど救われたことか・・・。
そっから入ってったんだ・・・。
マサ:僕の父のカラオケの18番が『雨あがりの夜空に』なんです。歌うのをよく聞かされてました(笑)。最初に買ったCDもキヨシローさんっていうか、RCサクセションの『Baby a Go Go』でした。ビートルズを聴くようになったのもキヨシローさんの影響で中2の頃なんですが、幼少期からすごいバンドなんだろうなぁ、って聴いてないのに思ってました。出会いは、トイレの前でなんですけど。

え⁈
マサ:どう言うわけか『赤盤』がトイレの前に置いてあったんです。『青盤』もあったのかもしれないんですけど、父がトイレで読む新聞や雑誌が置いてあったところになぜかありまして。
へぇ、ビートルズとの出会いとしてはかなりユニークなんじゃない(笑) ?マサはファッションはレトロというか、そういう古いものっていうか、やっぱそういうのに本物を感じるから?
マサ:あ、僕は古いから本物だとか、60年代のものだからいい、とかはないと思うんです。今聴かれてる60年代の音楽にしたって、当時は流行の一つだった訳ですから、どんな時代でも売れるものはいいものだと思います。好き嫌いは別としてですけど。
なるほどね。ところで、Water Roomは世田谷のGOKIGENYA GARAGEをベースにして活動してるように思うんだけど、そのあたりの話を。

paddy isle(CD)とThe Kafers(7インチ)

マサ:GOKIGENYAでイベントをやっているのは、まず『音がいい!』ってことなんです。自分がPAをやっててもやりやすいですし。もともとGOKIGENYA Rっていうのが甲州街道沿いにありまして、仕事帰りによく寄ってたんです。近くのミュージシャンとかも集まってて面白い店なんですよ。もう一軒、祖師谷にもあったんですが、そこはビルの老朽化で立ち退きになってしまいました。そういった経緯で千歳船橋のGOKIGENYAで今イベントをやらせて頂いてます。GGとも呼ばれてます。
The Käfersもpaddy isleも世田谷のバンドって言うと語弊があるけど、世田谷ローカルな感じがいいよね。
マサ:なんだか世田谷に固まっちゃってますね(笑)。隔月でオープンマイクとpaddy isleのライヴという組み合わせでMusic From the Water Roomというのをやっているのも、ちょうどビートルズがキャヴァーンでやってたみたいな感じと言いますか、イギリスのミュージックパブみたいなノリです。
そうなんだ。コロナ禍もあって今、そういうローカルなイベントていうかローカルに根差した活動が増えてる気がするんだよね。そこに行かないと観れないみたいな・・・。
マサ:あの店をもっと色んな人に知ってもらいたいですね。いい店なんです。『ここからpaddy isleが出た』みたいになったらいいなと思ってます。
今日はマサこと水戸部くんの紹介がメインだったけど、次回はThe Käfersやpaddy isleと言ったレーベルのアーティストとの出会いとかも聞かせてよ。
マサ:はい、あ、マムシもお忘れなく!この前、ここ渋谷のThe Aldgateでライヴやりました。マムシではダックダン気分でベースを頑張ってます(笑)。
*****************************************************************************20代の若きレーベルオーナーであり、自らも『マムシ』で活躍する水戸部優彦氏。Water Room Recordsの名前について聞いてみたら「最初はWater Door Roomだったんです。でも流石に3文字は長いな、と」とのことだった。
次回もお楽しみに!
インタビュー、文責
後藤博則
2024年5月25日渋谷The Aldgate(“it’s a small Britain after all”)にて。

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