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先天性心疾患の子の親になるまで

先天性心疾患の「完全大血管転移」(Ⅰ型)というのが自分の子供の胎児診断での診断結果でした。この診断名は、本来あるべき心臓から出る体へ行く血管と肺にいく血管とが逆になってしまっている病気です。

不安とどうしたらいいのかという気持ちで過ごしてきた日々も振り返りながら、またこれから同じような病気に出会った方(特に親になる方)のためにnoteに記録したいと思います。

自分も病名を聞いたときには、ものすごく不安に駆られ、調べました。何をすべきか、何ができるのかを知るためにはまずは調べなければと必死になって調べました。これからそういう経験をする方の一助になれば幸いです。


病気の発覚

出産前に産婦人科で検診がある中で、胎児の状況を検査するためにエコーを用いて検査するタイミングがあります。そこで運よく生まれる前にこの病気を見つけていただきました。
出産をする病院や検診をする病院というのは、本当に大事なんだと痛感しました。特に、胎児診断をきちんとできるかどうかという点については産科や出産する病院を探すうえではあまり観点としてない方もいると思います。ぜひ、これから出産をする方もその観点はもって病院を探してもらえたら幸いです。

どうやって胎児診断がきちんとしているかを判断するのかという一つのポイントとして、産科の先生の専門分野が病院HPの医師のプロフィールには記載があると思いますので、そちらを参考にすることができると思います。なお、今回、発見していただけた医師の場合には胎児診断が専門分野の方でした。(もちろん心臓のエコー自体はどの病院でも必須で行われるかと思いますが、発見できる病気の種類には専門性によって差があると思います。)

なお、一般的な病院で先天性心疾患が見つかった場合には、専門の心臓病に対応できる病院へと転院をすることがあります。我が家の場合には、そのケースで下記の病院を紹介していただきました。
*東京在住のため都内の病院になります

東京都立小児総合医療センター
国立成育医療研究センター
榊原記念病院

<大学病院系>
・東京女子医大
・慶應義塾大
・東大

それぞれ住む地域によって心臓に特化した病院については、それぞれ違うと思いますが、東京の場合には上記がおススメとして教えていただきました。
病院名を聞いただけだと、どうやって選べばいいかわからなかったので、病気についてと同じくらい病院についても調べる必要がありました。(病院の選び方は後述します)

「完全大血管転移」について

ちなみに、大血管転移にはⅠ型からⅢ型まであり、我が子の場合にはⅠ型でした。それぞれの方によって対処方法が全く違うのでご注意ください。

まず、事実として、以下があります。

・先天性心疾患は100人に1人
・完全大血管転移はさらにその中でも数パーセント
・手術が必須
・昔は生存率が低かったものの、今は95%近くが手術によって助かる

「完全大血管転移」という病気のポイントとなるキーワードがいくつかあります。

・動脈管
・卵円孔
・冠動脈
・肺動脈、大動脈

お腹の中にいる間はお母さんから酸素が含まれた血液が送られてくるので、問題ありませが、肺呼吸をして自分で酸素を取り込もうとした瞬間から問題が発生します。大血管転移自体は、本来肺静脈に行くべき血管が大動脈につながってしまっているので、酸素が足りない血液が体中をめぐることになり、どうやって生きるのかが一番の疑問でした。そこでポイントになるのが、動脈管と卵円孔です。生まれたばかりだとまだ心臓に卵円孔という穴があいており、そこで酸素が含まれた血液と混ざり合ったり、動脈管という派静脈と動脈を結ぶ血管によって酸素が含まれた血液が混ざり合い何とか生きることができます。しかし、これは生まれて一定時間が経つとどちらも閉じてしまうものです。そこで生まれた後にすぐに動脈管がとじないように薬を投与します。こうして手術までの間をなんとかもたせるということができます。

より詳細について自分が参考にしたサイトをいくつか掲載します。
ちなみに英語だと「TGA」といったりもするので、「TGA」と調べてもいろんな情報が見つけられると思います。

小児慢性特定疾病情報センター
国立循環器病研究センター病院
国立成育医療研究センター

下記のような雑誌の情報も詳しく記載されているので読んだりしました。
特に最初の資料のP124がとても整理されていてわかりやすかったです。

先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年度)
・日本成人先天性心疾患学会雑誌
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年度)

病院探し

産科にておススメがあった病院についていろいろ調べた結果、自分なりに病院選びのポイントを見つけました。その中で重きを置いた3点を挙げます。

<第一に手術件数>
大血管転移自体は、そこまで多くない病気のため、手術件数もほかの先天性心疾患に比べると限られてきます。小児医療で有名ないくつかの病院や有名な大学病院でも実際に手術をしている件数というのは限られてきます。
また、完全大血管転移Ⅰ型で合併症もない場合には、最大のポイントは手術にあると思います。(合併症がある場合には、合併症にも対応できる小児専門病院を探す必要があります)

では、どうやって手術件数を調べたらいいのか。
手術件数は各病院のHPに公表されていることが多いです。DPCコード(14031xx101x1xx)などで分類された症例がほぼ必ず各病院のHPには記載されているはずです。もし掲載されていない場合には、下記も参考になると思います。「いい病院」という雑誌などには主な執刀医の先生の名前も掲載されています。

いい病院2020手術件数
2019年のランキング
いい病院2013

<第二に医師、もしくは医師の数>
きちんと心臓病の受け入れ体制ができている病院には、専門分野ごとにチームがきちんと組まれ、ある程度の心臓血管外科医や小児循環器科の先生の人数がいるはずです。病院HPの医師のページやコメントなども参考になるかとおもいます。

また、出産もするわけですから、出産に対しての力の入れようや、出産件数なども少しは確認しました。産科をよくしようとしている病院では、何かしら取り組みが現在進行形で行われているはずです。実際に使用された方の口コミとかも参考になるかとおもいます。

<第三に実際に足を運んでたしかめる>
心臓病の治療や検査は何度も続くもののため、継続して足を運べるかがポイントですし、実際に足を運んで大丈夫と思えるかどうかというのも大事だと思います。我が家の場合には、気になる病院にはすべて足を運びました。

ある病院は非常に待合室が込み合っている。ある病院はアクセスがとても悪いけれど、広々として気持ちがいい。ある病院では、全く薬くさくなく気持ちがいいなど、いってみなければわからないことがあったりします。


病院決定後からの流れ

病院決定から退院までの流れは下記の通り様々な担当医の方が携わってくださることになりますので、そういった医療体制が整っているかどうか、連携がきちんとしているのかどうかというのもポイントになります。

1.転院の手続き
2.転院先での心臓エコー検査(小児循環器科)
3.出産予定日1か月前に卵円孔の開き具合の確認(卵円孔がしっかり空いていないと帝王切開など早期出産の必要もあり)(小児循環器科)
4.待機入院~出産(産婦人科)
5.NICU~出産後の心臓エコー検査、CTスキャン検査(小児循環器科)
6.手術説明(心臓血管外科)
7.手術(心臓血管外科)
8.ICU(集中治療室)
9.NICU
10.退院

出産前の最大のポイントは、合併症がないかどうか、卵円孔がきちんと空いているかどうかということだったと思います。もし合併症がある場合には、合併症にも対応できる病院を選択する必要があります。例えば東京だと国立成育医療研究センターは最後の砦といわれるほど小児に関する様々な病気を対応できる病院なので合併症がある場合には適している病院だとおもいます。また、卵円孔が開いなかった場合には、酸素が含まれた空気を体中に巡らせることができないので、卵円孔裂開術のようなカテーテル治療や、すぐに外科的手術を行わなければいけない状況となるので、出産前の確認では大事なポイントになると思います。
ちなみに、平均入院日数というのが病院ごとに違ったりしてきます。全国平均は70日なのに、ある病院だと40日で退院できるといった場合もあります。そうした違いがなぜあるのかもきちんと確認すると病院や治療がわかってくると思います。

手術について

完全大血管転移の場合、血管を入れ替えるJatene手術という手術を行うのが一般的です。この手術の最大のポイントは「冠動脈」の移植です。この冠動脈のパターンが本当に様々で、冠動脈のパターンによって手術のやり方が微妙に変わるようですが、我が家の場合には幸いにも一番多いパターンでした。しかし、冠動脈の移植自体は非常に難易度の高いものですし、心臓を止めて手術をしなければいけないので、とても大きな手術となります。

実際に手術の説明を受けて思ったのは、麻酔科医の仕事が本当に大事な仕事だなと思いました。というのも、麻酔自体は手術前から術後の回復期もずっと使われるものなので、そのリスクなどについてきちんと説明を受けて理解しておくという必要がありました。

いずれにしても、合併症や様々なリスクについてはすでに対処方法がある程度確立されているため大きな心配をしすぎてもいけないので、実際にはゆだねるしかありませんでした。

自分の場合、血を見たりすることは大丈夫だったのでYoutubeで「TGA」と調べて海外の大血管転移の手術動画を見たりしましたが、冠動脈の手術については、もうすごいとしか言いようがありませんでした。

術後について

術後は最初の24時間がポイントで、1,2日は要注意して管理しなければいけないと言われました。術後の合併症が発生するのもこの期間が多く、また、安定しないためです。術後はずっと麻酔を入れたままなので、本人はひたすら寝ているだけなのですが、集中治療室では人工呼吸器やたまった血や水を抜くドレーン、腹膜透析など様々な処置が行われます。

順調に行くと下記のような状況になります。

1.手術後、人工呼吸器などをつけたまま安静
2.3,4日で人工呼吸器が外れる
3.4,5日で徐々に麻酔もよわくしていく
4.1週間ほどで集中治療室から出てNICUへ

親としては人工呼吸器や麻酔が聞いた状態の子供の姿をみるのはとてもつらいものがありますが、心臓の回復に集中してもらうためには余計な体力を使わないようにするため必要な処置ということを理解して待ちました。麻酔も弱くなり、体も動かせるようになってくると、母乳も口から管を通して入れたりできるようになります。

親にできる事

いかに早期に発見できるか、適切な病院を選べるか、入院などの準備など親ができることは最適な治療ができるように準備することだけでした。後は本人の生命力なので、本人が一番頑張ったと思います。

命の誕生に向き合い、どう育てていくかということをしっかり考えていかねばならないと親として改めて今回の病気を通して教えてもらったような気がします。

ここに記載したことが今後同じような病気を抱える親の方に少しでも役立てばと思います。なお、病気のパターンや先天性心疾患のパターンは本当に多いので、それぞれの状況ごとにやることも変わってくるかと思いますので、きちんと医師の説明をできれば両親で聞いて判断してもらえたらとおもいます。

内容としては以上です。有料エリアには何もありませんが、もし読んでいただいていいなと思ったポチっとしていただけたら嬉しいです。


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