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レコード徒然物語・その10

持ってるか、持ってないかだ。結局。レコードやCDあるいはカセットと言った今で言うフィジカルとサブスクでも配信でもいいけど、そう言うものとの違いは、そこだ。

かつては持ってないと自分の好きな音楽を好きな時に聴くことが出来なかったのだ。だから当たり前と言えば当たり前。ほかにチョイスがなかったからね。

このシリーズで前にも言ったけど、最終目的はレコードを買うことだった。好きなアーティストのレコードを買う。ディスコグラフィーや本の後ろに付いたリストを頼りに買っていく。溜まって来るとなんか嬉しくなる。そのアーティストを確実に自分のものにしていると言う喜びがある。そしてそのアーティストの仲間とかルーツとか影響を受けたアーティストなんかを買っていく。するとヘヴィなコレクターでなくてもコレクションが充実してくる。

よく、その人の本棚を見るとその人がわかる、なんて言われたものだ。積読も含めて、持ち主を形づくって来た本がそこに並んでいるからだ。レコードもまたしかり。どんな音楽を聴いてきたのか、また聴いているのか。友達の家に遊びに行って、レコード棚を見せてもらい、おっ、こんなの持ってるんだ!とわかった時の同胞感。時には、おっ、これ、持ってない!と差をつけられた時のショック。あるいは、こんなの聴いてるの?だっせぇなぁ!(笑)なんて言える面白さ。勿論、相手はそれで気分悪くするかもしれないが、そんな感じでコミュニケーション出来る、って訳だ。

でも配信とかサブスクになるとその人の音楽的な趣味とか聴いてきたものの歴史はどうしたら表現出来るのか。プレイリスト拝見、なんてやっても、その時々で変わるかもしれない。あれ、持ってる?なんて会話も出来ない。あれ、聴いた?が精一杯だ。

持ってることで自慢も出来ないし、いつかオレもコレクションするぜ!と言う野望も持てない。まして、好きなアーティストにレコードにサインを貰うなんて無理だ。すべてにアクセス出来るけど、何も所有はしていない。何でもあるのは何にもないのと同じかも知れないなんて哲学的なことを言ってみる。

でも、それも価値観。ネットの登場前と登場後を同じ尺度で測って、いい悪い言っても始まらない。ちょっと聴いてみたいと思ったら、いちいち買わなくてもさっと聴ける訳だから便利。それでも僕は買ってしまう。Discってのはそう言うものだ。ロックンロールが、いや、その前からポピュラー・ミュージックは、Discと言うメディアによってリスナーとの関係を築いて来た訳だから。

さっきもタワレコオンラインのアウトレットの60%OFFの10,000枚ちょいあるリストをiPhoneの小さい画面でクリクリやってた。千円以下だと無条件に欲しくなってしまう。そんな感じで毎月買っているのだから、その千円をサブスクにすればもっとたくさんの曲が聴ける。でも…わかっちゃいるけどやめられない!なんて往年の名フレーズをもって、この連載を一旦、締めたいと思う。



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