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ドサクサ日記 1/29-2/4 2024

29日。
レコーディングスタジオではない街のリハスタでドラムの録音。レコーディングスタジオを1日借りると、交渉次第ではあるが1日で6万円以上、都内なら10万円以上の出費になることが確実で、機材や環境の面から考えるとそれは妥当というか、価格が安いと言えると思うのだけれど、昨今の音楽を取り巻く状況を考えると、音源の売り上げで10万円を賄うのはなかなか難しい。かと言ってせっかくの創作物を金銭面からの理由で妥協するのは忍びない。今回は作品の方向性から考えて、場所が何よりも重要で、そうした方向から考えて幡ヶ谷の街のリハスタで録音した。持ち込みの機材では6chがマックス。それでも6本の源泉したマイクで、素敵な演奏を録音できたように思う。過去に比べて、無数の選択肢があることが現代のアドバンテージだけれど、選択肢と情報のなかで迷子になってしまうこともある。プロのカメラマンに撮影してもらったポートレートはさすがに素敵だけれど、関係性のなかでしか撮ることのできない親密な空気も存在するし、誰しもがiPhoneみたいな性能のカメラを手にできる時代に、GXRとか、あるいは少し古いフィルムのカメラや、インスタントカメラのほうがユニークな瞬間が切り取れたりする。結局はどうしたいか、かもしれない。とにかく、とても素敵な瞬間を録音できた。

6chという制限があるけれど、予算も含めて制限というのはどこにでもあって、そのなかで方向性を考えてベストを尽くすのが、音楽の面白いところでもある。

30日。
古里君のカレーのいいところは、本人が美味しいと心底思っていることだと思う。休みの日に試験的に作ったカレーを食べさせてもらったのだけど、彼はずっと「うん、美味い」と何度も独りごちていた。そういうのはとっても大事だ。俺はスタジオで時折、自分の作った楽曲に感動して泣いてしまうことがある。つうか、それがすべてじゃん、と思う。世界中でバズらなくても、幸せかどうかは自分で決める。

幡ヶ谷のウミネコカレー。油が少ないので毎日食べれる優しさ。もちろん美味しい。

31日。
梅田で平尾剛さんと出版記念のイベント。とても楽しい夜だった。スポーツにまつわる「なんでやねん」を揉みほぐしながら、自分のなかにある体育会系の血流にも目を向けて、変わって行かねばらならないと言える平尾さんは稀有な存在だと思う。スポーツ界の偉い人は基本的に権威に固執した狸ジジイばかりで、いまだに連帯責任だの何だの言って、選手ファーストではないと感じる。そういうところで、競技者のために何とかしようと思っている人たちを応援したいなと思う。そうした変化するべき嫌な感じは、学校や職場とか、あらゆるところに存在する。だから、自分も例外ではない。スポーツにおけるスポ根感を世に広めたのは他ならぬスポ根アニメや漫画であったという話は重たかった。文化の側が、体育会系のマチズモを肯定したり、強化してしまうことがあるということを、よく考えて活動したい。

2月1日。
穴蔵(CBS)で音楽作業を延々と行う。オークションなどで機材を買うと、喫煙していないことが明記されていることが多い。ヤニがついていたり、匂いがついていいないことへのアピールだろう。翻って、喫煙者の機材というのは業界では忌み嫌われているということだ。設置するだけで昔の実家のシビック、あるいは座席や肘掛けに吸い殻が付いていた時代の東海道線のような、恒常的に煙草の煙が漂っていた記憶としての残香が溢れてしまうのだろう。喫煙可能な客室に案内されてしまったときの絶望を思う。俺は煙草はきっぱりやめて20年以上経つが、スタジオでは線香を焚きまくっている。その前はセージの葉を焚いていた。今後機材を売る機会があるときには、線香の匂いがして臭い、墓地などを想起してしまって怖い、お陰でフレッシュなミックスができない、などというクレームがあるのだろうか。

2日。
静岡へ。まずは丁子屋で麦飯ととろろ汁とおかべ揚げを食べる。その後は藤枝に移動して工務店と意見交換。土蔵のスタジオ化にあたっての技術的な問題点と、音楽的に実現したい空間のすり合わせ。白熱。その後は家具工場の見学。例えばマンションを一棟建てるだけでどれほどの廃棄物が出るのか、俺たちは知らない。壊すわけではなく作るのだからゴミが出ない、というのは幻想で、実際にはあるカタチを実現するために端材として捨てられる資材がたくさん出る。こういう気づきはなかなか得られないので貴重だった。その後は静岡を散策した後、ヒトヤ堂という泊まれる純喫茶で光嶋さんと青木君のイベントを見学。作ることをテーマにしたトークはとても刺激的だった。人宿町というところは、町のいいところを活かしてリノベーションが盛んに行われている。俺が若い頃には、もう少し手前の七間町の映画館くらいまで来たり古着屋を巡ったりするところまでで、もう少し深い人宿町に来ることはなかった。今では、新しい文化的なエリアとして発展が目覚ましい。新しいものを作って街の歴史と断絶してしまうのではなく、建物を介して街の香りみたいなものを残しつつ、人とアイデアだけが新しいところが素敵だ。「壊してしまったら戻せない」と言ったのは、ヒガクレ荘の店主だったかしら。素敵な会だった。

chagamaという格好いいお茶屋さんを発見。お茶と豆を購入。
HIBARI BOOKS&COFFEEではミシマ社フェア。夕方だったのでディカフェを啜りつつ、畑中章宏さんと若林恵さんの宮本常一についての対談本を買って読む。

3日。
サッカーのアジアカップをテレビで観戦。ほとんど中継がないのでDAZNに入会してしまった。サッカー人気を考えると、この辺りは結構大事なことなのではないかと外側から思う。サッカーを観ていて思うのは、やっぱり若い世代というのははっきりと昭和や平成とは違う局面を迎えていて、けれども俺たちの過ごした構造が能力発揮のつっかえになっているのかもしれないということ。これはフラクタルにいろいろな現場で同じ問題としてあるのではないかと思う。俺たちおっさんにできるのは、少しでもそうした構造に近いのであるならば、彼らの活躍を阻む構造にアプローチして形をなるべく変えてあげることではないかと思う。そのためにはどうするかというと、力技で組織に訴えるみたいなことも必要かもしれないけれど、実はおっさん世代が真剣に、若者以上に学ぶことではないかと思う。俺はそうしたい。

4日。
住民票が必要だったので、役所の出張所のようなところへ言った。しかし、窓口は完全に閉まっていて、日曜は開いていない様子だった。昨日のうちにKREVA良かった。うっかり前歯が下唇にあたって、ヴァみたいな発音になったのでそう書いてみましたというのは真っ赤な嘘で、「くれば」と打つと直ぐにKREVAに変換される。「ごっち」はゴッ血と表記された。グギギ…。奥歯を噛み締めながら帰る。